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諸悪の根源はレンタルCD?(←無理やり)

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栗原さんが取り上げられた音楽保存サービス:ストレージ利用は著作権侵害」(毎日新聞)には驚きました。それこそ「カラオケ法理」の拡大解釈じゃないかと思ったくらいです。もし、このサービスが著作権法の第三十条一項一号に該当すると判断されたのであれば(←これに該当する気はします)「レンタルCD(レコード)こそ諸悪の根源」という意を強くするところなのですが、記事を読む限り、そういうことではないようです。

と考えていたところ、例によってナガブロさんが詳しいエントリを書かれていました(※3)。やはり、サービス自身が第三十条一項一号に該当するので私的複製にあたらないようですが、これではサービスの差し止め請求はできない(損害賠償は請求できる)、このためカラオケ法理(業者の支配又は管理のもとで著作物が利用されていること、業者が営業上の利益を増大させることを意図していること)が適用された、ということのようです。ぜひ、リンク先のエントリをお読みください。また、このエントリのコメント欄を“意訳”すれば、今回の件は録画ネットに相当し、まねきTVとは違うということのようです。(拡大解釈じゃないかと思って失礼しました>高部真規子裁判長)

録画ネットとまねきTVの違いについては、以前、ここでのコメント欄での質問に答える形で書きました(そのときの説明が、それほどおかしくないようでホッとしています^_^;)。法的判断は分かれたわけですが、得られる成果はたいして違いません。今回の件は、たとえば「ストレージサーバー」を市販して、業者がそれを管理する形にすれば合法とみなされた可能性もあった気がします(まあ、そんな面倒なことは考えないでしょうが)。パチンコ店が、景品交換所を使うことでギャンブルを合法化するようなものです。

(法律をすっ飛ばして考えれば^_^;)結局のところ、そんな面倒をかけて回避策をとらせるよりも、自分で購入した CD を別のデバイスで楽しむことくらい認められてもよいのではないでしょうか。話を飛ばすと、逆に、レンタル CD や中古 CD などで「複製を残して、複数の人が使用する」という形態は禁止してもよいと思っています(もちろん、複製を残さない譲渡は不問)。TSUTAYA のオンラインレンタルでは複製は禁止されていますし、利用が進まずアーティストに何ら貢献していない lala.com でも、複製を残しては交換できませんから、それほど非常識な制限とは思えません。その代わりに、(今のところ役立たずに見える)録音補償金をなくすといった見返りは必要です。第三十条一項一号は不要になるでしょうから、MYUTA のようなサービスが合法化される可能性も見えてきます(カラオケ法理の解決はやっかいな気もしますが)。(※)

ところで、わざわざ外部サーバーを使わないと楽曲を転送できない携帯電話ってあるのでしょうか。それとも、たんなる「利便性」だったのでしょうか。(※2)

※追記。第三十条一項一号の問題ではなく、レンタルCDは諸悪の根源ではありませんでした(失礼しました)。この公衆用自動複製機器について、ストレージサービスに対する法的な懸念はあり、これを解決するためには法改正への提言……が、すでに小倉弁護士によってなされていました。(カラオケ法理は別のようですが)
http://benli.cocolog-nifty.com/benli/2006/09/_on_sep_2006_1aec.html ※後半
(終了)

※2追記。楽曲は簡単に転送できないものなのですね(?)。D903iを買うまでは、あまり転送して聴くことを考えず、D903i(napster対応!)では簡単に転送できるので、気がつきませんでした。

※3追記。ナガブロさんのエントリにおけるコメントで、逆転判決の可能性について触れられています。いずれにせよ、判決文には「本件と異なり,電子掲示板に他人の権利を侵害する書き込みがされた場合,一般のストレージサービスを利用して公衆に他人の著作権を侵害するファイルが送信された場合等において・・・」とした上で、「本件サービスでは,全く事情が異なり」と明記されており(p.6)、この判決が一般のストレージサービスに影響するという懸念は適当ではないでしょう。

また、本件(差止請求権不存在)が認められたとしても、依然、著作権法第30条1項1号の公衆用自動複製機器とみなされる可能性が高いと思われます。このためにも、上記の小倉弁護士による提言のような措置が必要と考えます。

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