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キングジムファイリング研究室の野原淳です。情報を収集し、蓄積し、検索し、作成し、活用する一連の流れを、便利に、楽しく、速やかにする整理のしかたや工夫、便利なツールなどについて私の考えを書いていきます。コンサルティングでは話さない、小さな改善や未完成のアイデアなども紹介したいと思います。

ファイリング導入、さて、いつの書類から手をつける?

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 皆さんこんにちは。キングジム、ファイリング研究室コンサルタントの野原です。

 今日は、セミナーの終了後、必ずと言っていいほど聞かれるこの質問について、お話したいと思います。

 

【無理にさかのぼる必要はない】

 ファイリングの答えは一つではありません。お客さまによって違います。ですから、どの部分の書類から手をつけても、それが間違いということはありません。

 ただ、そうは言っても、このケースにおいては、私はほとんどのお客さまに対して一つの答えを提示します。特に、セミナーなどでお客様の状況が分からない場合は決まって、「これからできる文書か、新しいものから始めてください」とお話しています。

 ファイリングにおいて、大事なことは何でしょうか。

 その一つが、継続することだと思います。

 継続。

 とても重要なことなのですが、とても難しいことでもあります。「ファイリング成功の「三識」とは」でも書きましたが、意識は移ろいやすいもの。やるぞ!という気持ちは意外と長続きしないものです。それでも、ファイリングは進めていかないと意味をなしません。

 作業というのは、簡単に言いますと、「ファイル管理表への登録」と「見出し表示」の2点です。

 古い書類から新しい書類に向かってファイリング作業を進めていくと、ファイリング作業をした恩恵にあずかることが、なかなかできません。理由は簡単で、古い書類の閲覧頻度は、統計的に見て、大変低いからです。

 また、古い書類は、それだけ廃棄までの時期が、迫っているとも言えます。ファイリング作業はそれなりの時間を要しますが、完成したとしても、その恩恵を享受できる期間は、さらに短くなっているわけです。

 古い文書をそのままにして、新しいところから始めるのは何とも中途半端な気もするのかもしれませんが、ここは割り切って、新しいものから始めることにしましょう。

 

【さらに場所も限定する】

 さて、ファイリング意識の話を、先ほど少ししました。セミナーなどを聞いた直後は誰でも意識が高まっています。

 私がよくご提案するのは、この意識が高いわずかの期間に、一定の結果を出してしまうことです。

 新しくできるファイルに対してはもちろん、管理表への登録と見出し表示は継続するとしても、新しくできるファイルはそう多くはないでしょう。もう少し作業できるはずです。

 そのパワーをどこに振るか、です。

 オフィスに20本キャビネットがあるとして、まず、20本分のファイル(たぶん2000冊くらいはあるでしょう)を一気にファイル管理表に登録していくようなやり方はお勧めしません。

 コンサルティングの場合は、そういう作業の仕方をしますが、それは定期的に私が訪問して、スケジュールを決めて時間を取ってもらうようにしているからできることで、皆様が仕事の合間に自主的に行うには向いていません。

 どうするかと言いますと、20本のキャビネットの中でも、とりわけ利用頻度の高い1本を選び、そこから完成させて行って頂きます。

 残りの19本はそのままにして、1本分だけ管理表に登録し、見出し表示まで完了させてしまうのです。1本なら100冊程度だと思います。

 当社がセミナーで提供しているファイリングのソフトを使って、100冊なら初めてでも2人くらいいれば半日~1日程度で完成させられます。逆にキャビネット1本でも、フラットファイルばかりのキャビネットは後回しにします。完成まで時間がかかりすぎるからです。

 

【まず、完成させる。これが大事】

 なぜ、そのような方法をとるのでしょうか。これにはたくさんの理由があります。

 まず、短期に完成までこぎつけられることが一番です。ファイリングの効果は、完成してみないと体感できません。意識の高いうちに、完成させてしまうことが大事なのです。

 ファイル管理表への登録と一口にいっても、タイトル、ルール、分類など、たくさんの項目を入れる必要があります。

 で、多くの人が時間を割いてしまうのが、分類です。分類を決めるのは大変です。時間もかかります。詳しくは「分類」でないと見つけたり ~正解のない迷宮「分類」に深入りするな~(1/2)にも書きましたが、答えがありません。まだ始めたばかりなのに、ここに入り込むと挫折の危険性が高まります。

 なので、分類は飛ばしてください。分類はひとまず空欄でも結構です。

 ただ、利用頻度の高いキャビネット1本の中には、1分類しかない場合もあります。そういう場合はそれで進めます。これもまた、キャビネット1本に絞ったメリットです。

 とにかく、見出し表示まで一気にやってしまいます。

什器1本完成形.JPG こんな感じです。

 たとえ1本だけでも、完成させると、達成感があります。

 よく使うキャビネットですから、すぐにその効果を体感できます。

 見出しとして見える状態になると、やめづらくなりますし、全部こうしよう、という気持ちが強くなります。

 そして何より、ファイリングの作業の全体像を、大まかにつかむことができるのです。

 

【キャビネット1本分のノウハウは大きい!】

 どんなことでもそうですが、最初のうちはすぐにうまくなり、ノウハウの習得も早いです。たった1本のキャビネットでも、最後までやり遂げれば、そこで得たノウハウは一つの完成形です。

 次の1本はそのノウハウをふんだんに使って、作業を進めます。先を見越せるので1本目よりもずっと早く完成させることができるでしょう。1人1本でも最初と同じくらいのペースで進められます。2人いれば一気に2本できるかもしれません。

 このようにして、1本1本完成させていくのです。

 

【そしてそのまま全てさかのぼる?】

 こうやって、オフィスのキャビネットをすべて完成させ、そのあと書庫にも手をつけていく...。という方法もあるでしょう。そうすれば、持っているすべてのファイルの管理表が出来上がります。これが本来あるべき形です。これは間違いありません。

 しかし、もう一つの考え方として、オフィスのみで終わらせておく、というのもあります。

 理由は最初に述べたことと同じです。なぜ、書庫にあるのか?それは、閲覧頻度が低いからだったはずです。書庫には基本的に、業務上は不要だけれど、法定保存期間が満了していないから捨てられない書類が置かれています。

 多くは段ボールに入っており、作業性も悪いです。見出しをつけても人の目に触れることもありません。モチベーションは上がりません。

 なので、オフィス全体をやり遂げた、という成功体験のパワーは、そのままにしてきた分類を考えたり、置き場所を変えたりすることに割いてはいかがでしょうか。

 ファイル管理表を印刷して、全体を俯瞰するといろいろなことが見えてきます。オフィスにある分の管理表だけあれば、そうした作業は十分進められます。

 全体を通した作業は、管理表ができていないと見えて来ません。一度作業を体験してみないとわからないこともたくさんあります。

 途中で気づいて、やっぱりこうするべきだったと、やり直すこともあるでしょう。しかし、そのことにはやる前には気づきません。ミニマムスタートの意味は、やってみないと分らないことに早く気づけるというところにあります。

 そうして、これから来るべき書類に備え、管理体制を整えてしまう方が良いと思うのです。

 

 いかがでしたでしょうか。

 ここに書いたことは、ファイリングの学問的には正しい進め方ではないと思います。しかし、何をもって、「正しい」と言うのでしょうか。その判断基準さえ、お客さまによって異なると、私は考えます。

 ファイリングは完成させ、継続させなければ意味がありません。これは、そちらを優先させているわけです。

 特に、このブログを読んで、自分たちで進めたい、という方はそうして小さな成功とノウハウを積んで行った方が早く完成→継続のプロセスに入れると、私は思います。

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