原子力論考(16)無限・無期型ストレスとの付き合い方(中編)
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こんにちは。知識を構造化することに心血を注いでいる開米瑞浩です。
前回、「震災+原発ストレスは無限・無期型という点で平時のストレスとは次元が違う」そして「心配いらない、という論理的な説明は通用しない」ということを書きました。
では、論理的な説明がダメならどんな対応が可能なのでしょうか?
掛札論文の中では次のような項目が挙げられています。
細部は省略していますので、詳しくは原文を参照してください。リンク先からDLできる論文の13ページです。
さて、この話と、それから私がこれまであちらこちらで聞きかじり読みかじったことをまとめて構造化するとこんなチャートが書けます。
左端は上から下へ向けて「ストレスによる害が顕在化する流れ」です。なんらかのストレス源泉があって(例:隣家の犬がよく吠える)、それがストレスになると(例:うるさいなあ、と感じる)、心身の緊張をもたらし、それが生活上の障害となって現れる(例:不眠症)。 という流れです。
そこで、この流れを食い止めなければなりませんが、それは必ずしも「ストレス源泉」を封じなくても何とかなります。ここで「食い止める」役割を果たすのが、コミュニティ、本人、医療機関の3者。
「コミュニティ」が行う「ソーシャルサポート」というのは、掛札論文によるとこういうものです。
それから「本人」が行えるのは、自分自身の「身体」をほぐすことと、ストレス源泉に関する情報と自分の認知のコントロール。
身体をほぐす、というのはたとえば腹式呼吸、ストレッチ、ヨガ、エクササイズ、漸進的筋弛緩法(同論文19ページ)など。結局人間は肉体を持つ生き物なので、ストレスではなく肉体自体へのケアも有効なわけです。
「ストレス源泉に関する情報と自分の認知のコントロール」についてはちょっと複雑な話なのでまた別途書きます。
そして3つめは「医療機関」を使うこと。
ということですが、この3者のどの働きによるにしても
ストレスを否認せず、受容することが大事
だそうです。つまり、「ストレスを感じているという自分の状態を否定しない」こと。他人がストレスを感じているようならそれも「大したことじゃないよ」とか「気にしないのが一番」などと否認せず、「そうか、それで不安になっちゃうんだね、大変だね」と、ただありのまま受け止めることです。
「否認」をしてしまうと、「こんなことで不安に思う自分が弱いんじゃないか、間違っているんじゃないか」という自責傾向が強まり、孤独感が増し(これ自体が大きなストレス増加要因)、自分自身の手による心身ケアもやりにくくなり、もちろん医療機関にはかかりにくい・・・という結果を産んでしまうということなのでしょう。そう、私は理解しました。
そういえば、実は私の過去の原子力論考では結構書いてるんですよね。
放射線の害は一般に思われているほど大きなものではありません。
実際にはほとんど心配要らないのです
といった言葉を。これが実は「ストレスの否認」につながる対応の一例じゃないですか(^^ゞ
つまるところある人が、「放射能怖い・・・」と言ったときには、
怖い、という気持ちを誰かに聞いて欲しいのか? それとも、
本当に怖がるべきなのかどうかについて、信頼できる科学的事実を知りたいのか。
どちらなのかに応じてまったく違った対応が必要になるわけですね。後者の人に対しては問題なくても、前者の人に対して「科学的にはこうだから心配要らない」なんて言っても「否認」になるわけで逆効果。
自分ではこのことはなんとなくわかっていたので、この原子力論考シリーズは基本的に後者の人に向けて書いていますが、あらためてハッキリ認識したので今後はより注意深く書きたいと思います。
それでは、「ストレス源泉に関する情報と自分の認知のコントロール」について次回書きます。
(次回へ続く)
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→原子力論考 一覧ページ
前回、「震災+原発ストレスは無限・無期型という点で平時のストレスとは次元が違う」そして「心配いらない、という論理的な説明は通用しない」ということを書きました。
では、論理的な説明がダメならどんな対応が可能なのでしょうか?
掛札論文の中では次のような項目が挙げられています。
ストレスが心身に与える健康影響を少なくするには...
