知識を構造化しておくと、欠陥さえも役に立つ
さて、ここまで下記7回のシリーズで
■1回目:「こんなに詳しく教えてもらったことは今までなかったです」
■2回目:仕事の「説明」が通じないことに困っていませんか?
■3回目:期待通りの仕事をしてもらうために「説明しなければならない」こと
■4回目:疑問が残るような教え方、してますか?
■5回目:「正解を教えてください」症候群から抜けだそう!
■6回目:目的には論理と感情の両面からアプローチせよ
■7回目:指示待ち族を増やすための冴えたやり方・・・いや、増えちゃ困るって
「指示待ち族を増やすための冴えたやり方」・・・ではなく、逆に、自律的に動けるようにするための教え方について書いてきましたが、このへんで
「知識は構造化しなければならない」
という話をすることにしましょう。
4/22の記事中でこんな図を書いておきましたが、
これも、「知識を構造化した」一例です。
この図の中には、いくつかの構造が現れています。たとえば、
背景があって目的が生まれる、という構造
課題をいくつかクリアすることで目的を達成できる、という構造
課題と材料に応じて手順が決まる、という構造
以上、この3種類の構造が一枚の図の中に表現されてます。
たとえばカップラーメンを食べたいという話であれば、ここにこんなふうに具体的な情報を当てはめることができますね。
↑これが非常に簡単な一例なのですが、仕事をするために必要な知識を教えようとするときは、「知識の構造化」に心血を注がなければなりません。
なぜかというと、「構造化された知識は、欠陥さえも役に立つ」からです。
「欠陥」というのはたとえば情報の欠落です。構造化された知識の中の「一部がわからない」という時には、まわりの情報を手がかりにして推定できることが多いものです。
たとえば上図の中の「ガスコンロとやかん」が空白だったとしても、
「えっと、お湯を沸かすために必要な材料ってことだから、
ガスコンロとやかん、だよね。あ、水もか」
と推定ができますね。
こんな当たり前のこと、構造化なんぞせんでもわかるやないか、という気がするのはもっともですが、それは話題が簡単だからそう見えるだけ。
前提知識や経験の乏しい人に、ちょっと難しい話を教えようとすると、ほんのちょっとした推定にも頭を働かせてくれずにだんだんイライラしてくることがよくあります。
仕事を覚えてしまった人は普段なにげなく無意識にやっているのであまり気がつきませんが、あてずっぽうではない合理的な推定、というのは非常に高度なアタマの働きなのです。勉強を始めたばかりの初心者には難しいことが多いんですね。
そうしてイライラしてくると「ええい、もういい! 言われたとおりやっとけ!!」と、手順だけ指示して単純な仕事をやらせるような展開になりかねませんが、こうなると指示待ち族のにしかなりません。
だから、「合理的な推定」をするようにアタマの補助線として必要なのが「構造化」なのです。知識をきちんと構造化してから教えると、ところどころにちょっとした情報の欠落を作ってそこを「質問」していくことで、「わからない情報について、わかる手がかりをもとに推定する」という習慣を持たせることができます。それには、「知識の構造化」が必要なんですね。
実は私はある意味「知識構造化オタク」と言ってもいいぐらいに、20年以上前からほとんど趣味的にこの「知識の構造化」に熱中しています。それが縁でいろいろと本も書きました。
仕事が10倍速くなる最強の図解術
図解 大人の「説明力!」
「頭のいい教え方 すごいコツ!」
エンジニアのための図解思考 再入門講座
そんなわけですので、これからも「知識の構造化」についてはいろいろと書いていく予定です。どうぞご期待ください!
(続く)