80点からの修正が人間の役割になる
これまでであれば、ある程度の経験を積まなければ、最低限の合格ライン/80点に到達することができませんでした。もはやそんな時代ではありません。AIが80点までは、引き上げてくれます。特に、報告書や稟議書、市場分析レポートや事業施策のアイデア出しなどといった知的力仕事は、「何を知りたいのか、何を解決したいのか」の問いを適切に発することができれば、あっという間にこなしてくれます。
もはや80点のための「知的力仕事」のスキルを身につけるために経験を積む必要はありません。大切なことは、「問いを立てる」能力、つまり「解決すべき課題を設定する」能力を磨くことです。そして、AIと対話することで、その背後にある膨大な知識から学びや気付きを得て、自らの課題設定の希少性や独自性を追求し、AIの出してくれた80点を修正して、100点を越える成果を生みだすことに、人間の役割をシフトさせなくてはなりません。
80点に留まっている人は、コスパが圧倒的なAIに仕事を奪われるでしょう。100点に満足している人は、誰にでもできる仕事ですから、安い仕事に甘んじなくてはならず、人生の選択肢を狭めてしまいます。100点を超えようとするところに、人間の役割があるのです。
システム開発で考えるなら、AI駆動開発でとりあえずの80点程度の仕事は任せられるようになります。この80点以下の領域が知的力仕事であり、SI事業者などの収益の源泉となっている工数需要です。この領域に留まる限り、AIに仕事を奪われるのは、時間の問題です。
80点の上、さらには100点を超えて、新たな創造的な価値を生みだすこと、つまり、希少性と独自性を生みだすことが人間の役割となります。そうするには人間の側が、何をしたいのか、何を解決したいのかを考え、具体的に言語化する能力が必要となります。
現段階では、プログラミング言語の文法やコードの書き方のノウハウなどがなければ、80点であるかどうかを評価できませんが、この問題もそれほど遠くない将来には、AIに代替されるでしょう。そうなれば、観察や対話によるビジネスの現場の理解、事業の戦略や企画、データの解釈やシステムのアーキテクチャーの設計と言った、高次な知的作業の能力が、これまでにも増して重要になります。
「時間をかけて積み上げた経験値」があるというだけでは、80点に留まります。人間が役割を果たすには、その経験値を活かして、もっとお客様や自分たちの価値を高めるためには、何をすればいいのかを考え、100点を目指せるかどうかが、最低限でしょう。これを踏まえて、独自性と希少性を求めて新たな問いを創り出すこと、すなわち100点を超えることが、私たち人間の役割となるのです。
テクノロジーの発展が既存の人間の仕事を奪うのは、いつの時代も同じです。だからこそ、テクノロジーを使うことを通じて新た問いを見つけ、次のテーマを創ることで、私たち人間は、自分達の役割を維持し、社会を進歩させてきました。
「マシンは答えに特化し、人間はよりよい質問を長期的に生みだすことに力を傾けるべきだ。」
"これからインターネットに起こる『不可避な12の出来事』"の中で、ケビン・ケリーが述べた言葉です。
私たちは、この言葉のように、知的力仕事の段階に留まるのではなく、知的創造力を駆使できるように、自らの知性を磨いていく必要があるのでしょう。
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