「和を以て貴しとなす」日本の企業文化でDXを受け入れることは難しい
今週は「DX」という言葉の持つ解釈の多様性について書いてきました。だれもが「DX」という言葉を使っているのに、それぞれに自分の都合のいいように解釈しているように見えます。結果として、同じ「DX」という言葉を使っているのに、お互いに理解し合えず、結果として、何も成果をあげることができないという状況に陥っていることもあるようです。
「それぞれに自分の都合のいい解釈」といっても共通していることがあります。それは、「D=デジタル」です。結果として、だれもが合意できる「DX」の共通項は、「デジタルで何かすること」程度に留まっているようです。
しかし、DXにとって大切なのは「X=変革/Transformation」なのですが、この言葉はとても抽象的です。これは、日本人の性格なのかも知れませんが、争いや対立を避ける傾向があり、この言葉の解釈を曖昧なままにして、合意できそうな「デジタルで何かすること」つまり、「うちデジタルに遅れているからなぁ、なんとかしなくちゃなぁ」という漠然とした空気と共鳴して、「DX=デジタルで何かすること」に留まっているのかも知れません。
もっと積極的に(いや、消極的に)捉えるのなら、「変革なんて大それたことをすれば、仕事は増えるし、混乱や対立が生まれ、和が乱れるから、考えないことにしよう」という暗黙の合意を生みだしていると考えることもできるでしょう。「和を以て貴しとなす」という、聖徳太子が制定した十七条憲法の伝統がいまも息づいているのかも知れません。
少し深掘りすれば、Xが意味する英語の「Transformation」と日本語の「変革」とが、必ずしも同義ではないことにも由来するのかも知れません。「Transformation」の本来の意味に照らせば、「現状とは違う新しい形に作り変える」ことです。日本語の「改善」を意味する「Improvement」つまり、「よりよい状態に移行する、品質や状態を向上させる」と同義ではありません。ただ、日本語の辞書で「変革」を調べると、「改善」の意味も含まれていて、そのあたりが曖昧になっています。
「DX=デジタルを使って業務を改善し、効率を高めること」という解釈に留まっているのも納得できます。また、他のやり方を積極的に模倣し、徹底して洗練化して、競争力を磨いてきた日本企業の成功体験とも呼応し、対立を生むこともなく、「和を以て貴しとなす」という企業文化にもかなうわけです。
「改善/ Improvement」が悪いわけではありません。これは、日本企業の持つ競争力の源泉であり、これに取り組むことは、企業活動に於いて極めて重要です。ただ、そのことと「変革/Transformation」は異なることを受け入れなくてはなりません。
こちらの記事で述べたように、DXとは、次のような取り組みです。
- データとデジタル技術を活用して、
- 顧客や社会のニーズを的確に捉え
- 自社の競争優位を確立すること。
そのために、次の変革を行う。
- 商材やビジネスモデル
- 業務の仕組み
- 企業の文化や風土
「変革/Transformation=現状とは違う新しい形に作り変える」ことであり、簡単なことではないと言うことです。
そんなDXは、簡単にできるはずはありません。そのことを自覚した上で、段階を追って進めていくことは、現実的です。このような大局観を持ってDXの実践に取り組むことが大切なのだと思います。
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このように「生成AI」や「クラウド」の普及と充実は、ユーザーの外注依存を減らし、内製化の範囲を拡大するでしょう。つまり、「生成AI」や「クラウド」が工数需要を呑み込むという構図が、確実に、そして急速に進むことになります。
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