自らを再定義し始めたシンガポール
著しい躍進ぶり
筆者がシンガポールを訪れたのは、もうかれこれ10年以上も前で、当時から同国は洗練された都会の街でしたが、今ではさらに進化しているはずです。
少し前に、シンガポール政府観光局の局長と日本国内で話す機会がありましたが、その後の同国はジョホールバル地区など、再開発は目覚ましいとのことです。
「10年以上前と一緒にしないで欲しい」と強調されたのです。
例えば、確かに先日発表されたアジア大学ランキングでも、1位の東京大学は不動でしたが、2位にシンガポール国立大学が迫り、ランキングの作成機関によってはすでに1位は逆転した、という評価をくだしているところもあるようです。
魅力とは?
そんなシンガポールですが、大前研一氏が指摘しているように、小国でも優れた経済力を保持する同国を評して、"クオリティ国家"だと言うように、日本もシンガポールを目指すべき、という持論を展開しているくらいです。
さらに、日本人がシンガポールで起業する、という動きも事例が多く出てきました。雇用支援などの政府の後押しの大きさや、会社設立のための手続きがネットで完結するくらい簡単だという魅力があります。
もちろん、より大きいのは法人税率の低さ(17%。日本は30%以上)かもしれません。そして、同国の立地条件の良さからくるアジア諸国全域へのアナウンス効果も見逃せません。
経済力だけでは計れない悩み
ところが光もあれば影もあるのが、世の常かもしれません。
今年3月に他界した同国建国の父であるリー・クアンユー元首相亡きあと、建国50周年を迎えた国民の中には歴史を振り返り、自らを再定義する機運が高まってきたのです。
同元首相は、歴史を顧みず、ひたすら未来志向に活路を見出したと言います。古いモノはどんどん壊していったのです。
学校の授業でも歴史を教えなかった時期が長く続きました。
誰もが認める強い経済を伴った国家(1人あたりGDPは我が国を遥かにしのぐ)になれた訳ですが、国民の間では経済以外の何か、を探した始めたという訳です。
実際に以前は、世界幸福度ランキング(日常生活の充実度。148ヶ国中、2011年)でシンガポールは最下位に沈んだことさえありました。
この手の調査では日本もそんなに上位にランキングされる方ではありませんが、さすがに最下位はないはずです。
いずれにしても、シンガポールは魅力に溢れた国であることには間違いないのですが、別の面も持ち合わせているのかもしれません。
これを贅沢な悩みと言ってしまえばそれまでですが。