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エンタープライズコラボレーションの今と今後を鋭く分析

マイクロソフトのBPOS投入でメール/グループウェアのSaaS化は加速するだろう

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 マイクロソフトからMicrosoft Online Servicesが発表された。米国では以前から始っていたのだがいよいよ日本へも上陸だ。

 今回日本でも提供されるMicrosoft Business Productivity Online Suite(BPOS)を簡単に言うと、Exchange ServerをSaaSで運用する「Exchange Online」,とOffice SharePoint Server(MOSS)をSaaS運用する「Office SharePoint Online」、メッセンジャーサービスをSaaS提供する「Office Communications Online」のセットだ。

 SaaS市場はこれまでセールスフォースがCRM分野で切り開いてきたがいよいよ真打ちの登場という事になる。ちょっと今すぐ手元に出てこないがユーザが最もSaaSしたい業務の1位と2位はメールとグループウェアだという調査結果もあったはずだ。一応未だにこの分野でのトップの座に君臨するIBMも対抗してLotus系のプロダクトのSaaS提供を発表している。

 グループウェアのASP化という試みは、もうずいぶん前から何度も試されなかなか普及してこなかった。しかし今度は本物になるかもしれない。それというのも過去に大きなハードルとなっていた、提供者側の価格設定と購入者側の希望価格の格差がここへ来てかなり小さくなってきているのだ。
 ノークリサーチの「2009年版SaaS市場の実態と中期予測」というレポートによると、グループウェアのSaaS利用時に適切と考えるユーザー1人あたりの月間利用料金は、小規模企業と大企業では月額500円未満と回答しているが、年商50億円以上100億円未満の企業では500-1,000円未満が最多回答だと言う。そして今回のマイクロソフトのBPOSは今こそフルセットで1500円程度という価格設定になっているが、個別に機能分割してメールだけあるいはグループウェアだけに絞ると750円から1000円くらいの価格設定になるらしい。IBMのLotusLiveでも同じくらいの価格設定になるといわれる。
 ちなみに月1500円というのを従業員3000人の大企業で換算すると年間で約5千万円、2年間で1億円だとすると大規模なイントラネットを構築するのと比較してもコスト的にはそんなに遜色はない。逆に100人くらいの中小企業でメールだけを月1000円で契約すると2年間で240万円。信頼性の高いシステムを組んでサーバを導入することを考えるとこちらも妥当な金額だと思える。

 個人的にはこれでメールやグループウェアといった情報システム系をSaaS化して外部に出す企業が一定の割合(多分2割から3割程度)までは急速に増えると予測している。ただその後の伸びは緩やかになるのではないか、そして全部がSaaSになることは無いとも思っている。SaaSは電気や水道のような公共サービスに例えられるが、例えば今でも電気や水道が非常に重要な工場は自家発電や自井戸を確保していざというときに供えているし、電力会社の電気よりも効率的に安価な電気を発電する設備を持つ工場だってあるからだ。
 自社でシステムを運用しないということは、先日のGmailのトラブルのようにメールが使えなくなり業務に支障をきたすというような事態に対して無力である可能性が高まるわけで、そのリスクを抱え込まないために自社運用を継続する企業も多いと睨んでいる。

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