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「誰かが教えてくれることを信じるのではなく、自分で考えて行動する」ためには、矛盾だらけの「現実」をありのままに把握することから始めるリアリスト思考が欠かせません。「考える・書く力」の研修を手がける開米瑞浩が、現実の社会問題を相手にリアリスト思考を実践してゆくブログです。

原子力論考(48)今こそ太陽光発電に投資しよう!(嘘)

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まあ、タイトルに「嘘」とわざわざ入れなくてもいいかと思ったんですが、小心者の私ですので、余計な誤解を防ぐために入れておきました。

入れなければ、タイトルだけ見て脊髄反射的に「私もそう思います」という絶賛リツイートがついたかもしれないと思うと残念ですが、ま、それはさておき。


(ある月の電気料金のお知らせ。黄色い線の33円って何なんでしょうね・・・という話はあとで)

太陽光など再生可能エネルギーで発電した電気を電力会社が全量買取る(住宅用を除く)ことを義務づける再生エネルギー特別措置法による買取価格について、調達価格等算定委員会は27日、太陽光の購入価格を1kWhあたり42円とする案を「正式決定」しました。

標準家庭の負担、月70~100円=再生エネ購入、電気料金に上乗せ-経産省
http://www.jiji.com/jc/c?g=eco_30&k=2012042700864

まだ最終決定ではないものの、これがそのまま通ってしまう可能性も多分にあります。

この価格は前回書いたように「事業者側の言い値をほぼそのまま認めたもの」ですから、このまま通れば「儲かる」額です。したがって、「太陽光発電バブル」が起きる可能性は十分にあります。まあ、既に起きているわけですが。

バブルの様相を呈する太陽光ビジネスの全貌
http://diamond.jp/articles/-/13387
↑これなんか既に去年8月の記事なわけですが、「太陽光バブルに乗り遅れるな!」がれっきとした経済誌の表紙にデカデカと出るわけですからねえ・・・

バブルの時代にはそれをネタにした詐欺も出るのが通例で、

「必ず値上がり」 太陽光発電 社債詐欺で5200万円
http://sankei.jp.msn.com/west/west_affairs/news/120409/waf12040920430015-n1.htm
こういう悪徳業者には気をつけなければいけませんが、まあ・・・・・・たとえ善良な業者を通じてであっても、一般のご家庭では太陽光発電に手を出すのはやめておくことをオススメします。

私の場合はそもそもマンション住まいなのでやろうと思ってもできませんが、たとえ戸建てに住んでいて設置スペースがあったとしても、やりません。

といっても、それは「儲からないからやらない」という意味ではありません

単に利回りだけを考えれば、故障するリスクを考慮しても太陽光発電そのものは悪くない投資だと思います。住宅用では全量買取にはなりませんが、補助金も出ますし、余剰買取であっても投資回収した上に十分な利益が出る見込みは高いです。

でも、やりません。「利益」以外の予期せぬ副作用が大きすぎるからです。

予期せぬ副作用、といいつつ予期しているわけですが、どういうことかというと、前回書いたようにこの「再生可能エネルギー全量買取制度」は、

    金持ちを儲けさせるために
    貧乏人からカネをむしり取る制度


です。こういう制度は、目立たないところでチマチマとやっている分には成り立ちますが、大々的に行われると必ず反動が来ます。

現在は1年前の福島原発事故以来の「脱原発」パニック的状態が収まっていないから異常に見えないだけで、冷静に考えたら

    太陽光1kWh42円全量買取20年保証

なんて正気を疑われるぐらいのとんでもない額なんですよ。正直私はこんな案が「正式決定」されるとは夢にも思いませんでした。その意味で前回「複雑怪奇」と書いたぐらいです。

脱原発パニックが収まったときには、この件に対する社会的反動が必ず来ます。

ちなみに経産省は「一般利用者の電気料金の上乗せ幅は1kWhあたり0.2~0.4円、電気料金月額7000円の標準家庭で月額100円程度の負担増」と試算していますが、これは「初年度」の話です。導入が進めば「自動的に」それに比例して上がることになります。100円で済むわけがありません。参考までにドイツの家庭における2011年のFIT負担額は14.7ドル/月、1ドル80円換算で約1200円/月です。

資源エネルギー庁 「欧州の固定価格買取制度について」
http://www.meti.go.jp/committee/chotatsu_kakaku/001_06_00.pdf
(p.9 に一般家庭のサーチャージ負担額記載あり)

電気料金を月7000円払っている家庭で、1000円の負担増は許容できる範囲でしょうか?

常識的に考えたら、猛烈な反発が起きて当然です。
太陽光発電の導入が大規模に進むと、いずれこういう事態が発生します。

ドイツはさすがにこの負担に耐えきれなくなり、買い取り額を大幅に引き下げる方向に政策転換を行いました。それが3年後か5年後かはわかりませんが、日本でも同じことになるでしょう。

さて、そのときその政策転換は無傷で済むでしょうか?

毎月、家庭に届けられる「電気料金のお知らせ」には「太陽光発電促進付加金」という項目があります。ある月の私の家の電気料金では33円でした。



これがもし一般家庭で1000円に達したら?

そのとき、毎月家計のやりくりに苦労している主婦が外出する度に、隣の家の屋根に遠目にも目立つ太陽光発電パネルが燦然と輝いていたら、果たして冷静でいられるでしょうか?

それは「私が払う電気料金が隣家の収入になっている」ことを意味するわけです。

しかもその時代には、「太陽光発電1kWh42円」というのが「異常な時代に決まった異常な制度」であることをマスコミが大々的キャンペーンのように報道しているでしょう。

そのとき、太陽光発電パネルを屋根の上に載せている家に住みながら、地域住民の白い目に耐えられますか? という話です。

そういう事態が起こることを予想し、その上でなお「かまわん。儲かればいい」と割り切れるのであれば、「今こそ太陽光発電に投資しよう!」というのは個人の経済行動としては正しい選択だと思います。

人がゆく裏に道あり花の山 という相場の格言もあることですしね(謎)


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