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社員の時に見ていた店の状況、オーナーになってから見ている店。見ている方角が違うとこんなにも違うコンビニの光と影。お客様とは何にも関係無いところで巻き起こるあれやこれ。(笑

コンビニを閉店する時に1000万円かかったってホント?

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 先日から「コンビニを閉店する時に1000万円かかった」という話が、一部で賑わっているようです。情報の出所は2ちゃんねるのようですが、本当のことと釣り(嘘)が入り交じっている2ちゃんねるの話を鵜呑みにするのはいかがなものだろうと、本日はコンビニの閉店時の金銭問題について書いていこうと思います。


 最初に、上記「1000万円」の話は嘘か?本当か?

 「嘘です」と、言ってもにわかに信じがたい方もいるでしょう。と、いうより否定すればするほど信じてもらえないので、逆に辞める時1000万円かかる状況について書いていこうと思います。と、いうことは辞める時に1000万円かかる場合もあるということです。その点では、2ちゃんねるに立ったスレを全否定する気はありません。


 まず、スレの最初の方で話されてた「商品買取」について説明します。

 コンビニはそのシステム上、卸と直接金銭のやり取りは行いません。これは、直接金銭取引をすると、月末の支払いで問題が発生した場合店舗を継続できなくなるからです。多くの店が本部の用意した店舗に経営者として専従します。筆者も同様の契約を交わしてます。突然経営が出来なくなると、経営者はもちろん店舗を借りている本部も、貸している家主も困ることになります。

 その為、商品代金は一括して本部が支払っています。図で説明しましょう。

本部貸借.jpg

 ※オープン時の商品代金は、別枠に貸借項目を設けて分割で清算していきます。

 この仕組みのメリットは、経営者として仕入れ資金を用意しておかなくて良いということです。コンビニ経営者の多くは脱サラした人で資金力が乏しい為、このような仕組みはある意味ありがたいのです。

 デメリットとしては、経営が行き詰まると借金となる可能性が高いのです。売上-仕入=利益という単純な計算ですが、仕入れた物が売れなければ廃棄処分しなくてはならないものがあります。それが、積み重なると借金として膨れ上がるのです。


 閉店時の話をすると、残った商品は2chスレの言う通り買取となるのですが、閉店すると決めてから商品の仕入は一部を除き止めます。突然、お客様が来なくなるわけではありませんので、店舗の在庫が丸々残るなんてことはありません(ちなみに店舗の在庫金額は、満タン状態で500万円~700万円が平均でしょう)。

 本部社員だった経験からすると、最終在庫は残っても数十万円程度です。当然仕入金額より販売金額が高いわけですから、店内在庫を販売していくうちに、本部との商品代金の貸借は消えるのです。雑誌とか返品できる商品があることを考えれば、商品が残って負債を増やした経験はありません。


 次に話題となっていたのは、「違約金」です。

 これは、コンビニチェーンにより様々ですのでなんとも言えませんが、多くの聞いた話をすると、違約金=毎月の本部取り分数ヶ月分として設定している所が多いと聞いてます。しかも、契約年数が経てばそれは無くなる所が多いのです。ちなみに筆者の場合は現在辞めたいと言っても違約金は発生しません。余程、短期で辞めない限り「違約金」に関しては気にする必要は無いと言えます。

 スレ内で満期解約の場合も取られるような話が出てましたが、筆者の知る限りそれはありません。普通に考えて、契約満期なのに違約金をを取るなんて話、変ですよね。

 スレ主が取られたと言うならば、それは、短期で辞めた人だということです。


 もう一つ大きなものとして、解体費用、陳列什器の引取り費用と書かれてましたが、これは、契約したチェーン本部によります。過去(10年以上前)の話ですが、確かに冷蔵冷凍庫の費用は経営者持ちというチェーンの話を聞いたことがあります。契約中ならば分割で支払っていくのですが、中途解約の場合、残金を請求されるチェーンが過去存在していたのは事実です。現在は、筆者の知る限りではありません。(あったらコメント欄やTwitterのDMで教えて下さい。知識として知っておきたいです)

