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本質を見失ったDXの末路 2/3

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前回は、ERPとBPRが、本質を忘れ、カタチばかりの取り組みに終わった話を書きました。いま、DXも同じ道を歩んでいるように見えます。そのあたりのことを解説します。

同じ轍を踏みそうなDX

昨今のDXの喧騒に、BPRERPと同様の行く末を感じています。DXブームに翻弄され、その本質を議論することなく、手段であるはずのデジタル技術やデジタル・サービスを使うことが目的化しているように見えるからです。そして、その混迷の度合いは、BPRERPの頃以上かも知れません。

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デジタルが前提の社会になり、人々の価値観やライフスタイル、ワークスタイルが大きく変わってしまいました。また、不確実性が高まり、将来を予測することが難しくなりました。そんな時代の変化に適応できなければ、企業は生き残ることがはできません。だから、こんな社会に適応するために「会社を作り変える」必要があります。

過去の成功体験を土台としたビジネス・モデルやビジネス・プロセスを変革し、企業の文化や風土を、デジダル前提の社会に適応するために作り変える必要があります。そんな変革がDXです。

BPRに対応するERPパッケージのような、特定のパッケージやサービスを使えば、実現できるわけではありません。DXはデジタル時代に最適化された会社に作り変えることを目指すからです。それは、ソフトウェアだけの話しではなく、そこで働く人たちの思考や行動の様式をも変える必要があります。そのための手段として、デジタル技術を使うことは、必須ですが、使うことが目的ではありません。つまり、デジタルを使うこと以外にも、やらなくてはならないことが沢山あるのです。

しかし、トップダウンの「DX指令」に翻弄された各組織は、このような本質的な議論を深めることなく、しかも、自部門だけでできるさっさとできる「カタチ」を模索します。つまり、本来のDXに取り組むことではなく、「DX的なこと」をやって、「見える成果」を示したいと考え、デジタル・ツールの導入やクラウド・サービスの利用に邁進するわけです。

これが悪いというわけではありません。これによって、業務の効率化が進みや利便性も高まり、結果として、デジタル技術への見識を広めることにもつながります。しかし、それがすなわち「DX」ではありません。

「デジタル社会に適応するために会社を作り変える」というDXの本来のあるべき姿が、どこかに置き去りにされてしまっては本末転倒です。「既存の業務をそのままに効率化や利便性の向上」に留まるとすれば、これまで取り組んで来たデジタル化やIT化と何も変わりません。

DXとデジタル化が区別できない」という方がいらっしゃいますが、そうなってしまうのは、このようなDXの本質を置き去りに、「経営者に見せるためデジタル活用事例づくり」をしているからではないでしょうか。

経営者もまた、この区別が明確ではありませんから、「現場が取り組むデジタル活用」を「DXの実践」と評価しているわけで、本来の意味でのDXが、進むことはありません。

まさに、かつてのBPRERPの関係のごとく、「かけ声の大声化と手段の目的化」が進み、何年か経ってふり返ると、結局のところ、「業務プロセスのデジタル化が進んだ」程度の成果に終わるのではないかと危惧されます

ではどうすればいいのでしょうか。次回はこの点について解説します。

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斎藤昌義 著
A5判/384ページ
定価2,200円(本体2,000円+税10%)
ISBN 978-4-297-13054-1

目次

  • 第1章 コロナ禍が加速した社会の変化とITトレンド
  • 第2章 最新のITトレンドを理解するためのデジタルとITの基本
  • 第3章 ビジネスに変革を迫るデジタル・トランスフォーメーション
  • 第4章 DXを支えるITインフラストラクチャー
  • 第5章 コンピューターの使い方の新しい常識となったクラウド・コンピューティング
  • 第6章 デジタル前提の社会に適応するためのサイバー・セキュリティ
  • 第7章 あらゆるものごとやできごとをデータでつなぐIoTと5G
  • 第8章 複雑化する社会を理解し適応するためのAIとデータ・サイエンス
  • 第9章 圧倒的なスピードが求められる開発と運用
  • 第10章 いま注目しておきたいテクノロジー
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