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「誰かが教えてくれることを信じるのではなく、自分で考えて行動する」ためには、矛盾だらけの「現実」をありのままに把握することから始めるリアリスト思考が欠かせません。「考える・書く力」の研修を手がける開米瑞浩が、現実の社会問題を相手にリアリスト思考を実践してゆくブログです。

原子力論考(81)石油火力発電の発電コストはヒッジョーに高いので

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 本業は文書化能力向上コンサルタント、余技で原子力論考を書いている開米瑞浩です。

 震災から2年も経ってそろそろ鳴りを潜めたかと思いきや、いまだに「原発がなくても電力は足りる」と主張する人がいるのはなかなか興味深いことです。

 その主張によると、「福島原発事故のわずか3日後に、IEA(国際エネルギー機関)は月次報告書で、「日本の原発が止まっても、電力不足は発生しない」という報告をしている」のだそうです。

"原発が無いと電力不足になる?:福島原発事故の3日後にIEAは「日本の原発が止まっても電力不足にならない」と報告 - 白熱のディベート教室"

 では実際そのIEAの月次報告が何と言っているかというと、

「日本は原子力発電の不足分を補うだけの十分な石油火力発電による余剰能力を有している、との見解を示した(ロイター 2011年 03月 15日)」

 だそうですが。

 残念ながら、石油火力発電の発電コストは鬼のように(あっ、年がバレる)高いんですよ。

こちらは2011年12月13日に日本政府のエネルギー環境会議 コスト等検証委員会が出した報告書です。

http://www.npu.go.jp/policy/policy09/pdf/20111213/siryo1.pdf

 こちらの52ページに石油火力発電の発電コスト試算が出ていますが、「設備利用率80%」という非常に楽観的な仮定でもなお、2010年次で発電コストは 20.8~22.4円/kWhです。石炭火力やLNG火力が10円/kWhであるのに比べると「目の玉が飛び出るほど高い」額です。

 当然、そんなものに頼ったら電気料金はうなぎ登りに上がります。現に上がっていますが。

 ちなみに「設備利用率80%」というのはありえないぐらい高い数字です。というのは、石油火力発電所は国際条約により1979年以降建設を禁止されており、現在国内にあるのはそれ以前に作られた施設ですから平均年齢40年超になっていて老朽化が進んでおり、故障が多いのですよ。以前、発電所のメンテナンスについての話も書きましたが、

"原子力論考(73)このところの電力需給が厳しい件について"

古い設備をだましだまし使っていると、どうしても故障が多くなります。
発電所のような巨大なエネルギーを扱う施設での「故障」というのは、死亡事故に直結する極めて危険なことなんです。

平常時でも発電所の定期点検というのは数ヶ月もかかるような大がかりなものであり、「設備利用率80%」というのは、

 「今日は1日に18時間働けた! やればできるんだ!
  だから、1年間365日休まず1日18時間労働できるよね」
と言っているぐらい非現実的な話です。

そりゃ、1日18時間労働もできるでしょう。1日だけだったら。
でもそんなのは1週間も続きません。IEAの報告もそういう種類の話です。

ちなみに、石油というのは発熱量あたりの単価が最も高い化石燃料です。
その理由は、「常温で液体である」ために扱いやすいから。
常温で液体だと安価なポンプで給油できるので、自動車、飛行機、船舶のような移動体の燃料として非常に価値が高く、そのため「高価な化石燃料」になっています。

そういうものを燃やして発電したら発電コストがものすごいことになるのは当然ですよね。

だから、石油火力発電はベースロードには使われません。

そういう実態を無視して「石油火力をフル稼動させれば電力は足りる」という主張はいいかげんにしてもらいたいものです。

参考までに、こういうリンクも貼っておきます。ぜひ読んでください。

"電気屋が語る「電気は足りていません」の呟き - Togetter"
http://togetter.com/li/466577

ではまた。

■開米の原子力論考一覧ページを用意しました。
→原子力論考 一覧ページ
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