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プロジェクト ミューズ:バイリンガルプロジェクトは辛いよ ~その4~

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キックオフの定義だけでこんなにズレがあると誰が予測したことでしょう。

6月某日
日本側SI:エグゼクティブ同士が揃ったこの会議の席上で12月リリースのキックオフをしましょう。
欧米ベンダー:??? まだ開発スコープも決まっていないし、要件も整理されていないですよ。
日本側SI:でもキックオフをまず宣言して、体制を決め、それから要件定義をして、、、、。
欧米ベンダー:だって何をするのかすら決まっていないのにキックオフはできないでしょう。
のやり取りで、結局また無限ループ(堂々巡り)になってしましました。

パートナーを組む相手が決まっている(と認識している)すなわち随意契約に慣れている日本側SIは、まずキックオフし、それからいろいろと決めていけばよい、まず初めの一歩を踏み出す宣言が必要と考えています。この考え方はよくわかります。

一方で、欧米ベンダーがなぜキョトンとしたかというと、彼らは競争入札が前提なのです。顧客の提示するRFPを理解し、スコープ(開発範囲)を設定し、要件を理解してソリューションの概要設計をし、作業量とコストの見積もりを計算して提案書を出してからでないと、受注できるかどうかがわからないのです。RFPに相当する要件仕様も提供されていないうちに、「さあ、キックオフだ」と言われてもピンと来なかったにちがいありません。

これがキックオフ宣言だけの問題であれば、どうということはないのですが、そもそも欧米企業に発注するときにRFP(Request for Proposal:提案招請書)もしくは要件仕様書がしっかりと書かれておらず、プロジェクト範囲が曖昧のまま、プロジェクトが始動してしまう。そしてそのままずるずると、終わりなき要件追加がリリース直前まで続くという事態につながっていくのです。

得てして日本企業はRFPの書き方が下手です。
何をして欲しいのか、完成予想図が自分たちの頭の中にちゃんと描かれておらず、曖昧にしか捕らえられていないのがその原因です。
ソリューションを考えるのは請負側の役割ですが、何をして欲しいかを第三者にちゃんと伝わるように明文化するのは発注側の責任です。

いくら顧客対ベンダーの関係が確立しており、ベンダーに対し「俺たちの考えていることはわかっているだろう」と以心伝心を期待するのはいくらお得意様の立場であったとしても間違っています。

よいシステムを作って欲しいという希望はおいしい料理を作って欲しいとシェフに注文することによく似ています。

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常連客:  おいしいものを頼むよ。
シェフ:    何かご希望はありますか?
常連客:  おいしいなぁと思えるものであれば何でもいいんだけどさ。
シェフ:  肉がよろしいですか、それとも海鮮類にしましょうか?
常連客: その辺は任せるよ。今日は何が新鮮か仕入れた君でないとわからないからさ。
シェフ:   さようですね。白身のよいのが入っていますからそれにしてみましょう。きっと気に入って頂けると思いますから。
常連客: 楽しみにしてるよ。
*********
シェフ:  いかがですか?
常連客:  何だ、フレンチか。フレンチっていう気分じゃないんだよな、今日は。作り直してくれよ。俺はイタリアンがいいんだ。
シェフ:  失礼しました。先にイタリアンがいいと伺っておけばよかったですね。

シェフ:  今度はいかがでしょう?
常連客: イタリアンはイタリアンだけど、ナスが入っていないじゃないか。イタリアンはやっぱりナスだろう。ナスのパルメザンチーズ何とかというのがあるじゃないか。
シェフ:  このオヒョウはナスよりもこちらのアスパラがよいと思ったのですが。
常連客:  アスパラはどうでもいいんだよ。オリーブが足りなくないか?俺はオリーブが好きなんだよ。イカとオリーブのマリネも要るだろう。
シェフ:  マリネとなりますと味が十分に滲みこむまでには少々お時間がかかりますが。
常連客:  俺は忙しいんだ。7時と予約を入れておいただろう。時間厳守だぞ。
シェフ:    何とかしたします。他には何かご希望はありますか?もう7時までにはあまり時間がありませんので、何をお作りするか決めて頂かないと。完熟トマトが入っておりますが、いかがですか?
常連客:  検討して後で回答するわ。
*********
シェフ:   トマトの件はどうなりましたでしょうか?もう7時10分前なのですが。

常連客:  トマトねぇ。どうしようかな。連れに聞いてみないとね。

シェフ:   できました。いかがですか?

常連客:  イメージしていたのと違うな。ちゃんと料理人を管理しているのか?見栄えだって何かしっくりこないな。トマト、使ってしまったのか?OK出してないだろう。
シェフ:   はい。しかしトマトがダメだというコメントも頂きませんでしたので。どんなところがご期待に沿えていないでしょうか?
常連客:  これじゃダメだ。おいしいものが食べたいって言っただろ?もう7時過ぎたぞ。

と、会話は延々と続いていくわけです。

いつまでもたっても注文(要件)は決まらず、試行錯誤で料理した(開発した)ものはNGの連発。顧客でないと決められないことの決断は先送り。そして納期が遅れるという悪循環に陥って行きます。

 

発注する皆様方、どうぞ何を求めているのか第三者でもわかるようにご説明ください。仕事を請け負う方は、お客様に大満足して頂ける良い仕事をしたいと思っております。けれどもお客様が何を求めていらっしゃるのか、何を期待していらっしゃるのか、完成品にどんなイメージを持っておられるのかわからなければ、お気に召すものをお作りすることができません。

RFPがちゃんと書けていれば、そのプロジェクトはもう半分出来上がったも同然なのですよ。

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