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データ分析でラグビー選手の怪我を減らせ!

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データを活用して野球チームを勝利へ導くブラッド・ピット主演の映画「マネーボール」が少し前に話題になりました。これまでスポーツで勝利するには、優秀なスター選手をスカウトできる財力と経験と勘をいかした監督の采配が必要と思われていました。資金が無くて優秀な選手を雇えない弱小チームが人間系の経験と勘というものを捨て、データに基づく戦略をとったところ全球団で最高の勝率を記録するチームへと成長していきました。スポーツを数学やデータでやるなんてと良い悪いの議論はさておいて、固陋でこれまでのしきたりから抜け出せず惰性で生きている人々に喝を入れるという意味でスカッと爽やかな映画でしたね。

データ活用をスポーツの現場にいかす事例をもう一つご紹介しましょう。これは、イギリスのラグビーチーム LEICESTER TIGERS のお話です。ラグビーと言えば、鍛えられた強靭な肉体を持つ男たちがぶつかりあう激しいスポーツです。アメフトのような防御ギアも付けず、シャツと短パンだけのユニフォームで体と体がぶつかりあい、ジャンプし地上に激突するなど、いくら鍛えている選手だとしても怪我と決して無縁ではありません。それどころかラグビー選手の怪我をする確率は、サッカー選手のほぼ3倍だそうです。

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どんなに優秀な選手でも怪我をしてしまっては試合に出られません。スター選手が試合に出られなければ勝率に影響も与えますし、観客動員数にもインパクトがあるかもしれません。いかに怪我を無くすか、そのためにデータ分析を行おうと考えたのが、LEICESTER TIGERS です。それにより、ラグビー選手がもっとも負いやすい筋肉の断裂、靱帯裂傷、関節脱臼を起こす確率を減少させようというものです。

LEICESTER TIGERSは、1880年に創設され、イングランドの最高峰リーグであるプレミアシップ初代王者であり、同タイトルを9度制するなどイングランドのみならず北半球を代表する名門強豪チームだそうです。今季はキー・プレイヤーの3選手が怪我で外れており、今のところリーグ2位。それでも2位というのは、やはり強いチームなんですね。

もともとLEICESTER TIGERSは、選手の健康や成績の個人データを記録していました。蓄積されてきたデータをより深く分析することにより、選手個人レベルで体調と怪我との因果関係を明らかにしようとする試みを開始しました。まず、スポーツ科学チームが、選手たちの全ての動きを記録します。激突、ジャンプ、キックそして全力疾走などです。また、選手に小型モニタリング・デバイスを装着させ試合や練習中の動きの激しさをとらえ、競技場のサイドライン上に設置されたコンピューター・システムにワイヤレスでデータを送信させました。集められたデータから選手の疲労具合を認識し、どの選手をいつベンチに戻し交代選手を投入するかなどの決定に利用します。ちょっと宣伝させていただくと、この分析にIBMのSPSS Modelerというソフトウェアが使われています。今後1、2年でさらにシステムのチューンアップを行い、データに基づいた選手一人一人の疲労の分岐点を見つけ出す予定です。最終的ゴールは、肉体的・精神的疲労と怪我に対する脆弱性との関連性を明らかにすることだそうです。

詳細は、英文になりますが、英国IBM よりプレスリリースが出ていますのでご参照ください。
Leicester Tigers Rugby Team Deploys Predictive Analytics from IBM to Reduce Injury Number and Severity
http://www-03.ibm.com/press/uk/en/pressrelease/37571.wss

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