大塚商会の決算から読み取ったこと
かねてより、筆者は独立系の大塚商会の事業動向や業績には注目してきました。
他の同業種の大手系ライバル社と比べて、派手さはないのですが、毎年堅実に数字を積み上げているからです。
例えば今回は、同社の15年1〜6月期の業績見込みが公表されていましたので、見てみましょう。何かビジネスのヒントが得られるかもしれませんので。
同期の連結営業利益は、前年同期比で1%減の240億円弱となることが見込まれています。5%減の230億円を見込んでいましたので、減益には違いありませんがそれよりも上向きそうです。
要因として挙げられていたのは、採算の良いシステム保守・運営事業やオフィス用品のカタログ販売が当初の予想より上向いたからです。
売上高自体は2%減の3250億円くらいと、当初の想定並みとのことです。営業利益ほどの挽回はなく、主力であるシステム構築事業の減収が響くのです。さらに、前年同期に好調だったパソコン販売が、マイクロソフトの基本ソフトであるウィンドウズXPのサポート終了に伴う駆け込み需要の反動減の影響を受けたのです。
これは容易に想定された事象であり、何の驚きもありません。
それよりもむしろ、利益を押し上げる効果を発揮した好採算の事業が有効だとわかりました。つまり、システムを導入した顧客向けに提供する保守・運営サービス事業のことです。
システム構築事業だけでは、どうしてもライバル社たちとの価格競争に巻き込まれてしまい、契約価格の下落に歯止めが掛からず、低採算に陥ってしまっていたのです。
まさに米IBMが脅威の復活のきっかけとなったのが"ソリューション事業"であったのと同じように、単品販売だけでは売上、利益ともに伸びないことの典型例です。
ただ、保守・運営サービス事業を狙う、というのもまた、他の会社も考える事業分野であり、とりわけ優れたアイデアという訳でもありません。
それよりも筆者がむしろ大塚商会を評価しているのは、インターネット通販部門の上々の出来のことです。
オフィス用品のカタログ通販である"たのめーる"が、中小企業を中心とした顧客層に広く浸透してきたのです。
実はこの分野には周知のとおり、国内有数のライバル社たちがひしめいています。
その間隙を縫うように実績を出し始めた大塚商会は確かに賞賛されるべきです。
今後は、他社同様にマイナンバー特需がじわじわ出てきますので、しばらくは安泰だと予想しています。
やはり同社は、時代の流れに逆らうことなく、うまく会社の方向付けがされている、というのが筆者の感想です。