グループウェアのクラウド化の検討で気をつけること
企業内システムのクラウド化(SaaS化)の流れが増してきている。私の担当領域であるグループウェア分野でも老朽化したシステムの再構築に際してクラウドを選択肢として検討する企業は多く、以前と違って検討だけではなく実際にSaaSを採用するケースも出てきている。実際、グループウェアというコアコンピタンスに繋がりにくいシステム領域に専任にシステム部員や運用担当者を貼り付けにくい中小企業だけでなく、東京ガスのような大企業の事例も出てきた。(参考記事:「日立、Harmonious Cloudのコラボレーションサービスを東京ガスに導入」)
但しグループウェア領域のクラウド化の際には、ポイントとなる項目がいくつかある。
ネットワークコストの増大
メールやスケジューラ・設備予約機能だけをクラウド化するのであればあまり問題は無いが、掲示板や電子会議室まで社外に出す場合は注意が必要だ。最近の社内文書は画像の貼り込みなどで直ぐに数Mバイトといった大きさに膨らむ。こういった大容量ファイルを全社員がゲートウェイ越しでアクセスすると直ぐにネットワークが逼迫する。SaaS採用によってライセンスやハードウェアコストを削減したとしてもその分をネットワークコストに取られてしまっては元も子もない。
カスタマイズ不可
あたりまえだがクラウドでシステムを使うと言うことは他社とシステムを共用化(あるいは均一化)する事になり当
然カスタマイズはできない。アドオンでの追加機能を提案してくるベンダーもいるが、これはサービスのバージョンアップ時に都度開発やテストが必要になるわ
けでお薦めできない。自社特殊要件があるならクラウド化は諦めた方が良い。面白いのは最近だと、システム部門が逆にカスタマイズを承けたくないためにクラ
ウド採用に踏切ってユーザ部門との折衝時に口実として使う例が見られる。
障害対策(BCPの選定)
システムの管理運用を相手に任せた場合サービスレベルがコントロールできない。サービス提供者側の運用体制や対策をつぶさに確認する共に、いつ発生するかわからない障害に備えて、連絡手段の確保やその際の対応方針、BCPの検討などを行うべきだ。ネットワークの向こう側にシステムを置くと障害発生ポイントとして社内外のネットワーク接続ポイントが新たに追加されるわけで、もしここで障害が起きたら社内メールの発信はおろか過去のメールも見れなくなる。
ベンダーロック
クラウド(SaaS)を採用した場合パッケージ製品の採用以上にサービスベンダーへの依存が強まる。システムだけでなくデータまでも相手に渡してしまうのであるから当然だ。サービスの契約をしてしまった後で相手に強く出てこられると交渉は厳しい。契約延長時に突然値上げをつきつけられても、大事なメールを人質にされていると断りにくいだろう。長期契約を結ぶ、サービスのベースの製品を調べて自社で同じものを購入して運用できるかなど事前に検討しておくことは多い。
ちなみに後半のふたつに関しての解決方法としてグーグルのExchangeバックアップ・サービスのようなものもあるにはあるが、正直コストを考えると見合うものではない。
グループウェア領域のクラウド化はチャレンジしがいのあるテーマだがくれぐれも安易な判断をせず専門家を交えて良く検討したほうが良い。
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