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キングジムファイリング研究室の野原淳です。情報を収集し、蓄積し、検索し、作成し、活用する一連の流れを、便利に、楽しく、速やかにする整理のしかたや工夫、便利なツールなどについて私の考えを書いていきます。コンサルティングでは話さない、小さな改善や未完成のアイデアなども紹介したいと思います。

書評『できる人の脳が冴える30の習慣』米山 公啓 著 中経出版

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 皆さんこんにちは。キングジムファイリング研究室、コンサルタントの野原です。

 今回は、書評です。

 最近、私はにとても興味があります。それは、ファイリングはテクニックではなく「考え方」だと思うからです。机の上を整理整頓することは頭の中を整理整頓することだと思うからです。他にもいろいろあるのですが、とにかく、考え方やファイリングから得られる成果、仕事の効率やアイデアが出る人になることなどは、ファイリングと脳の関係にあるのではないかと考えているからです。

 

やっぱりそうだった、脳とファイリングの関係

 誠ブログのオフミーティングでは書評を書くという約束と交換に本を頂くことができます。(決して強制ではありません)

 私は、先ほど書いたような理由で即座にこの本を選びました。筆者は 神経内科医の米山公啓氏。これまでに250冊もの本を著しており、余暇にはクルーズ船で世界を旅して脳に新しい刺激を与えつつ、リフレッシュさせると言う私の理想のような働き方をしていて、その点でも惹かれました。

 本書には、私が期待していた話がたくさん書かれていました。ファイリングの考え方は効率的に仕事を進めたり、アイデア出しに効果的であると、経験的には思っていました。それを医学的に証明してくれたようで、私にとっては大変痛快でした。

 今後は、いくつかのファイリングテクニックについて、この効果は脳の働きからしても言えることだと付け加えたいですね。

 本書には、タイトル通り、できる人の脳が冴える習慣を30個紹介しているわけですが、そのうち、ファイリングコンサルタントの私から見て、大変共感を受けたお話をいくつかご紹介します。

 

◆片づけをすると、脳が活性化する!

 きましたね~。そのものズバリ。物が散らかっている状態は、それを見るだけで小さなストレスなのだそうです。使いたいですね、このフレーズ。

 ちなみに本書の別の項に書いてあるのですが、小さなストレスは、脳の働きを悪くするのだそうです。

 また、仕事を片づけると、セロトニンという物質が増えて脳が安心するとのことです。脳は未解決の仕事が目の前にちらついている状態をストレスと感じるそうです。

 ちなみに、私が机の上の整理で指導している仕掛りファイリングは、1案件1ホルダーで一つのボックスにまとめて収納する方法です。案件そのものが完全に完了したら、ホルダーから出して共有棚に移動します。

 また、その一歩進んだ提案で、その日の分の仕事が終わると、今までホルダーの短い辺を下にして立てて置いていたものを、長い辺を下にして立てて入れる、というのがあります。

 こうしたとき、「終わったー!」っていう快感があるのですが、やはり脳にとっても非常にいいことだったんですね。

 ※仕掛りファイリングについては過去のブログ作業中の書類をシンプルに管理!仕掛りファイリング参照。

 

◆「忙しい」、と言う人は、頭の回転が悪くなる

 ここでいう忙しい人とは、前回の私のブログ「見える化すれば、仕事もファイリングできる」で言う所の(ていうかスティーブン・R・コヴィーの『7つの習慣』で言う所の)、第Ⅲ領域の仕事に追われている人のことを指すのだと、私は理解しました。つまり、あまり重要ではないが緊急性の高い仕事に追われている人です。

 まず、脳科学的に言って、こういうネガティブな言葉は脳の働きを悪くするのだそうです。

 また、そう言う人は、自分の処理能力を理解していないとのことです。

 本書では、忙しい原因として、仕事をするのが遅い、能力以上の仕事を引き受ける、人に仕事を任せられない、などの例が挙がっていますが、私に言わせれば、これらの原因は、ファイリングそのものか、もしくはファイリング的思考を身につけることで解決できます。

 

◆物は日付で整理する

 最後にご紹介したいのはこれですね。私は、名刺の整理とデジタルデータは時系列での管理を勧めています。名刺については過去のブログ「道具をうまく使う ~ピットレックの使い方 直球編~」でお話していますが、名刺ホルダーを無駄なく使え、簡単なので時間をかけずに収納でき、いつ会ったお客様かは大体覚えているので探せるからです。総合的に見て、最もメリットが大きい方法だと思っています。

 本書では、記憶には時間経過のタグがつけられている、と記されています。いつ会ったお客様か、いつの案件かで大体探せるのは、このためなのかもしれません。

 

テクニックだけに頼ってはいけない

 ここに挙げたのは直接ファイリングにも役立ちそうなものにしましたが、考え方として共感できるものはもっとたくさんありました。項としては独立していなくても、何気なく語られる一文が、「やっぱそうなんだ!」と思えるものは多かったです。

 あと27個の習慣があるわけですが、こうした本を読むときに、私が思うのは、ここにある習慣をそのまま自分に平行移動しただけではダメ、ということです。

 本書は人間の脳について書かれてあり、私のファイリングテクニックと比較して個人差は出にくいのだと思いますが、それでも合う人合わない人はあるはずです。

 自分に合わないから意味がない、と考えるのではなく、この習慣に至った、もしくはその周辺の考え方を感じるべきだと、私は思うのです。

 本書を30個のテクニック集だととらえるのはもったいなさ過ぎます。そういう考えなら、それこそ目次だけ読めば目的は達成されてしまうでしょう。例え、一瞬「そうかなぁ?」と思う項があったとしても、そこに書かれている一文一文には、取り入れるべき考え方が科学的な裏付けを伴ってちりばめられています。

 脳は、誰にでもあるものですので、本書に無関係という方はいません。脳にとって効率の良いやり方を知った上で、自らの仕事を見直すのは、絶対に良いことです。

 本書にもあるのですが、アイデアはまったく別の世界の知識どうしの出会いや新しい組み合わせなのだそうです。以前から気になっていた、脳とファイリングの関係。私にとって、この新しい組み合わせは大変な刺激になりました。

 皆さんも、この本で得られる脳の知識と、ご自身の知識を組み合わせて、新しいアイデアを見つけてみませんか?

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