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「誰かが教えてくれることを信じるのではなく、自分で考えて行動する」ためには、矛盾だらけの「現実」をありのままに把握することから始めるリアリスト思考が欠かせません。「考える・書く力」の研修を手がける開米瑞浩が、現実の社会問題を相手にリアリスト思考を実践してゆくブログです。

原子力論考(5) LNT仮説を否定する証拠の数々

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 原子力論考の5本目です。
 前回書いたように、「放射線障害は、普通に思われているよりもはるかに起こりにくい」つまり「低線量放射線の危険性は過大評価されている」のであれば、現在の放射線防護の考え方のベースになっている「LNT仮説」も間違いである可能性が高いでしょう。

 LNT仮説なんて専門用語じゃピンと来ませんので、アルコール中毒の話に例えて言うと、放射線の影響に関するLNT仮説というのはこういうものです。

    血中アルコール濃度が0.4%を越えると、約50%が死亡する。
    であれば、血中アルコール濃度が0.04%を越えると、約5%が死亡する恐れがある。

 と、ほぼこういう仮説なんですね。要は「大量摂取した場合の危険性をもとにして、少量摂取した場合の危険性を、量に比例する形で見積もった」もの。
 直観的に「そりゃおかしい、ありえない」と思いませんか? だって、血中アルコール濃度0.04%なんてビール1本程度です。死ぬわけがない。

 ところが、こういう仮説をもとにして、現在の放射線防護基準は決められています
 LNT仮説を思い切って簡略化して書くと下記の図のようになります。



  100mSv以上の被曝についてはAのライン(赤の実線)のように、被曝線量に比例して発がん率が上昇した。(臨床データあり)
 100mSv以下についてはデータがないので本当はわからない。でも、Aのラインと同じように線量に比例して発生する、・・・・と仮定しておこう。

 という仮説です。その上で、この仮説をもとに、

 LNTを想定して、危険性が十分低くなるところに被曝線量限度を設定しておこう

 というのがICRPなどの勧告の背景にある放射線防護基準の考え方です。
 しかし、LNT仮説というのは、「放射線の影響がまだよく分かっていなかったときに、念のためこう仮定しておいたほうが安全だろうという形で作られた」仮説であり、実証されたものではありません。

 実際、現在までの間にこのLNT仮説を否定するような証拠が次々と見つかっています。

LNT理論に関する論争 原子力技術研究所 放射線安全研究センター
http://criepi.denken.or.jp/jp/ldrc/study/topics/20080604.html

 LNT仮説を否定する、というのは、ざっくばらんに言うとこういうことです。
 ↓



 こういう話を聞いてもなかなか信じられないという方は多いことでしょう。
 逆に、LNT仮説への反対意見のほうが信じられる、という方も「なんだよ、人騒がせな。そんな、ありえない仮説なんぞ最初から使うなよ!!」と思いたくなっても不思議はありませんよね。

 まあ、私自身は過去においてLNT仮説が採用されたこと自体は批判されるようなことではないと思っています。放射線の健康に対する影響というのは、本当によくわかっていなかったので、念のためにより安全なほうに寄せる形で基準を決めていたのは仕方がないでしょう。

 というわけで、「放射線障害は、普通に思われているよりもはるかに起こりにくい」という仮説は十分に有力なものです。ですから私は(居住地も神奈川なので)、何も心配せずに普通に暮らしています。実際のところ、現在、避難区域と設定されていない場合は何の心配もいらないと思います。


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