"味の素"が躍進した背景にあるもの
時代とともに、大企業の中でも特に高い評価を受けるエクセレントカンパニーは変遷していくものです。
こうした印象を持たせてくれる総合企業ランキングが発表されました。
日本経済新聞社の「NICES(ナイセス)」のことです。
業績や成長性、働きやすさなどを総合して上場企業を評価するという今の時代に合わせた新しいタイプの総合評価ランキングです。
2015年版NICESランキングによると、1位はセブン&アイHDでした。以下の順位は国内を代表する大企業が並んだのですが、この中に1社、それも2位という高順位を獲得したエクセレントカンパニーである某大企業に筆者は興味を持ちました。
「味の素」です。
この企業が今回のような企業評価で上位に登り詰めてくること自体が、今の時代を感じさせてくれるからです。
味の素はもちろん歴史を有した昔から優良な大企業です。知名度も抜群です。
ただし、食品メーカーとして製造している商品は調味料であり、どちらかと言えば裏方の商品を扱う派手さのない堅実なイメージを持った企業でした。(筆者の印象では)
ところが、このような同社が表舞台で輝くようになる時代になったのは、同社にとっても願ったり叶ったりではなかったでしょうか。
もちろん、味の素という事業会社の努力も見逃せません。東南アジアなどで調味料の販売を伸ばしているからです。国内市場が少子高齢化の影響で縮小していく中で。
食品業界でいえば味の素が扱っているような素材が、主役にもなりうる時代が到来しているのです。昔から食品の主役は肉や魚といった主菜になりうるモノであったはずです。もちろん、お米やパン、麺類もそうでしょうか。
こうした観点から筆者はランキング上位の顔ぶれを眺めた訳なのです。
例えば今度は工業製品の分野に視点を移してみましょう。
今回のランキングでもやはり東レが4位に進出してきています。
他のひと昔前まで主役を張っていたそうそうたる大企業を押さえて。
東レも炭素繊維が話題になっていますが、素材を扱う企業です。
高校生が大学受験で志望する学部学科にも近年は変調があることを見逃してはいけません。
昔は理系学生にとって最も支持を集めていた物理の人気が落ち、化学に盟主の座を奪われてしまったのです。
以上のように、もちろん日本にとって世界で競争力のある分野だから、という理由もあるのでしょうが、「素材」という分野に熱い視線が注がれていることは間違いないのです。