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「誰かが教えてくれることを信じるのではなく、自分で考えて行動する」ためには、矛盾だらけの「現実」をありのままに把握することから始めるリアリスト思考が欠かせません。「考える・書く力」の研修を手がける開米瑞浩が、現実の社会問題を相手にリアリスト思考を実践してゆくブログです。

「待たずに即お湯が注げる充電式水差し」はまあ無理でしょう

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昨日、TwitterやFacebookで見かけたものですが、これはちょっとうさんくさいと言いますかアレな商品ですね。

注ぐ瞬間にお湯が沸く。新技術採用のケトル「デュオ・カラフェ」 #CES2019 | ギズモード・ジャパン

要するに電気ポットの一種で、ただし「傾けて水をそそぐ、その瞬間に加熱してお湯に変える」ので、お湯が沸くのを待つ必要が無い、保温が必要ないから省エネでもある、電池で駆動するから持ち運べる、というフレコミなのですが、まあ現在の実用的な電池技術でこれを実現するのは無理でしょう。「水を瞬間的に加熱する」のに必要な大電力を電池で供給するのは不可能ですので。

仮に100gの水の温度を10秒間で70℃上げるとします。

必要な熱量は 100g × 70℃ × 4.2J/g・K = 29400J = 8.16 Wh

どんな手段でも熱効率が100%になるわけはないですが、まあ甘く見て10Whの電力量を消費するとしましょう。

10秒で10Whの電力量ということは電気出力3600ワットです。

家庭用交流100Vで3600ワットを出そうとすると36アンペアの電流を流さなきゃいけません。

一般家庭のブレーカーは落ちますね(笑)

まあ10秒というところを1分ぐらい待ってもよければ6アンペアで済みます。これなら電子レンジ程度の出力ですがそれは商用100V交流電源の場合で、電源がリチウムイオン電池3.7Vの場合は162アンペア必要になります。ポータブルな電池でそんなハイパワーは出せません。

まして、動画の演出であったように10秒以内ぐらいでお湯にしようとするなら 1000 アンペア必要になりますので、あり得ないですね。

↓はてぶのほうを見てみると、やはり一部にそういうツッコミがありますね。

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