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「誰かが教えてくれることを信じるのではなく、自分で考えて行動する」ためには、矛盾だらけの「現実」をありのままに把握することから始めるリアリスト思考が欠かせません。「考える・書く力」の研修を手がける開米瑞浩が、現実の社会問題を相手にリアリスト思考を実践してゆくブログです。

数字のボリューム感は数字だけでは伝わらない

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今回は原子力論考ではなく、図解の話です。

たとえば 原子力論考(52)原発が原爆にはならない理由 の最初に使っているこの図ですが



どうしてこういう形(粒々スタイルと呼んでおきます)に書いたか? 実は理由があります。。

実はこの話を書こうとしたときに最初に思いついたのはこれでした。

↓単純比較表スタイル


これが一番簡単に書けるんですよね。プレーンテキストでもいけますから。

しかし、単なる数字だけだと「濃度が決定的に違う」というのがピンと来ない人がいるだろうな・・・と考えました。

これ、あまり知られてないと思いますが、「数字」を書いておけば人は正確にその数値情報を受け取ってくれるか? というと、そうでもないんです。

たとえばこのウラン濃縮度の情報の場合、90% と 5% という数字を目にしていてもなお、こんな印象を持ってしまうことがあり得ます。



「5%」という数字を見ているはずなのに、20%ぐらいのイメージで受け取ってしまうケースですね。
これ、普通に質疑応答していてもわかりません。実際、ウランの話ではなく一般のビジネス上の意思決定の場面でそういうケースに遭遇したことがあります。ある人に、状況を理解しているかどうか確かめるために数字を聞くとちゃんと答えるのに、実際の行動が数字を反映していない、ということがあり、どうしてそうなるのかを詳しく聞いてみたところ、数字のボリューム感が脳内でいつの間にか中央寄りに自動変換されている(99%は90%ぐらいの感覚で、5%は20%ぐらいの感覚で受け取っているようなイメージ)ことがあったわけです。

放射能問題がらみの話を説明しようとすると、「単位」も入ってくるためさらにやっかいです。1μグラムとか、4E-5 とか、オーダーの違う数字を特殊な記号や記法を使って表現しているものを、その種の記法に慣れていない人に感じ取ってもらうのはかなり苦労します。

そんなわけで、数字を書いておけば大丈夫、というわけにはいきません。

そこで、次に考えたのがグラフでした。数字だけだとボリューム感が伝わらないのであれば、正確なグラフを出してやればいいのでは? ということでこんなグラフを書いてみました。

↓グラフスタイル


しかしなにかもうひとつ足りない気がしたんですよね。
単なる棒グラフだけだと何か足りない。それは何だろう?

と、その微妙なところを探ってみると、

「単なる棒グラフだと、ウラン235を濃縮する作業の大変さが伝わらないのではないか」

という気がしました。

そこで、その「濃縮作業の大変さ」を直観的にイメージしやすい方法を考えた結果出てきたのが「粒々スタイル」だったわけです。

ああやって粒々で書いておくと、

  濃縮って、この粒々をより分けるのか・・・大変だなあ

と、作業をイメージしやすいんじゃないかということです。
単純棒グラフだとここまで想像力が働きません。

そうして粒々スタイルにたどり着いてみたところ、その後、
U235とU238の違いを書き分けるのにこの粒々赤青スタイルはとても便利でした。

以上、図に書くためにそんなことを考えるときもあるわけです。

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