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「誰かが教えてくれることを信じるのではなく、自分で考えて行動する」ためには、矛盾だらけの「現実」をありのままに把握することから始めるリアリスト思考が欠かせません。「考える・書く力」の研修を手がける開米瑞浩が、現実の社会問題を相手にリアリスト思考を実践してゆくブログです。

「正解を教えてください」症候群から抜けだそう!

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 前号の続きです。
 10年ぐらい前の話ですが、あるバイト君を雇って仕事をさせていたときのこと、こんなことがありました。

(業務用サーバーマシンのメンテ方法を教えているときに)
開米:じゃ次は、「kill -HUP  35」で
S君:(言われたとおりに入力して)こうですか?
開米:そう、それでいい
S君:次は何をすればいいんですか?
開米:次は何を、じゃなくて、今のコマンドの意味はわかってる?
S君:えっ・・・・
開米:意味わかってないと1人でやれないだろ? わからないなら質問するんだよ

 というわけです。この時、案の定S君は「kill -HUP 35」という指示されたコマンドの意味をわかっていませんでした。わかっていないことをそのままにして指示だけもらってはいけない、ということを習慣づけるためにこういう会話をしたのですが、世の中にはとかく「正解を教えて欲しがる」人がいます。そのタイプの人は、ある目的に対して

「どうすればいいんですか?」
「正しいやり方(失敗しないやり方)を教えてください」

 と、実現方法だけを聞いてくることが多く「なぜそうなるんですか?」という質問をあまりしてきません。
 実際には、「望む結果」を出すための「適切な方法」というのは、「ものごとのしくみ」、根本的な動作原理と「その時の状況」から算出されるものなので、しくみと状況を知って自分で考えなければいけません。ところが、しくみには興味がない、答えだけを知りたい、という人が少なからずいます。



 これではいつまで経っても自立した仕事ができないので、「しくみ」と「状況」を踏まえて自分で考える、という習慣をつけさせる必要があります。そしてそのためには「教えすぎてはいけない」わけです。
 「適切な実現方法」の部分をいくら教えてやっても逆効果で、かえって「正解教えて依存症」が強まるだけです。教えずに、自分で考えるように仕向けましょう。

 ではここでひとつの例を出します。
 小学校高学年か中学生ぐらいの子供に、家庭科の先生が食中毒を防ぐために気をつけるべきことを教えているシーンと思ってください。この先生の教え方、少し改善したいですね。具体的には、何から何まで先生が指示する形ではなく、ところどころで質問して考えさせる、という形にしたいところです。どんな質問にするか、は、また明日(^^)/

【事例:食中毒予防のポイント】
先生:大事なのは、まずは、手を洗うこと。忘れないでね。
生徒:そういえば、ご飯を食べる前に手を洗いなさいってよく母に怒られました。
先生:ご飯を食べる前だけじゃないですよ。料理をするときもね
生徒:あ、はい
先生:もちろん、まな板や包丁やお鍋なんかもきちんとキレイに洗って置かなきゃダメよ
生徒:はい!
先生:あと、火を通せる料理だったらしっかり加熱することね。
生徒:はい!
先生:そもそもの話を始めたら、お店で食料品を買ってくるときも新鮮なものを選ぶこと、家に着いたらすぐに冷蔵庫や冷凍庫で保管するのも忘れないで
生徒:はい!
先生:あと食べ残したものを取っておく容器もちゃんとキレイなものを使う! いい? わかった?
生徒:わかりました!

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