「ARMを知らない」から気づかされる仕事への向き合い方
「ARM(アーム)という言葉を聞いて何のことか、思い浮かぶ方は手を挙げてください」
ITソリューション塾に参加する80名ほどに質問をしてみたところ20名ほどしか手が上がりませんでした。大阪で開催しているITソリューション塾でも30名ほどに同じ質問をしてみたところ、やはり数名ほどしか手が上がりませんでした。
ソフトバンクが買収したことで「一躍有名になった」ばすのARMですが、IT業界で仕事する人たちにさえ、この程度の認知度とは少し驚きました。
この場合は、ARMという言葉そのものを知らなかったわけですが、「言葉は知っているけど、その意味が分からない」はよくある話しです。例えば、人工知能と機械学習という言葉は知っているけれども、その関係が分からない方は多いようです。ましてや機械学習とディープラーニングの関係となると、推して知るべしです。
人工知能、機械学習、ディープラーニングなどの言葉が、この業界では日々交わされているわけですが、それが何かをしらないままに使っているのだとすれば、それは相手に対する背信行為といえるでしょう。
ただ、この辺りの言葉はすこし専門的なので仕方がないかもしれません。しかし、「アプリケーション」と「プラットフォーム」と「インフラストラクチャー」の違いや関係が分からないとなると、これは問題かもしれません。クラウドがビジネスの前提として認識されるようになったいま、SaaSやPaaSやIaaSといった言葉もお客様との間で日常交わされています。それと重ねて考えられないとしたら、これは仕事に不都合を生ずるレベルです。
「自分に直接関係ないので知らなくても支障はありません」
そんな言い訳も聞こえてきそうですが、ほんとうにそうなのでしょうか?
ビジネスは、お客様とのさりげない、それでいて幅広い会話の中からきっかけが生まれてくるものです。案件はオポチュニティを見つけることから始まります。そんなオポチュニティ発掘に効果的なのは、お客様との対面時間を長くすることです。いろいろな会話の中で、相手も気付きこちらも気付く、そんな場をもつことからオポチュニティは見つかります。しかし、それができないとなると、オポチュニティ発掘のチャンスは限られてしまいます。
世間話でもいいのかということをきかれることもありますが、ITに関わるビジネスをしているわけですから、ITに関わる話題でなければ、チャンスも限定されるでしょう。
「お客様の言われたとおりやるのではなく、こちらから積極的仕掛けて欲しい」
そんなことを期待されても、こんなITについての常識や世の中の動きを知らなければ、何処に提案のきっかけがあるのが想像できず、身動きがとれません。
スタンフォード大学の心理学者であるキャロル・S・ドゥエックは、人間には、「固定的知能観」か「拡張的知能観」かの、いずれかの心の有り様があり、それによって、その人の能力は決まってしまうというと主張しています。
固定的知能観(fixed-mindset)の持ち主とは、自分の能力は固定的で、もう変わらないと信じている人です。彼等は、自分の能力はこの程度だから、努力しても無駄だとみなします。また、自分が他人からどう評価されるかが気になり、新しいことを学ぶことから逃げてしまう心の有り様の持ち主です。彼等が学ぶのは、それが自分にとって利益になる場合です。つまり、これを知らなければ仕事がこなせない、収入が減るなどの場合です。「自分には直接関係ない」からと考えることも、そんな心の有り様と言えるでしょう。
一方、拡張的知能観 (Growth-mindset)の持ち主とは、自分の能力は拡張可能であると信じている人です。彼等は、人間の能力は努力次第で伸ばすことができると信じ、たとえ難しい課題であっても、学ぶことに挑戦する心の有り様の持ち主です。彼等は、好奇心旺盛に自らテーマを作り、学ぶこと自体を楽しむことができます。「自分には直接関係ない」場合でも関心を示し、自分の文脈に当てはめて、いろいろと考えてみることで、自分の知識を拡げて行きます。
このような、「自分の能力や知能についての心の有り様」=「知能観(Mindset)」が、学習についての意欲を左右し、能力の獲得や育成に大きな影響を与えるという考え方です。
「誘われても呑み会には行きません、コミュニティや勉強会にはいきません。」