 ただ、店舗が自分の持ち物である場合は、内装費用も含めて当然自分で支払うこととなるでしょう。


 と、いうことで、最初に記したコンビニを辞める時に1000万円かかったとする場合のシミュレーションをしてみましょう。


 月間売上は1000万円、その後その場所で商売をすることは書かれてなかったので、本部物件で商売してた人とした場合の推測です。


 俺は希望を持ってあるコンビニをオープン。ところが、本部の推奨物件の売上は酷いもの。なんと一日の売上は33万円。そのくせ本部の糞野郎どもは仕入の話ばかり、「新商品入れろ!キャンペーン商品入れろ!」と、そんな売れもしないの仕入れろってどういうことだよ。こっちは毎日、廃棄の弁当で食いつないでいるというのに。

 妻は日に日にやつれてくる。「あんたが儲かるって言って始めたのにちっとも儲かんないじゃない!ボケ亭主!!」日毎に喧嘩が増えてくる。と言うより、一方的に文句を言われるだけだ。

 もう辞めよう

 2年経ったある日、本部の人に話した。「はぁ?まだ2年しか経ってませんよ。今辞めると違約金がかかってしまいますよ」

 えっ、違約金?そういえば契約する時にそんな話してたっけ。だけど、こんな低い売上だと思わなかったしなぁ。その事を本部の人に伝えると、「売上がいくらとか契約時には話してなかったですよね。それどころか、売上が悪いことも想定して下さいねと言いましたよね」

 あ~、確かに言ってたさ。だけど、そっちはコンビニのプロだろ。商売にならない店舗を紹介するなんて騙しているようなものじゃないか。半分キレながら伝えた。「オーナーさんは売上伸ばすための努力してきましたか?巡回してる社員に聞けば、仕入の提案にも乗らず、従業員の教育もしてないと聞いてますが。それじゃ売上なんか取れませんよ」

 あ"~っ!こっちが全部悪いのかよ!もうヤメてやる!こんな24時間365日休まずにやってサラリーマン以下の収入なんてやってられるかっ!!「そうですかぁ。では、契約どおり違約金を払って辞めて下さい」「月130万円×6ヶ月=780万円と冷蔵冷凍機の残金200万円で980万円。後は商品の残り具合で追加がありますので」

 いやああああああああああああああああああ。


 と、かなり解約時の細かい状況を端折って物語仕立てにしてみました。多くの場合、売上が悪ければ他の店舗に借り換えするはずなんですが、そういう提案がないのは、経営者と本部の仲が悪かったのだろうと、筆者は考えてます。


まとめると

◯対象オーナーの店は非常に売上が悪かった・・・月商1000万円と書いてましたが、最後の半年は900万円を切ってたのでは無いでしょうか。

◯対象オーナーと本部の関係が悪かった・・・どんなビジネスでも所詮人間関係が良好でないとやってはいけません。オーナーが偉いわけでも本部が偉いわけでもありません。通常にビジネスとしての人間関係を築かなければならないことは当然のことですね。

◯対象オーナーは商売についての知識が足りなかった・・・コンビニと言えど通常の商売と何も変わりません。仕入れたモノを売り利益を得る。そこにコンビニ本部が入り込んでも同じ事です。本部への支払い(ロイヤリティ)は、ある意味原価と計算できます。

 売れないものを仕入れてはいけません。それは、本部がどうこうと言うより、商売の基本です。仕入を強制されているのであれば、それは法律違反です。直ちに当局へ通報した方がいいですよ。


 今回は、コンビニを辞める時に金がかかるかどうかの検証をしたわけですが、詳細が分からないとなんとも言えない部分がありますので、曖昧さは残ってしまいました。

 しかし、2ちゃんねるのスレのような状況は、10店舗以上閉店させた筆者の経験からすると、とてもレアなパターンと言えます。筆者が閉店後オーナーに金銭を要求したことがあるのは、売上金を持ち逃げした2店舗だけです。


 さて、契約ごとをブログにする時の決まり文句です。


 それでも、あなたは契約書に判子を押しますか?

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