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「衰退産業」という思考停止に申し上げたいこと

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「この業界は、もはや衰退産業ですよ。確かに今は、人手不足です。でも利益はカツカツです。今の騒ぎか終わったら、どうなるんですかねぇ。」

SI事業者の営業幹部から、こんな話を伺った。不安であることは理解できる。しかし、「うまくいかない、先が見えない」理由に「衰退産業」というのはいかがなものかと、返答に窮してしまった。

どのような産業であっても市場は変化する。その変化を先読みし、先手を打って対応するのが経営であり、その先兵が営業だ。

確かにSI事業者は、厳しい価格競争に晒されている。利益も上げにくい。しかし、そのような中にあっても、確実に利益を上げているところもある。

例えば、ある200名ほどのSI事業者は、アジアに開発拠点を構え、上流は日本で、コモディティ化し価格競争の厳しい開発や保守は、海外でという仕組を作り、お客様の厳しい単金要求にも応えられる体制を作っている。

今は、既存需要に支えられているが、厳しい要求が出てきたときにも競合に負けず、しかし、確実に利益を確保できる体制を築こうとしている。これは、営業の自信にもつながっている。

また、あるところは、数年前から中国に開発拠点を構え、現地で採用したエンジニアを3年間日本に転勤させ、日本のお客様に貼り付けて、日本的な仕事の流儀を徹底的に学ばせている。そのあと、中国へ戻し、現地で開発に当たらせている。これを繰り返すことで、中国であっても、日本的な仕事感覚で仕事ができる体制を整えようというのだ。日本で仕事をさせるので、その間は、労賃は安くは出来ないが、彼らが帰国すれば、日本との意思疎通も容易にでき、安心して仕事をまかせることができる。

相当数の開発要員を運用要員、それも、運用設計や高度な運用技術に対応できる要員として再教育し、体制を大幅に転換する取り組みをされているところもある。クラウドやITインフラのアウトソーシング需要の拡大を見越し、高度な運用技術を求める新たな需要に対応しようというものだ。また、マネージド・サービスを強化しようともしている。大手ユーザー企業は、運用のコストは下げたいが、海外に運用をまかせたくはないという意識は根強いようで、仕事を増やされているという。

ある企業は、クラウドネイティブなアプリケーションの開発要員を大幅に増員し、これからの需要を先取りする体制を構えている。この分野については、まだまた人手不足だ。案件規模は小さいが利益率は高い。数をこなし利益を拡大しようという戦略だ。手応えを感じ始めているという。

このような時代の変化をうまく捉え、確実に業績を上げている会社がある一方で、コモディティ化した技術にしがみつき、自らを厳しい価格競争に晒している企業もある。

もちろん、今を食べてゆかなくてはならない。そんなリスクは犯せないという考え方も、当然のことだ。しかし、もはや過去の成功体験が通用しない時代だ。新しい成功体験を作ってゆくしかない。

このような時代の流れを先取りし、積極的な取り組みをしている企業に共通している点は、「経営が営業を信頼している」ように見える。お客様の第一線に接する営業が司令塔になって、社内のリソースをうまくとりまとめている。それを経営者が支援している。

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残念ながら、過去の成功体験から抜け出せず、未だその法則をかたくなに守り通そうとする経営者もいる。彼らの言訳は、決まって、「新しい仕事を取ってくることに営業は優先してもらいたい」というものだ。魅力的な商材がないままに、お客様の需要がそこにないままに、新しい顧客を開拓しろと言われても無理な話だ。それを営業の能力不足、努力不足とかたづけてしまうのは、いかがなものか。

時代の流れは、待ったなしで、速度を速めている。ITは、その変化の最前線にいる。そして、確実にITに関わる需要はこれまでにも増して高まっている。「衰退産業」ではなく、「成長の方向が変わった」、「そのためのビジネスの作法が変わった」と表現すべきだろう。そう考えてこそ新たなビジネスの筋道を描くことができる

【閲覧無料】最新のITトレンドとビジネス戦略・2015年2月版

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「最新ITトレンドとビジネス戦略【2015年2月版】」全279ページをリリースしました。全て無料で閲覧できます。

今版は、特に相当に気合い入れてテクノロジー編を大幅改訂です。「IoTとビッグデータ」と「スマートマシン」をいろいろと手直しをしました。

テクノロジー編(228ページ)で、特にご覧いだきたいポイントは、次のページです。

  • WebスケールITについて解説。
  • クラウドサービス事業者のポジショニング。
  • クラウドサービス事業者の強みと機会。
  • コンバージド・システムとハイパー・コンバージド・システムの比較。
  • IoTとビッグデータ」とCyber-Physical systemsとの関係。

ビジネス戦略編(51ページ)では、SI事業者の課題とそれに対処する戦略を新たな考察を踏まえ刷新いたしました。

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こんな方に読んでいただきたい!

  • IT部門ではないけれど、ITの最新トレンドを自分の業務や事業戦略・施策に活かしたい。
  • IT企業に勤めているが、テクノロジーやビジネスの最新動向が体系的に把握できていない。
  • IT企業に就職したが、現場の第一線でどんな言葉が使われているのか知っておきたい。
  • 自分の担当する専門分野は分かっているが、世間の動向と自分の専門との関係が見えていない。
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目次

  • 第0章 最新ITトレンドの全体像を把握する
  • 第1章 クラウドコンピューティング
  • 第2章 モバイルとウェアラブル
  • 第3章 ITインフラ
  • 第4章 IoTとビッグデータ
  • 第5章 スマートマシン

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