自分とは「直接関係のない」人たちの集まりかもしれません。しかし、新しい知識を得たり、これまで気付かなかった視点を与えられることもあるでしょう。また、新しい人の繋がりがうまれることで、自分の能力を発揮するチャンスが拡がるかもしれません。もちろん、それぞれに経済事情や家族のこと、あるいは信念もあり、それができないことがダメだなどは言うつもりはありません。しかし、もし「自分には直接関係ないから」が理由であるとすれば、少し考えてはどうでしょう。もしかしたら、自分が「固定的知能観」の持ち主のためかもしれません。
「優秀な人」とは、「学習することを楽しいと感じることができる人」です。だから、「優秀な人」は、すこし専門から外れていても、旺盛な好奇心と自発的な勉強で、何とかしてしまいます。そして、自分の能力を拡げて、結果として、さらに「優秀な人」になってしまうのでしょう。
もしIT業界にいて「ARMを知らない」のなら、それがなぜなのかを少し考えてみてはどうでしょう。もしかしたら、「固定的知能観」にとらわれて、本来の才能を発揮し切れていないのかもしれません。
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最新版(6月度)をリリースしました!
ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/LiBRA
最新版【2017年6月】をリリースいたしました。
今月は、特にブロックチェーンや5Gについてのプレゼンテーションを充実させています。
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ビジネス戦略編
【新規】根拠なき「工数見積」と顧客との信頼関係の崩壊 p.32
【新規】工数ビジネスの限界 p.34
サービス&アプリケーション・先進技術編/IoT
【新規】IoTとAIの一般的理解と本当のところ p.15
サービス&アプリケーション・先進技術編/人工知能とロボット
【新規】自動化と自律化 p.14
【新規】学習と推論 p.27
【新規】うんコレ1枚でわかる画像認識 p.34
【新規】自動運転のためのプラットフォーム p.81
サービス&アプリケーション・基本編
変更はありません
開発と運用編
【新規】「仕様書通り作る」から「ビジネスの成果への貢献」へ p.11
クラウド・コンピューティング編
【変更】パブリッククラウド p.38
【新規】クラウドの見積り方(1)と(2) p.79-80
インフラ&プラットフォーム編
【変更】ウェアラブル=身体に密着するデバイス p.21
【新規】ウェアラブル・デバイスの進化 p.22
【変更】ウェアラブル・デバイスの種類と使われ方 p.23
【新規】これからのクライアントを占うキーワード p.25
【新規】ユビキタスコンピューティング = 10年前のIoT p.26
【新規】スマートフォーム p.27
【変更】ユビキタスからアンビエントへ p.28
【新規】ビーコン 事例 p.29
【新規】VR 事例p.30
【新規】AR 事例p.31
【新規】MR 事例p.32
【新規】セキュリティ対策対象の変化 p.112
【新規】コレ1枚でわかる第5世代通信 p.209-211
テクノロジー・トピックス編
【新規】ARM:2016年の売上高は16億8900万ドル p.22
【新規】ARM:ライセンスパートナー p.23
【変更】ARM:拡がる適用分野 p.26
【新規】ARM:CPU設計から製造まで p.27
【新規】ブロックチェーンとは何か p.33
【新規】ブロックチェーンの3つの特徴 p.32-36
【新規】ブロックチェーンで使われる暗号技術 p.37-38
ITの歴史と最新のトレンド編
【新規】ソフトウェア化するモノ p.11
新刊書籍のご紹介
未来を味方にする技術
これからのビジネスを創るITの基礎の基礎
- ITの専門家ではない経営者や事業部門の皆さんに、ITの役割や価値、ITとの付き合い方を伝えたい!
- ITで変わる未来や新しい常識を、具体的な事例を通じて知って欲しい!
- お客様とベンダーが同じ方向を向いて、新たな価値を共創して欲しい!
斎藤昌義 著
四六判/264ページ
定価(本体1,580円+税)
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