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世界経営者会議(5) 2日目: LIXIL 藤森義明 社長兼CEO いないのは「プロの経営者」よりも、むしろ「プロのマーケター」

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世界経営者会議レポートの続きです。二日目に、LIXIL 社長兼CEOの藤森義明さんが登壇しました。

 

講演から

LIXILは、TOSTEM、INAX、新日軽、サンウェーブ、TOEX,アイフルホーム、HIVICなど、国内住宅生活関連企業が統合した会社だ。

統合のために外部人材を入れ、「住宅のことなら全てが揃う」ことを差別化ポイントとして、統合を進めている。

世界を見ると、都市化が進んでおり、エネルギー需要の1/3は住宅という状況だ。そこでLIXILは「ゼロエネ住宅」を視野に入れて商品開発をしている。

たとえば、世界では28億人が衛生的な設備を持っていないのが課題の一つ。LIXILの回答は、節水・省エネ技術を活かした製品の開発・普及だ。

目標は「住生活産業におけるグローバルリーダーになる」ことだ。そのために、国内事業中心から、真のグローバル企業へ変革していく。

具体的な数値目標として、現在ほぼゼロの海外売上を1兆円に、現在薄利の営業利益を8%にする。

1兆円の海外ビジネスをどう作るか?M&Aを積極的に推進している。低金利の日本で資金を調達し、これを使っている。

M&Aの基準として、まず地域No.1ブランドを狙う。No.1ブランドの会社は、流通網もあるし、利益率も高い。そして、商品力も重視している。

では、どうやって買った会社をマネージしていくのか?会社の形を変えていく。テクノロジーとイノベーションに注力していく。

具体的には、複数企業の集合体だったLIXIL社内を再編する。

LIXIL Water Technology、LIXIL Housing Technology、LIXIL Building Technology、LIXIL Kitchen Technologyという4つのテクノロジーカンパニー、日本の販売・サービスを担うLIXIL Japan Companyの5つのカンパニーに移行した。

その目的は、グローバル化の加速、世界レベルでの人材活用、カンパニー間のシナジーによるLIXILの強みの最大化、だ。地域最適からグローバル最適に変革するとともに、権限委譲と迅速な意思決定を図る。

「One LIXIL Cultureで勝つ」ために、ダイバーシティの推進、世界共通の価値観の確立、世界共通の人事制度確立、さらにグローバルで活躍できる人材育成を図る。

まとめると、真のグローバルリーダーとなるためには、次の5つを推進していく。

(1) M&Aをグローバルで積極的に推進していく
(2) グローバルに通用する文化を育てる
(3) 本社のグローバル化を図る
(4) リーダーシップ教育、人材育成に投資する
(5) 高い収益性を目指す。ROE 15%以上

 

質疑応答から

質問:顧客とのつきあい方をどう考えているか?
→日本企業では、(1)どういう客に対して、(2)どういうコンセプトで商品を作るのか、(3)それをどのように伝えるのか、ということが首尾一貫して考えていない。このプロセスの中で日本企業は、「(3)どのように伝えるか」しか考えていない。真のマーケティングが必要だ。「プロの経営者がいない」と言われているが、むしろ私は「プロのマーケターがいない」ことが問題だ思っている。

質問:日本では流通経路が複雑だが、どうするか?
→「これが欲しい」という最終消費者、「これを売りたい」という取次・卸など、関係者が多い。しかし大切なのは、「どういうセグメントに、どういったモノを提供し、どういった価値を提供するか」だ。
たとえばシャワー付きトイレ。日本国内で考えると「これは素晴らしい製品だ」と考えがち。しかし欧米では、使う上で心理的抵抗感がある。顧客によって感じる価値は異なる。本来、その顧客にとって何が必要なのかを考えれば、別のモノが出来るはずだ。
流通・工務店は、自分たちが理解できないと「我々を外そうとしている」と思いがちだ。彼らをどうやって巻き込むかが課題だ。最終的には「伝える力」だ。私だけが語っていては限界がある。皆が変革を理解し、各々が自分自身の言葉で伝えることが大切だ。この「伝える力」をいかに身につけ、育てていくかが課題だ。

質問:歴史を守るために変えなければならなかったもの。逆に守らなければならなかったものは、どんなものか?また事業継承のプログラムはあるのか?
→変革を起こそうとしている。過去の全てを否定しないと、変革はできない。事業継承する場合も、否定して作れる人でないといけない。過去のことを忘れて、5年・10年先を見て変革を起こすことが重要だ。変革できないのは、自分たちのコンフォートゾーンで仕事をしているからである。コンフォートゾーンを出て、考える力があって、はじめて強くなれる。強い意識を植え付けるためには、常に上に向かって行く資質を植え付けなければならない。自分が語り続け、周りの人も語っていくようにする。90%はコミュニケーションだ。絶対にあきらめてはいけない。歴史を振り返ってみると、世界に拡がった宗教も、そのようにして拡がったのではないだろうか?

質問:最後に、日本社会・日本企業へのメッセージがあったら、教えて欲しい。
→もっとダイバーシティを推進すべきだ。様々な人たちの多様な意見を尊重することで、新しいアイデアやイノベーションが生まれてくる。ダイバーシティを推進すれば、日本のイノベーションや革新力は、もっともっと出てくると思う。

 

所感

これまで雑誌記事などで藤森さんのお考えに接し、「是非お聴きしたい」と思っていました。今回、その願いがかなったのですが、共感するところがとても多い講演と質疑応答でした。

 

まず、「世界の都市化が進んでおり、エネルギー需要の1/3は住宅」という状況に対して、「ゼロエネ住宅」を視野に入れ、「住宅のことなら全てが揃う」ことを差別化ポイントにして、「住生活産業におけるグローバルリーダーになる」ことが目標としている点。

そして、海外売上1兆円(現在ゼロ)、営業利益8%(現在薄利)という具体的数値目標。

さらに、達成のための積極的な海外M&Aと、それを活かすためのグローバル最適化を目指した社内体制変革

「One LIXIL Cultureで勝つ」ためのダイバーシティ推進、世界共通の価値観・人事制度確立・人材育成

 

「社会のニーズ→企業のビジョン・差別化ポイント→数値目標→具体的施策」という全てのストーリーがきっちりと繋がっています。

私がIBMで学んできたビジネスプロセスも、まさにこの通りでした。

 

また、

「日本では、プロのマーケターがいないのが問題」

「どの客に、どういうコンセプトで商品を作り、どう伝えるか、一貫して考えられていない」

という点も、私が日頃感じ、講演や研修でお客様にお話ししていることです。

弊社ではこのテーマで多くの引き合いをいただいておりますが、この問題を切実に考え始めている日本企業が増えてきたためだと改めて実感しました。

 

今後、国内事業中心だったLIXILがグローバル企業に変革することで、多くの日本企業のお手本になると思います。

今後のLIXILの変革から、私も学んでいきたいと思います。

 

【世界経営者会議レポート】

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