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観光促進の施策としてのワーケーションはうまくいかないと思う

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コロナ禍になり、リモートワークが受け入れられるようになり、政府も「ワーケーション」や「ブレジャー」という言葉を使い、観光と仕事を融合した新しい観光のスタイルを「観光庁」の施策として、取り組もうとしています。

「ワーケーション」とは、「work(仕事)」と「vacation(休暇)」を組み合わせた造語であり、休暇中に仕事をするイメージで、休暇のついでにそこで仕事をしましょうという感じですね。一方、「ブレジャー」とは、「business(ビジネス)」と「leisure(休息)」を組み合わせた造語で、出張先などで滞在期間を延長して、仕事の後にレジャーも楽しもうということです。

いずれも、「観光促進」のための施策であって、「仕事の価値を高める」といった視点はないようです。このような観光施策としてのワーケーションが、普及、定着してゆくことは難しいことを新潟県妙高市でワーケーションに取り組まれている 竹内 義晴 さんも指摘されています

「ワークライフ・バランス」という言葉があります。2009年を頂点として、日本の人口が減少に転じ、少子化対策として仕事より生活の比重を高める重要性が注目されるようになった時期、この言葉は盛んに使われました。ただ、この言葉は、仕事と生活が、対立関係にあることを前提にしています。つまり、仕事のやり過ぎは会社の搾取につながり、身体やメンタルを蝕む「辛い」ものだから、個人や家族との「楽しい」生活を増やし、両者の帳尻を合わせるべきだという考えです。

そもそも、私はこの言葉に、以前から違和感を感じていました。本来、仕事と生活は、対立関係に置くべきではないと思うからです。個人的なことですが、私にとっては、仕事は、成長の機会でした。だから、仕事以外の時間でも、何かにつけて、仕事のことを考えていたし、仕事に役立つかどうかともかくとして、社会人として一人前になるためにと、様々なジャンルの本も何冊も読みました。ケジメがないと言われれば、それまでですが、ことさら取り立てて「ワークとライフをバランスしよう」なんて、考えることもありませんでした。

生活を向上させるには、自分の仕事の質を高め、人とのつながりや知識も増やさなくてはいけないし、なによりも、自分自身が人間として成長しなくてはなりません。仕事と生活を区別するのは、現実的ではないと言う考えが、私の生き方の根っ子にあります。

なにも、こういう生き方を無理強いするつもりはありません。人生は人それぞれです。ただ、時代は、あきらかに、私のような考え方が、有利な社会になってきたようにも思います。

かつて、均質な労働力を集め、組織全体の効率を高める労働集約型経営が求められていました。昭和から平成に移り変わった1989年には、「24時間戦えますか」が、新語・流行語大賞にランクインしました。「ワーク・ライフ・バランス」は、そんな時代を引きずっていたからこそ、働き過ぎを戒めるメッセージとして、役割を果たしたとも言えるのです。

しかし、多様な個人の才能を最大限に引き出し、それらを組み合わせてイノベーションを生みだす知識集約型経営が、求められているいま、もはや時代にそぐわなくなりました。かつてのような、仕事と生活を対立関係に置くのではなく、生活あるいは人生(ともにライフ)の一部として、仕事を位置付けることが大切な時代になるのだろうと思います。

「ワーク・イン・ライフ」

そんな価値観が求められているように思います。「ワーケーション」や「ブレジャー」の位置付けも、そんな社会の価値観の変化に合わせて、再定義すべき言葉かも知れません。

しかし、いまの政府の解釈は、「辛い仕事」と「楽しい観光」という対立軸を設け、「辛い仕事をする場所と疲れを癒やす場所を同じところでやりましょう。そうすれば、仕事のストレスを溜め込むこともなく、健康な生活が送れますよ」ということのように思えます。

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観光事業者もまた、そんな時代遅れな解釈を土台に、「新鮮で美味しい魚が食べられますよ」とか、「海に沈む夕日がキレイですよ」と同じように、観光の目玉として、「ワーケーション」や「ブレジャー」を位置付けているように思うのです。

働く場所が観光地であるかどうかはともかくとして、都会の喧噪から離れ、自然に囲まれた非日常の中で仕事をすることは、創造性をかき立てられます。そんな場所に、仕事仲間が集まり、体験をリアルに共有することで、信頼関係が育まれたりといったことは、とても価値のあることです。

地方が持つ自然や風土の価値は、そんな非日常の提供であり、それを活かして「仕事の価値を高める」ための施策を打つことこそが、地域の新たな魅力の創出になるのではないでしょうか。

休暇や休日の「ついでで」はなく、平日のワークスタイルのひとつの選択肢として、捉えるべきであり、観光は、「ついで」と考えることが、望ましいと思っています。

「ワークにストイックなワーケーションスポットやワーケーションプランを切望します。」

沢渡 あまね さんが、「ワーケーションは観光業主軸で企画するとうまくいかない(私見)」が、このようなことを書かれていたのですが、まったくその通りです。

「辛い仕事」と「楽しい観光」という対立軸を置き、「仕事の価値を高める」と言う視点が抜け落ちているワーケーションが普及し、定着することはないように思います。

私がいま建設を進めている「神社の杜のワーキング・プレイス 8KUMO(やくも)」も、大自然の中で、仕事の価値を高めるために、施設やプログラムの充実を図ってゆきたいと思っています。

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