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「誰かが教えてくれることを信じるのではなく、自分で考えて行動する」ためには、矛盾だらけの「現実」をありのままに把握することから始めるリアリスト思考が欠かせません。「考える・書く力」の研修を手がける開米瑞浩が、現実の社会問題を相手にリアリスト思考を実践してゆくブログです。

精密に練り込まれたたとえ話で「推論」を疑似体験してもらう法

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 昨日の「自分で「推論」していない結論を納得することは難しい」の続きです。

 昨日書いた「説明1」を再掲します。

説明1:電力は溜めておけないため、電力消費量が発電量を上回ると、予測不能の大規模停電を引き起こす恐れがあります。そのため、計画停電をすることはやむを得ないのです」

 「計画停電が必要な理由」に関する上記の説明は完全に正しいのですが、正しいからといって理解が得られるとは限りません。人は、自分に知識がない分野について「結論」だけを示された場合、

  (1)そこになにかゴマカシがあるのではないか、という疑心暗鬼が生まれたり、
  (2)一度聞いて分かった気にはなってもすぐに忘れたり
  (3)間違った形で理解してしまったり

 という事態がよく起きます。もし時間が無限にあるなら、これを防ぐために前提知識からしっかり説明して理解を得ることが望ましいですが、もちろん普通は時間がないのでそれは不可能です。
 では、どうするべきか? ここで、「精密に練り込まれたたとえ話」が有効に働きます。「前提知識」と類似の論理構造を持つ、それでいて誰にでもわかりやすいたとえ話を使って類似の結論を推論させると、このギャップを埋められる場合があります。

analogy.PNG
 具体的に「計画停電」の説明1について、サンプルを見てみましょう。
 この話を理解するために必要な「厳密な前提知識」としては例えばこういうものがあります。

(1)電力は溜めておくことが難しいため、発電量と消費量を完全一致させなければならない
(2)電力消費量は、消費サイドの企業や個人の動向次第で時々刻々変動する
(3)電力会社はそれに応じて発電量を増減させて、消費量と発電量が完全一致するように制御している
(4)もし電力消費量が発電量を大きく上回る状態が続くと、能力の限界に達した発電所が「解列」という事象を起こし、電力系統から切り離される
(5)すると、ますます電力消費量と発電量のギャップが大きくなり、一気に複数の発電所に「解列」が広がり、大規模停電が起こる
(6)いったん解列した発電所を再び再起動して電力系統に再接続するには長い時間がかかるため、大規模停電からの復旧は計画停電からの復旧に比べて非常に長い時間を要する。


 というところです。いかがでしょうか、「解列」とか「電力系統」とか、専門用語がバリバリ出てきますね。こういう説明をしても、残念ながら専門家にしか通じません。

 そこで、この話に論理構造が似ていて、直観的に理解可能な「たとえ話」を作るわけです。具体的には、こういうものです。
 ↓ ↓ ↓

■「電力シーソー物語」
 実は、ほとんど知られていませんが、電力というのは「電気を使う人」と「作る人」のあいだのシーソーゲームのようなものなのです。
 まずは下の図を見ていただきましょう。

seesaw.PNG 左側にいるのは、「電気を使う人」つまり普通の会社や個人ですね。使う方は、冷房、暖房にパソコン、TV・・・と、気ままに電気を使おうとします。電気を使うこと=シーソーの左側に荷物を載せること、だと思ってください。
 いっぽう、右側にいるのは、「電気を作る人」つまり電力会社です。電力会社は、この「電気を使う人」が必要とする電力を供給しなければいけません。そこで、原子力・火力・水力等の発電所を組み合わせて必要な電力を供給します。
 ところが実はこの電力供給システムは、ある種のシーソーのようなもので、左(電力消費量)と右(発電量)がピタリ一致するようにバランスを取らなければいけないんですね。
 そのバランスをとる努力は「電気を作る人」のほうが行っています。「使う人」がエアコンをつければその分を追加、ドライヤーをつければその分を追加、照明を消せばその分を除外、と、きめ細かに発電量を必死にコントロールしています。「シーソー」ですから、バランスさせないと傾いてしまいます。しかも、使う人と作る人の間にはついたてがあって、お互いの状態が見えません。そのため、「作る人」は、使う人の側の荷物が増えたり減ったりして消費量が変わる都度、シーソーのちょっとした変動を察知して対応していかなければなりません。

 では、もしこのバランスが崩れたときは、どうなると思いますか?
 ・・・と、この質問から先が「推論」です。

明日に続きます → 同じ論理構造を持った「たとえ話」をするように気をつける

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