木村文乃のCMが可愛い「iQON」を運営する株式会社VASILYの純損失が8億円など:1分から読める注目の非上場企業の決算情報
木村文乃のCMが可愛いファッションコーディネート投稿型アプリ「iQON」を運営する株式会社VASILYの純損失が8億円など、2015年11月30日の1分から読める注目の非上場企業の決算情報です。
第7期決算公告 11月27日官報84頁より
当期純損失
△824,964千円(昨年は△155,000千円、赤字拡大)
利益剰余金
△1,255,055千円
資本剰余金
1,547,170千円
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ファッションコーデアプリ「iQON」
木村文乃の可愛いCMでもお馴染み、ファッションコーディネート投稿型「iQON」を運営する株式会社VASILYは、2008年11月にYahoo!で「X BRAND」のファッションカテゴリ等の立ち上げに携わった代表の金山裕樹氏と今村雅幸氏によって設立されています。ネット上のファッションアイテムを自分でコーディネートしたり、他人のコーディネートを参考にしたりできる、米国のファッションコーデサイト「polyvore」を知ったことがきっかけのようですね。
ちなみに代表の金山氏は2000年にロックバンド「POPKILL」のベース&ボーカルとして、フジロックの「RED MARQREE」(フジロックの最主力会場の一つ)に史上最年少で出場したにもかかわらず、その後全く売れずに解散した後、IT業界に入ったという異色の経歴の持ち主です。上記の経歴に加えて、業界でも屈指のイケメンかつ「服が決まらない日は1日憂鬱」になるくらいファッション好き、とくればややチャラいイメージを抱きがちですが、実際はかなりストイックな方のようです。
100万まで急成長、10億円の調達も
2010年4月には「iQON」をリリースしていますが、「美女暦」や「妄撮」等のヒットアプリの受託開発が中心(当時の売上6000万円ほど)で、2011年頃から伊藤忠やGMOから外部出資も受けて「iQON」に絞る戦略をとっています。そんな立ち上がりだった「iQON」ですが、Web版のみの頃はさほど大きく伸びていませんでしたが、サービス開始から約2年後の2012年2月にiOS版をリリースしてから、一気にユーザー数を100万レベルにまで伸ばしています。
実際、アプリ自体の評価も高く、ファッションアプリとして世界で唯一AppleとGoogleでベストアプリを受賞しており、現在でもストアレビューも高いです。また、グロースハックには積極的に取り組んでいて、100万DLまでは広告無しで到達しています。そして、2014年10月にはKDDI社のSyn.ポータル構想の元に同社から10億円、講談社からも1億円の調達と業務提携を結んでいるなど、事業ポテンシャルの評価も高いです。
8億円の赤字も売上も結構いってる?
しかし、今回の決算公告では8億円を超える赤字を計上しています。少し推測してみると、収益モデル的にはEC手数料とタイアップ広告とプレミアム利用課金という割と王道なモデルを全て展開していますが、その中では手数料と広告収入が大きく、半々くらいと語られています。月間流通総額は10億円近いということなので、試しに手数料を10%で計算すると月間手数料売上1億円+広告売上1億円で月売上2億円=年売上24億円、急激に伸びて、あるいは直近ピークの10億円ならそうでない期間も含めてざっくり半分にすると売上12億円、という金額感になります。
これだと、単純に上記で調達した現金をそのまま、冒頭のTVCM等にぶっ込んだ分だけ赤字、というよくゲーム業界で見られる構図になりそうな一方で、本当に既に売上は10〜20億というレベル感になっているのか?仮にCM以外でトントンかそれ以下なら逆にそれだけコストがかかるビジネスなのか?意外にサービスの性質上、重い画像データをサーバー保存したりフィードしたりする費用がかさむとか?等の疑問もやはり残ります。もしかすると単純に、手数料が個人のアフィリエイトレベルの数%前半っていうのもあるかもしれませんしね。とはいえ、黒にしろ赤にしろ、既に数億円というレベルでの予算ではなくなってそうな「iQON」及びVASILY社ですが、今後にむけてビジネス的には、気になる点が3点あります。
CMはどこまで業績に寄与したのか?
(1)100万DLまで広告無しで到達した同社がおそらく今回の大幅赤字を覚悟して、いきなりぶっ込んだTVCMの効果が現在の足元の数字にどこまで効いてきているか、ということです。同社に限らず、最近はアプリのTVCMの効果が以前よりだいぶ悪くなっているというのは聞きますし、同社のグロースハックノウハウをもってしても、今回のCPIは数百円代では収まらなかったようです。とはいえ、200万DLに到達しているので、イメージ5億円でCPI1000円の50万DLとかでしょうか。
確かにあのCMの木村文乃は物凄く可愛いと思いますwそして、TVCM=獲得単価が全てではないので、最終的に優良顧客の歩留まり率や既存ユーザーの購買拡大に繋がれば、それも成果だと思います。しかし、それも見えてこないと、資本剰余金15億に対して、利益剰余金△12億であることを考えると、結構痛めの出費になりそうです。
アプリの先行優位を活かせるか?
(2)とはいえ、相変わらず楽天、ZOZOは強く、競合も増えてきた、ということです。ビジネスモデルやターゲットの違いは一旦置いておいてスタートアップとして「iQON」の月間流通総額10億円は凄いですが、楽天は300億円、ZOZOは75億円あり、今も伸びています。また、特色の違いこそあれ、コーデアプリも増えてきました。画像系アプリで大きく成長した「iQON」の場合、SEO流入がそこまで寄与しないと思うので、LINEのように一気にアプリネイティブでユーザーを取り込まないと、後発組にじわじわ削られていくこともあると思います。
現に最近の小売アプリのランキングを見ても、「iQON」は10位で上には大手のアプリが上にいます。成長したからこそ、今度はベンチマークされる展開ということですね。もちろん、それが分かっていたから空中戦に撃って出たのだと思うので、そういう点でもTVCMを今後も戦略に組み込めるのかは重要な気がします。
ここでもキュレーションの猛威か
(3)「MERY」のようなキュレーションメディアの存在、です。以前、この決算速報でも取り上げたファッションに特化した女性向けまとめサイト「MERY」は上記のコーデアプリとは違ったアプローチで、短期間で急成長しており、直近ではMAU2000万人にまで到達しています。必ずしもトレードオフな関係ではないと思いますが、現在のネイティブアプリに対するSEOの復権の流れを見ているとコーデアプリ以上の脅威になる可能性も十分あります。
もちろん、既に「iQON」もそこら辺への対応をしてトップ画面でも読み物系コンテンツを押してきてますし、簡単にやられるようなことはないと思いますが。ちなみに今回調べていて分かったのですが、金山氏の妹さんもサイバーエージェントでAmebaCOCOというファッションキュレーションメディアの運営をされていて、おお兄妹対決?と思ったのですが、こちらはあえなく終了となっているようですね。
というわけで、色んな面から見てきましたが、スタートアップが急成長したら、壁にぶつかること自体は当然ですし、金山氏もおそらく腹を括ってやるタイプなのだと思いますので、「iQON」が新しいファッションのスタイルにまで昇華するのかとても興味深いですね。
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決算数字の留意事項
基本的に、当期純利益はその期の最終的な損益を、利益剰余金はその期までの累積黒字額or赤字額を示しています。ただし、当期純利益だけでは広告や設備等への投資状況や突発的な損益発生等の個別状況までは把握できないことがあります。また、利益剰余金に関しても、資本金に組み入れることも可能なので、それが少ないorマイナス=良くない状況、とはならないケースもありますので、企業の経営状況の判断基準の一つとしてご利用下さい。
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