J-SaaS始動だけど、ユーザはまだまだ混乱中みたい
経済産業省が2008年度に20億円、2009年度も17億円以上の投資をして推進している「J-SaaS」の運用が開始された。
J-SaaSとは、経営体力、事業環境等の面で大企業に比べてIT化が進みにくい中小企業、特に小規模事業者に対して、インターネット等を活用したソフトウェア提供サービス(SaaS)を提供することで中小企業の生産性向上を図ろうというもの。「J-SaaS」のサイトでは、SaaSサービスを提供する優良業者を集めて以下の10の業務分野のサービスが紹介されている。
- 財務会計
- 経理
- 給与計算
- 税務申告
- グループウェア
- 経営分析
- 販売管理
- プロジェクト管理
- ネットバンキング
- 社会保険手続き
※当初は「セキュリティ対策」も含めて11分野だったのだがリリースが間に合わなかったのか10分野になっている。
国内でのSaaSに関する利用意欲などを調べた調査を見てみると、ノークリサーチの最近のレポートやその前のグラフ、矢野経済研究所のレポートなどがあるが利用意欲は毎年上昇してはいる。
ここで面白いのはSaaS化したい業務分野についての調査結果で、例えばIDC Japanの2007年の調査でのグラフをみると「グループウェア」、「セキュリティ対策」「CRM」「コンプライアンス分野」となっているが、ノークリサーチの「2009年版SaaS市場の実態と中期予測」のグラフでは、これが「財務管理、販売/購買、調達在庫などの基幹系」「サーバ運用管理」「セキュリティ対策」「グループウェア」に変化している。
ただし同じく09年版SaaS市場の実態と中期予測」のなかでは「いかなる場合でも社外に預けたくないと考えるデータ」について聞いているが、こちらのグラフでは「会計」「給与」「受発注」「顧客」の各データを外部に預けたくないという回答が多い。
ノークリサーチのアナリストもしてきているように、まだ全体を俯瞰できておらず整理がついていないという状況のようで、まあユーザも迷っているというのが本当のところだろう。私もSaaSはある程度までは普及するが全ての業務や企業がSaaSに移行するものでも無いと思っている。
当面は個々のケースにあわせて、目的や狙いとリスクを総合的に見ながら論理的に説明をするような立場の人(例えば専門のコンサルタント)などが必要かもしれない。