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テレワークの5段階と成功のための3要件

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テレワーク適応へのレベルを整理してみた。

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コロナ禍によって、結果的にレベル1からレベル2に引き上げられた企業は少ないだろう。そしてこれを機にそれ以上の段階へとすすめようとする企業も出始めている。ただ、レベル3の段階に留まっている限りは、テレワークに適応できたとは言えない。この段階は、テレワークの「カタチ」を作ったに過ぎない。つまり、カタチは時代の変化に対応しても、従来通りの「労働時間の管理」に留まる限り、テレワークの価値を十分に引き出すことは難しい。

「労働時間の管理」は、「モノが主役」社会だった時代の考え方だ。たくさんのモノを作り、それを売りさばくことで、企業は収益を上げていた。個々人の個別最適ではなく、汎用的な標準品を効率よく作り、広く市場に売りさばくためには、労働力が最も大切な経営資源であり、その効率や規模を維持することが、経営者には求められていた。そのために、従業員は、働く時間を管理され、長時間働くことが美徳されていた。

もはや「モノが主役」の時代は終焉を迎え「サービスが主役」の時代を迎えたにもかかわらず、この思想が未だ引きずられているのが、レベル2の「監視ソフトを入れる」や「始業時と終業時に上司にメールを送る」というカタチに現れている。つまり、成果ではなく時間を管理する思想だ。例え、レベル3になっても、ここに切り込まない限り、テレワークの価値を引き出すことは難しい。

レベル3以下は、「放置しておけば、仕事をさぼる従業員」なので、しっかり監視、管理しなければならいと考える会社と、「仕事を与えてくれるのが会社。給料分はしっかり働くが、それ以外はプライベート」と考える従業員との間の暗黙の合意が、前提となっている。

レベル4やレベル5は、従業員と会社の相互信頼が前提となる。時間を会社が管理するのではなく、成果目標を会社と合意し、従業員はその達成をコミットする。「コミットする」とは、未達ならば、その責任を取るということでもある。これを前提に、会社は、従業員を信頼して権限委譲し、時間の管理も本人に委ねる。従業員は自己管理能力が求められることになるが、コミットを果たすために最善を尽くそうとするので、自発的で自主的な工夫やスキルの向上が促されることにもなる。また、このような組織では、現場での即決即断が可能となり、ビジネス・スピードの向上に寄与することにもなる。

不確実性が常態化する社会にあって、長期的な変化を見通せないいま、圧倒的なビジネス・スピードが事業の継続と企業の存続にとって、必須の要件となった。「圧倒的なビジネス・スピード」を実現するには、現場に判断と実行を委ねるしかない。そんな権限委譲を支えるために徹底してビジネス・プロセスをデジタル化し、現場の見える化や情報の共有、コミュニケーション・スピードの高速化、ペーパーレス化やワークフローの電子化などが求められている。テレワークも場所や時間に制約を受けない働き方を実現することであって、圧倒的なビジネス・スピードを手に入れるための1つの要件となった。

デジタルトランスフォーメーション(DX)とは、そんなデジタル・ワークプレイスの実現であり、それを活かすための人の考え方や組織の振る舞い、制度などを変革すること、すなわち、「デジタル・テクノロジーを駆使して、企業の文化や風土を変革すること」である。

テレワークの適応レベルで言えば、レベル45の段階に至って、始めてDXの実現といえるだろう。

ちなみに、アジャイル開発やDevOpsは、このような自律した個人やチームが前提だ。この前提がないままに、手法だけをまねしても、ビジネスの成果に結びつけることは難しい。

そんなテレワークを成功させるための要件は、次の3つだ。

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相互信頼を前提とした権限の委譲

信頼とは、お互いが深く知り合うことが前提であろう。隠し事があり、疑心暗鬼のままでは信頼は育まれない。いいことも悪いことも、お互いに事実を知り、共にどうして行こうかを考える組織の風土がなければ信頼は生まれない。そのためには、会社としては、社員への徹底した情報の開示を行うことであり、対話ができる環境や雰囲気を育むことであろう。これらを支えるためにビジネス・プロセスのデジタル化、すなわちERP、経営ダッシュボード、チャットなどを駆使し、いつ、どこからでも、オープンに必要な情報に接し、コミュニケーションできる仕組みを用意すべきだ。

セルフマネジメント

セルフマネジメントすなわち、労働時間や仕事の進め方、自分のスキルアップや学びの機会など、自分で目標を定め、自ら管理できる能力なくして、テレワークの成果は引き出せない。仕事に於いても、自らコミットした目標を確実に達成することを、外部の管理者ではなく、自分自身で管理して、確実に遂行できなくてはならない。そんなことはやったことがないなら、やってみるべきだ。それができないのなら、テレワークは難しいので、出社して「管理される働き方」を続けるべきだろう。

コミットメントと成果の管理

雇用形態をジョブ型へと移行することは必然と言える。テレワークにおいて、働いている社員を公平に評価するためには、成果しかない。それは、時間で管理することはできないからだ。そのためには、ミッション・ステートメントの明確化が必要であり、コミットした成果を達成するために、セルフマネジメントができることを前提に仕事を進める必要があるだろう。そうなれば、社員と会社の役割、あるいは雇用のあり方の再定義は必然となる。

インフラを整備すれば、テレワークはうまくいくというのは、甘い考えであろう。インフラは、いわば空気のような存在であり、当然の前提である。テレワークを成功させるとは、働き方、あるいは雇用のあり方を改革することである。コロナ禍を機会に、如何にしてレベル4やレベル5を実現するのかを模索すべきではないかと思う。

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