座間・相模の大凧祭りにて興業と安全の考え方を思う
GWも終盤ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
私は昨日、相模原市と座間市がそれぞれ同時に開催している「大凧まつり」に行ってきたところです。
座間の大凧、「輝風」の華麗な舞(5月4日、2015年)
この大凧、大きさは13メートル四方(102畳)、重さは約1トン。制作期間3ヶ月。
3ヶ月かけて大凧を作っても、実際はなかなか揚がりません。大凧を揚げるには毎秒10メートル以上の強風が必要で、開催日に都合良く吹いてくれることは少ないからです。昨日はきれいに揚がりましたが、5年ぶりだったとのこと。昨日の風速も下限の10メートル程度で、しばらく風待ちをしてギリギリ行けたようです。(揚がった後は20分以上安定して飛んでましたが)
風速10メートルの風だと鯉のぼりはほとんど水平に泳ぎます。
ただし、同時開催していた相模の大凧のほうはうまくいかず、揚がりかけたところで大破、墜落してしまいました。
それを見て思ったのですが、この大凧まつり、率直に言ってかなり危険です。
現にこうして会場脇の施設に墜落するような落ち方をしています。こういう場合、重量1トンの物体が空から降ってくるわけで、危険でないはずがない。実際、2004年には座間の大凧まつりで落下した凧に当たって観客8人が負傷する事故が起きています。
http://www.ne.jp/asahi/miyachi/sep/risk-management/risk-data.htm
もちろん、大凧の掲揚時は周辺を立ち入り禁止にする措置が取られはします。
しかし、立ち入り禁止になるのは一般の観客だけで、係員や警備員はヘルメットもプロテクターもつけないままで残っています。観客立ち入り禁止のセーフティゾーンも果たして十分な広さか? というと、急に風向が変化し突風が吹くというような状況を考えた時には十分とは思えませんでした。
「危険な祭り」というと諏訪の御柱祭が有名です。直近6回の開催で4回の死亡事故が起きている御柱祭に比べれば大したことはないという見方もできますが、一般の観客が巻き込まれる危険性は大凧祭りのほうが高いように思えます。
それでも、こうした危険を内包したままでおそらく祭りは続いていくのでしょう。
安全性を高めるための方法はいろいろと考えられますが、あまり現実的とは思えません。
■セーフティゾーンを極端に広く取る
→観光イベントとしての成立が難しくなるでしょう。
■大凧を軽く強靱なものにする
大凧は竹と和紙と麻縄で作られていて、重量は1トン近くあります。この素材を使う限り軽量化も強靱化も難しいですが、現代の特殊素材を使えば格段に軽く強い凧を作ることは可能です。軽くなればその分、弱い風でも浮くので、毎年のように大凧の掲揚に失敗したり、大凧が破損する事故も防げるでしょう。
しかし、それをやったとして、イベントとしての感動は保たれるかどうか・・・正直、疑問です。
昨日の座間大凧は、強風とはいえ揚がるかどうかギリギリの風速で、しばらく風待ちをしてようやく揚がりました。揚がった瞬間は感動ものでしたが、その空に舞う様子を見ると、巨大な凧でありながら意外にやわやわで・・・・・・おいおい大丈夫か、壊れるんじゃないか、、と心配になるようなもろさ、はかなさを感じさせるものでした。いや、そのやわらかな、しなやかな動きがまた美しくていいんですが・・・・・・実際、壊れてしまったんですよね・・・・・・
扱いづらい素材で3ヶ月かけて大凧を作り、その重さゆえに掲揚にはめったに吹かない強風が必要で、吹いたら吹いたで壊れやすい、そういう手間暇のかかる面倒なそしてはかない、そういうものだから人は感動するんじゃないかと思います。
これが炭素繊維や合成樹脂の骨組・膜材料を使った凧で制作期間1週間、重量100kg、風速4m/sでも楽々揚がります・・・・・・というようなことになると、それはもはや別なイベントになってしまいそうです。
そんなわけで、どこかで危険性を内包する座間・相模の大凧祭りですが、おそらく今後も基本的に同じ形態で運営されていくのでしょう。私も今のままで見たいので別に反対運動などする気はありませんし。
それにしても考えざるを得ないのは、この大凧祭りや毎回のように死亡事故を出しながら変わらず運営されている御柱祭りのように「明らかな危険性がありながら継続するイベント」がある一方で、別な地方では制作者の死亡事故が起きたことで全日程が中止になった祭りもあるということです。
こういう、「危険性への対処」がところによってずいぶん違うのをみると、人間ってのはご都合主義だなあと思わざるを得ません。(それがダメだ、と言いたいわけではありません。念のため)