オルタナティブ・ブログ > 開米のリアリスト思考室 >

「誰かが教えてくれることを信じるのではなく、自分で考えて行動する」ためには、矛盾だらけの「現実」をありのままに把握することから始めるリアリスト思考が欠かせません。「考える・書く力」の研修を手がける開米瑞浩が、現実の社会問題を相手にリアリスト思考を実践してゆくブログです。

原子力論考(47)自然エネルギー利権の誕生

»
 本日の日経新聞社説の内容を図解してみせるとこうなります。




 今頃言われてもなあ・・・という感には消しがたいものがあります。

 こんなことは1年前からわかっていたはずです。
 言論をリードする責任を自覚し「社会の木鐸」として、その役割を果たすことをミッションとしていたマスコミ各社は、「再生エネルギー全量買取制度」というのが、極論すれば

    金持ちを儲けさせるために
    貧乏人からカネをむしり取る制度


 だということを知らなかったのでしょうか。
 太陽光発電パネルを設置できるのは、屋根か庭のある一軒家で、かつ、初期投資費用を出せなければならないため、必然的に経済的に余裕のある家庭に限られます。
 そこから発電する電力を通常より高く買う、ということは、その費用は回り回ってすべての家庭と産業の電力料金に跳ね返ることになるのも自明の話。つまり、太陽光発電施設を作れない家庭と企業にとっては「負担だけを押しつけられる制度」なわけです。

 これはきわめて不公平であり、ドイツやスペインでは実際それが失敗したとみなされて補助金と買い取り価格が急速に削減されつつある、ということを大々的に報道するべきでしたが、今に至るまでそんな「大々的な報道」は見た記憶がありません。

 そうかと思えば同じ本日の日経5面で枝野経済産業相は

    猛暑になった場合、強制力のない節電だけでは電力不足を起こす可能性がある
    関西電力管内では昨年以上の節電を求める可能性がある
    また、計画停電を発動する可能性もある
    原発は短期的には使う必要がある


 と発言しています。これはいずれも正しいもの。とはいえ今頃になって正しい認識を示してもかなり手遅れ感が漂っていますが、ようやく少しは現実を踏まえた動きが出てきた、という意味では歓迎できることです。

 一方、同じ日経5面にこんな数字が出ています。

    再生可能エネ全量買取制度における買取価格( 1kWh あたり )
                     A                   B
    太陽光      42                42
    風力            23.1             22~25
    小型風力      57.75            50~55
    地熱            27.3~42        25.8
    中小水力     25.2~35.7      24~34.06
    バイオマス   13.65~40.95   14.5~39

 AとBの2つの数字が出ていますが、一方が発電事業者側が「これぐらいは欲しい」と要望していた価格、他方が調達価格算定委員会の委員長案です。
 ざっとみると、A案のほうが高くなっているようですが、どちらが委員長案だと思いますか?

 ・・・・実は、そのA案のほうなのです。

 事業者側の要望価格よりも高い価格を設定した、ですと・・・????

 売り手が「100円で買ってください」と言っているのに、
 「じゃあ、105円で買いましょう」と答えたようなもの。

 なんなんでしょうこれは。談合どころの話じゃないですよこれは。
 マスコミ各社はこれを「自然エネルギー利権」として叩かないのでしょうか?

 日本政界・報道界情勢は複雑怪奇です。

   (つづく)


■開米の原子力論考一覧ページを用意しました。
→原子力論考 一覧ページ
Comment(0)