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「誰かが教えてくれることを信じるのではなく、自分で考えて行動する」ためには、矛盾だらけの「現実」をありのままに把握することから始めるリアリスト思考が欠かせません。「考える・書く力」の研修を手がける開米瑞浩が、現実の社会問題を相手にリアリスト思考を実践してゆくブログです。

ラベリングをすることがなぜ「思考力」にも効果があるか

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前回は、「ラベリング」をしておくと、「読解力・図解力」のみならず「思考力」において非常~~~~に良い効果がある、と書きました。

なぜそんな効果があるのでしょうか?

そもそも、「思考力」というのはこんな力です。

 思考力とは、
 「原因」と「結果」の関係を見きわめて
 「原因」側の事象を変化させたときに
 「結果」がどう変わるかを推定する力のこと

おい、そんだけかよ、と突っ込まれそうですが、
とりあえずこのぐらいの単純な定義で考えてください。

すると、「思考力を働かせる」プロセスにおいて、
必ず下記の操作(オペレーション)を行ってますよね。

仮定変更オペレーション

どういうことか、例を挙げると、

仮定1:もし為替相場が10%円安に振れたら
仮定2:もし為替相場がこのまま変わらなかったら
仮定3:もし為替相場が10%円高に振れたら

と、「仮定」を変更していく操作のことです。

「考える」というのは、

仮定をいくつも変更してみて、
その結果がどうなるかをそれぞれ予測すること

であり、それをする力が「思考力」なのです。

さて、その上で、ラベリングをした状態としていない状態、
2種類の文面をもう一度見てみましょう。

<ラベリング前>
為替相場が現在の水準で続いた場合、海外の競合メーカーに比べて生産コストが30%高い水準で固定します。海外生産に踏み切るべきでしょう。

<ラベリング後>
仮定 :為替相場が現在の水準で続いた場合
問題点:海外の競合メーカーに比べて生産コストが30%止まりする
提案 :海外生産に踏み切るべき

どちらのほうが、「仮定変更オペレーション」がしやすいですか?

と聞けば、答えは明らかです。
ラベリング後のほうが明らかにやりやすいですね。

なんたって、「仮定」というラベルがついているので、
ここを変えればいい、ということがハッキリしてますから。

たとえ「仮定」ラベルがなかったとしても同じです。

為替水準:為替相場が現在の水準で続いた場合

と、「仮定」以外のラベルがついていたとしても、
少なくとも「ラベリングのない、だらだら続く文章」に比べれば、

ラベリングされていることで、
変更可能な範囲が限定されているため、
仮定変更オペレーションを行いやすい

わけです。

この7年、読解力・図解力の研修を行ってきましたが、
その間に、当初私が予想していたよりもずっと、

ラベリングの効果は大きい

ということがわかってきました。

だらだら続く文章の状態のままで、「変更可能な範囲」を切り分けて
そこに「仮定変更オペレーション」を適用し、「考える」のはちょっと
ハードルが高いのです。

ピアノを引きながら目玉焼きを作ろうとするようなものです。
(昔何かの番組でプロのピアニストにそんなチャレンジをさせていた
 ことがありましたが(笑))

人間、2つ以上のハードルを一度に超えるのは難しいのです。

「変更可能な範囲を見きわめる」のと「仮定変更オペレーション」
は別々に行いましょう。

そのために、両者の間をとりもつのが「ラベリング」です。

というわけで、毎日ちょっとずつ、ほんの3分だけでもいいから
これをやる気になってくれ!

文章を分解してラベリングするというワークを1日3分だけでも
いいからやってくれ!

そうすればあなたの思考力が少しずつ、しかし着実に上がっていく!

と、私は熱くしつこく研修の場で力説しているわけです。

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