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世界経営者会議(6)2日目: チャロン・ポカパン(CP)グループ タニン・チャラワノン会長兼CEO

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「中国市場のチャンスは無限だ」「インターネットは飽和し、実体経済の変化が重要になる」

世界経営者会議レポートの続きです。二日目に、チャロン・ポカパン(CP)グループのタニン・チャラワノン会長兼CEOが登壇しました。

中国出身のチャラワノンさんは、1969年以来45年間、タイ最大の財閥であるチャロン・ポカパン(CP)グループを率いてこられた華僑です。チャラワノンさんのお話しは、日本経済新聞・井口アジア編集総局長との対談で進められました。

 

【対談より】

団結し、安定することが必要だ。分権し、リーダーを決め、委ねるのだ。必要なのはスピード。民主的な話し合いだと時間がかかりすぎてしまう。だからリーダーが主導権を持つことが必要だ。私の場合も、二人の兄が「お前がリーダーをやれ。私たちがサポートするから」と、リーダーシップを私に委ねてくれた。

7割正しく3割間違いであれば、進めるべきだ。たくさんやれば、成功するからだ。

私が唯一許さないのは、間違った時に人のせいにすることだ。間違いを自分のこととして、なぜミスに繋がったのかを考えることが大切だ。失敗は成功の母である。ミスしてもそこから学べば、一歩先に行ける。だからミスをしても私はサポートする。

ライバルと競争して一位になることは大切だが、利益が出ないのならば意味がない。自分たちがトップになれると判断した上で、参入するのが我々のやり方だ。一位になれる見込みがあるかで、事業を選ぶのだ。場合によっては一位になれる人とWin-Winの関係を結ぶ。

権限委譲する際には、範囲を明確にする。「自分が社長なのだ」と考えさせるようにし、処遇も与えた上で、意思決定させる。

CPグループの経営哲学は、国家、国民、CPグループのメリットを考える「三方良しの原則」だ。まず国家、そして国民、最後にCPグループだ。その国の国民がサポートしてくれることが最優先だ。国民に利益をもたらさないと成功するわけがない。国と国民が利益が上がれば、CPグループも利益が出る。まず与え、貧しい国が豊かになっていくことで、利益が生まれる。その1%を得るだけでも莫大な利益だ。「先に与えて、後で得る」のだ。儲けたいのならば、その国にとってよいことをすることである。

(「中国でビジネスをする日本企業へのアドバイスは?」という質問に対して)
中国企業は、世界中に投資するのが上手い。日本の起業家は、発展途上国が何を必要としているかを理解することだ。いかなる発展途上国であっても、日本の力は活きるはずだ。第二次世界大戦後、日本は全てを失ったが、発展した。このモデルをもって、発展途上国に利益をもたらすことを考えるべきだ。日本は技術を持っているし、市場を提供して世界で売るのを手伝うことも出来るし、資金もある。

(「中国経済については、どう考えているか?」という質問に対して)
中国の経済成長は減速しているが、それは必然だ。大きくなりすぎたのだ。今、成長の第二段階に入っている。今日の中国の改革がもう一歩進めば、大きなチャンスが生まれる。変化がなければ、チャンスはない。たとえば中国の土地は、現在全て国が所有している。売買されていない。さらに5億人の農民が、これから豊かになっていくし、都市部の貧しい人たちが豊かになりつつある。これまでのような高成長は不可能だが、中国国民13億人が購買力を付け始めている。成長率6%でも大変なものだ。中国市場のチャンスは無限である。東南アジア全体も同じような状況だ。

(「CPグループはタイで一日33万羽ものの鶏を生産している。生産性の秘密は何か?」という質問に対して)
CPグループは世界の変化を捉えている。モノを作る人にとってもチャンスである。たとえば鶏の生産では、今まで500名で生産していたのを、現在は十数名で生産している。最新機械を導入し、一人で20万羽を養うことができる。こういう時代になったのだ。
当社ではポイントを見極めて投資をしている。個人的には、間もなくインターネットは飽和すると見ている。誰もがネットで買うようになったその時が、飽和点だ。そうすると、モノを作る実体経済の変化や輸送ロジスティックスが重要になる。オンラインで配送できないモノ(実体)は、運ばなければならないからだ。だから今、人を物流に回している。陸運・海運・輸送装置・物流が重要になる。ストライキしないロボットを使わない手はない。モノは必要である。将来は、必ずその方向に進むと見ている。


【所感】

華僑の経営者のお話を聞く機会はあまりなかったのですが、このような形でお話しを伺い、大きな視野とロジカルな思考に感銘を受けました。

「7割正しければ実行する。沢山チャレンジする。但し、失敗したら必ず学ぶ」は、私も講演や研修などでお話ししていることで、とても共感しました。

また、「インターネットは飽和する」というお話しも説得力がありました。確かに、かつての「実体経済 > インターネット経済」の時代は、インターネットは実体経済を徐々に代替していくことで成長してきました。しかし代替可能な部分を全て代替すれば、「実体経済=インターネット経済」となり、実体経済そのものの成長が問われることになります。こうなると今度はCPグループのように、昔からある商材を扱う伝統的な産業が最新技術を取り込み、成長していく時代にシフトしていくのでしょう。

また中国市場についても、新たな視点を得られました。

日本国内ではともすると「中国の成長は既に限界。魅力的な市場ではなくなった」と言われています。海外からの投資縮小も報道されています。しかしチャラワノンさんが中国出身であることを割り引いて考えたとしても、中国市場のビジネスポテンシャルは課題を抱えつつ膨大であることに変わりはありません。

習近平主席も中国国内で汚職撲滅など様々な改革をしたたかに進めていますし、一方で懸念だった日中外交も雪解けの様相が見えてきました。

今回の世界経営者会議では、他にも中国やアジアの経営者が多く講演しました。

彼らの話からも中国ビジネスの現実がよくわかりましたし、アジア各国の企業が中国のビジネスチャンスを現実的に捉えていることも伝わってきました。

そこから見える姿は、国内メディアで伝えられる中国像とはまた違ったものでした。

 

後ほどの世界経営者会議のご報告でも、ご紹介していきたいと思います。

 

【世界経営者会議レポート】

世界経営者会議(1)1日目:IBM・ロメッティCEO、日立・中西CEO

世界経営者会議(2)1日目:KPMGインターナショナル・ビーマイヤー会長

世界経営者会議(3)1日目:iRobot コリン・アングル会長・CEO 製品中心の会社は、マーケティング力も卓越していた

世界経営者会議(4)1日目: Evernote フィル・リービンCEO

世界経営者会議(5)2日目: LIXIL 藤森義明 社長兼CEO いないのは「プロの経営者」よりも、むしろ「プロのマーケター」

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