(1) 家族、友達、職場でソーシャル・サポートをどんどん作り、活用する
(2) 自分自身の心と身体のケアを積極的に
(3) 不安やストレスで日常生活に支障が出そうだな、と思ったら、躊躇せずにカウンセリングや医療の活用を
「地震・放射線のストレスと、うまく付き合い続ける方法」 掛札逸美
細部は省略していますので、詳しくは原文を参照してください。リンク先からDLできる論文の13ページです。
さて、この話と、それから私がこれまであちらこちらで聞きかじり読みかじったことをまとめて構造化するとこんなチャートが書けます。
左端は上から下へ向けて「ストレスによる害が顕在化する流れ」です。なんらかのストレス源泉があって(例:隣家の犬がよく吠える)、それがストレスになると(例:うるさいなあ、と感じる)、心身の緊張をもたらし、それが生活上の障害となって現れる(例:不眠症)。 という流れです。
そこで、この流れを食い止めなければなりませんが、それは必ずしも「ストレス源泉」を封じなくても何とかなります。ここで「食い止める」役割を果たすのが、コミュニティ、本人、医療機関の3者。
「コミュニティ」が行う「ソーシャルサポート」というのは、掛札論文によるとこういうものです。
友人、家族、職場の同僚、地域で感じている不安、つらさや怒り、抱えている問題、口に出したいことを自由に表現できる関係を作ること、場所を作ること。そして、何かの時にはお互いに支援しあえるネットワークを作ること。「え? そんなこと?」と思うかもしれません。でも、ストレス・マネジメント、リスク・マネジメントにはとても有効なのです。
(中略)
ソーシャル・サポートの効果は、原発事故に限りません。広い、多様なソーシャル・サポートを持っている人ほど、風邪ウイルスに強い(耐性が高い)ということは実験から明らかになっています。「ストレスは免疫力を下げる」と先に述べましたが、ソーシャル・サポートを持つことでストレス反応が下がり、免疫力も維持され、心やからだの健康が守られる。すでにある病気の悪化も防ぐことができる。さまざまな患者グループや病気の家族会、暴力や戦争の被害者が作るサポート・ネットワークなど、あらゆる場面でソーシャル・サポートは効果を発揮しているのです。(同論文13ページ)
それから「本人」が行えるのは、自分自身の「身体」をほぐすことと、ストレス源泉に関する情報と自分の認知のコントロール。
身体をほぐす、というのはたとえば腹式呼吸、ストレッチ、ヨガ、エクササイズ、漸進的筋弛緩法(同論文19ページ)など。結局人間は肉体を持つ生き物なので、ストレスではなく肉体自体へのケアも有効なわけです。
数多くの研究から、からだをほぐし心をリラックスさせること(リラクゼーション)には、緊張をとるだけでなく、さまざまなストレス反応を下げる効果もあることがわかっています。(同論文18ページ)
「ストレス源泉に関する情報と自分の認知のコントロール」についてはちょっと複雑な話なのでまた別途書きます。
そして3つめは「医療機関」を使うこと。
不安や恐怖がどうしても頭から離れない、眠れない、出かけることもできない...。そんな時には、「がまん」は禁物です。カウンセリングや精神医療を使うという選択もあります。アジア人(アジア系米国人)はおしなべて、カウンセリングや精神科、心療内科などに行くことに抵抗を感じるという研究結果が、米国の研究から明らかになっています。(中略)けれども、ストレスで心がおしつぶされそうになり、生活にも支障が出るようになったら、専門家の助け、医薬品の助けを借りたほうがよい場合も少なくありません。(同論文21ページ)
ということですが、この3者のどの働きによるにしても
ストレスを否認せず、受容することが大事
だそうです。つまり、「ストレスを感じているという自分の状態を否定しない」こと。他人がストレスを感じているようならそれも「大したことじゃないよ」とか「気にしないのが一番」などと否認せず、「そうか、それで不安になっちゃうんだね、大変だね」と、ただありのまま受け止めることです。
「否認」をしてしまうと、「こんなことで不安に思う自分が弱いんじゃないか、間違っているんじゃないか」という自責傾向が強まり、孤独感が増し(これ自体が大きなストレス増加要因)、自分自身の手による心身ケアもやりにくくなり、もちろん医療機関にはかかりにくい・・・という結果を産んでしまうということなのでしょう。そう、私は理解しました。
そういえば、実は私の過去の原子力論考では結構書いてるんですよね。
放射線の害は一般に思われているほど大きなものではありません。
実際にはほとんど心配要らないのです
といった言葉を。これが実は「ストレスの否認」につながる対応の一例じゃないですか(^^ゞ
つまるところある人が、「放射能怖い・・・」と言ったときには、
怖い、という気持ちを誰かに聞いて欲しいのか? それとも、
本当に怖がるべきなのかどうかについて、信頼できる科学的事実を知りたいのか。
どちらなのかに応じてまったく違った対応が必要になるわけですね。後者の人に対しては問題なくても、前者の人に対して「科学的にはこうだから心配要らない」なんて言っても「否認」になるわけで逆効果。
自分ではこのことはなんとなくわかっていたので、この原子力論考シリーズは基本的に後者の人に向けて書いていますが、あらためてハッキリ認識したので今後はより注意深く書きたいと思います。
それでは、「ストレス源泉に関する情報と自分の認知のコントロール」について次回書きます。
(次回へ続く)
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