「DX=デジタルを誰もが日常で使うようになること」という解釈
ある、大手企業のDX推進部門から、「DXとは何か、なぜ取り組まなければならないのか、その大切さや実践について、講演をして欲しい」というご依頼を頂きました。事前の打ち合わせで、さらにご意向を伺うと、ご担当の方は、次のようなお話をされていました。
「現場はあまりにもITに疎く、いくら話をしてもせっかく用意したITツールを使ってくれません。ITを使えば自分の仕事が楽になる、効率化するということをわかりやすく伝えていただけませんか。」
あれ?DXの話をしてくれとのことでしたが、どうもそれ以前の話しのようですね。いろいろと話しを聞いてみると、DX推進のご担当は、「DXとは、だれもがITを使うようになること」と解釈されているようでした。
これは、目からうろこでした。私は、「DX=デジタル化」という解釈があることは知ってはいましたが、「DX=デジタルを誰もが日常で使うようになること」という解釈もあるのだと気づかされました。
この点を整理して、「これは、DXの話しではなさそうですね」ということになり、テーマや内容を再考しましょうと言うこととなりました。そして、ご担当の方から、次のようなタイトルでお願いしたいと言うメールが届きました。
「デジタル入門講演 ~デジタルを使って業務効率化を図ろう!~」
なるほど、こう来ましたか(笑)。残念ながら、そのようなネタは持ち合わせていません。これから準備する必要があります。ただ、これは、私にとってはありがたいことで、新たな学びの機会を頂けたわけです。喜んで承らせて頂く旨、返答致しました。
DXという言葉は、実に様々な解釈がなされています。これを次のような4段階に整理することもできるかもしれません。
- 段階3:DX=ビジネスモデル、業務プロセス、企業文化の変革し競争上の優位性を確立すること
- 段階2:DX=デジタル前提のビジネスモデルで新たな収益の機会を生みだすこと(デジタル化:デジタライゼーション)
- 段階1:DX=アナログな業務の仕組みをデジタル化し効率化すること(デジタル化:デジタイゼーション)
- 段階0:DX=デジタルを誰もが日常で使うようになること
段階0ができないのに、一気に段階3(本来の意味でのDX)に至ることはありません。これをDXというかどうかともかくとして、大切なステップです。そして、いま、世間のDXの喧伝に煽られて、段階0に至っていない(と思っている)企業が、「これはヤバいぞ」と真剣に考えるようになり、自分たちもDX(?)に取り組もうという気運を高めているのかも知れません。
実は、今回の話しだけではなく、同様の打診はこれまでもいくつかありました。ただ、どうも自分が話せる範疇ではなさそうなので、正直なところあまり積極的に関わってきませんでした。しかし、今回の件で、これはちゃんと取り組まなければならないテーマだと、改めて気付かされたわけです。まあ、私にとっては、新たなチャレンジであり、新規事業なので、少々ワクワクしています。
改めて、言葉をいい加減に扱ってはいけないなぁということを思い知らされました。DXという言葉1つをとっても、人それぞれに、あるいは世間には、これだけのバリエーションがあるということですね。
プロとしてお客様にお金を頂く以上は、自分の専門領域で、正しく言葉を使えるようになること、あるいは、素人さんより、言葉の分解能が高いことが大切です。まだまだ、修行が足りないことを気付くいい機会になりました。
【募集開始】次期・ITソリューション塾・第47期(2024年10月9日 開講)
次期・ITソリューション塾・第47期(2024年10月9日[水]開講)の募集を始めました。
次のような皆さんには、きっとお役に立つはずです。
- SI事業者/ITベンダー企業にお勤めの皆さん
- ユーザー企業でIT活用やデジタル戦略に関わる皆さん
- デジタルを武器に事業の改革や新規開発に取り組もうとされている皆さん
- IT業界以外から、SI事業者/ITベンダー企業に転職された皆さん
- デジタル人材/DX人材の育成に関わられる皆さん
ITソリューション塾について:
いま、「生成AI」と「クラウド」が、ITとの係わり方を大きく変えつつあります。
「生成AI」について言えば、プログラム・コードの生成や仕様の作成、ドキュメンテーションといった領域で著しい生産性の向上が実現しています。昨今は、Devinなどのような「システム開発を専門とするAIエージェント」が、人間のエンジニアに代わって仕事をするようになりました。もはや「プログラマー支援ツール」の域を超えています。
「クラウド」については、そのサービスの範囲の拡大と機能の充実、APIの実装が進んでいます。要件に合わせプログラム・コードを書くことから、クラウド・サービスを目利きして、これらをうまく組み合わせてサービスを実現することへと需要の重心は移りつつあります。
このように「生成AI」や「クラウド」の普及と充実は、ユーザーの外注依存を減らし、内製化の範囲を拡大するでしょう。つまり、「生成AI」や「クラウド」が工数需要を呑み込むという構図が、確実に、そして急速に進むことになります。
ITベンダー/SI事業者の皆さんにとっては、これまでのビジネスの前提が失われてしまい、既存の延長線上で事業を継続することを難しくします。また、ユーザー企業の皆さんにとっては、ITを武器にして事業変革を加速させるチャンスが到来したとも言えます。
ITに関わる仕事をしている人たちは、この変化の背景にあるテクノロジーを正しく理解し、自分たちのビジネスに、あるいは、お客様への提案に、活かす方法を見つけなくてはなりません。
ITソリューション塾は、そんなITの最新トレンドを体系的に分かりやすくお伝えするとともに、ビジネスとの関係やこれからの戦略を解説し、どのように実践につなげればいいのかを考えます。
詳しくはこちらをご覧下さい。
※神社の杜のワーキング・プレイス 8MATO(やまと)会員の皆さんは、参加費が無料となります。申し込みに際しましては、その旨、通信欄にご記入ください。
- 期間:2024年10月9日(水)〜最終回12月18日(水) 全10回+特別補講
- 時間:毎週(水曜日*原則*) 18:30〜20:30 の2時間
- 方法:オンライン(Zoom)
- 費用:90,000円(税込み 99,000円)
- 内容:
- デジタルがもたらす社会の変化とDXの本質
- IT利用のあり方を変えるクラウド・コンピューティング
- これからのビジネス基盤となるIoTと5G
- 人間との新たな役割分担を模索するAI
- おさえておきたい注目のテクノロジー
- 変化に俊敏に対処するための開発と運用
- アジャイルの実践とアジャイルワーク
- クラウド/DevOps戦略の実践
- 経営のためのセキュリティの基礎と本質
- 総括・これからのITビジネス戦略
- 特別補講 *講師選任中*
神社の杜のワーキング・プレイス 8MATO
8MATOのご紹介は、こちらをご覧下さい。
6月22日・販売開始!【図解】これ1枚でわかる最新ITトレンド・改訂第5版
生成AIを使えば、業務の効率爆上がり?
このソフトウェアを導入すれば、DXができる?
・・・そんな都合のいい「魔法の杖」はありません。
これからは、「ITリテラシーが必要だ!」と言われても、どうやって身につければいいのでしょうか。
「DXに取り組め!」と言われても、これまでだってデジタル化やIT化に取り組んできたのに、何が違うのかわからなければ、取り組みようがありません。
「生成AIで業務の効率化を進めよう!」と言われても、"生成AI"で何ですか、なにができるのかもよく分かりません。
こんな自分の憂いを何とかしなければと、焦っている方も多いはずです。