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「誰かが教えてくれることを信じるのではなく、自分で考えて行動する」ためには、矛盾だらけの「現実」をありのままに把握することから始めるリアリスト思考が欠かせません。「考える・書く力」の研修を手がける開米瑞浩が、現実の社会問題を相手にリアリスト思考を実践してゆくブログです。

「前提・意図・仮説」を踏まえた「決定」という考え方(後編)

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 前回の結びにこんなことを書きました。

仕事をしていく上で必要な「文書」は、基本的には何らかの「決定」を書いていくものですが、「決定」にはそれに至る前提と意図と仮説があります。



 どのような前提(あるいは環境)のもとで、何を達成したいのか(意図)に応じて「決定」を行うわけですが、その「決定」はある「仮説」をもとにしていることがあります。
 たとえば、花粉症に悩む人がその症状を少しでも軽減するために「布団を外に干さない」という決定をする場合を考えてみると

    環境:春は花粉が飛散している。私は花粉症である
    意図:花粉症の症状を少しでも和らげたい
    仮説:①布団を外に干すと花粉が付着して室内に入る
       ②その花粉が症状を悪化させる一因である
       ③布団を外に干さなければ花粉は入らない
    決定:春は布団を外に干さないようにする

 といった形ですね。前提となる環境・意図・仮説がもし現実と違うなら「決定」も迅速に変える必要があるため、どの項目も関係者が共通認識を持てるようにしておかなければなりません。

 ところが、技術文書であれビジネス文書であれ、「決定」だけを書いているもの、あるいは「前提・意図・仮説」が不明瞭なものがよくあります。「前提・意図・仮説」が不明瞭だと、人によってその都度違う判断ロジックを適用してしまい、

聞く度に返答が違う
見せる相手によって言うことが違う

 という現象を起こしやすくなります。

 そんなわけで、過去の議事録や企画書や設計書をざっと見てみましょう。そして、「決定」だけでなく「前提・意図・仮説」がそこから読み取れるかどうかを確かめてみてください。「決定」以外の項目は「みんなわかってるよね」で省略してしまっている場合がよくあります。「仮説」などは関係者も無意識に「当然の常識」と考えてしまって、それが仮説であることを知らないままでいることも珍しくありません。

 たとえば・・・スポーツ関係ではこの種の話が多いのですが、昔は野球選手に対しては「肩を冷やすな!」というのが常識で、水泳さえ禁止されていた時代もありました。現代では逆に、たとえばピッチャーのように特定部位を酷使する選手は登板後にアイシングをするのが当たり前です。こういう現象は、「人体のメカニズムに関する仮説」が昔と今とで逆になったために起きています。

 人はいろいろな「仮説」を真理と信じ込んでさまざまな意思決定を行います。しかし、1年前は正しかった仮説も、今は通用しなくなっているかもしれません。「仮説」を仮説として意識していれば、それを修正する機会を見つけられますが、無意識のままにしているとなかなかその機会がないものです。

 そんなわけで、これから書く文書については、それを意識して「前提・意図・仮説」を明示して書いてみてはいかがでしょうか。

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