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「戦略」という競争優位

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「戦略そのものです。」

Soft Layer CEOであるランス・クロスビー氏が、記者会見の席上で、AWSに対する競争優位は何かを聞かれて、このように答えていた。

Soft_layer


ベアメタル、10ギガのバックボーン回線、専用のファイヤーウォールなどの答えが返ってくるかと思ったが、少し裏切られた思いだった。しかし、この答えこそ、「正解」であることは、言うまでもない。ベアメタルも10ギガ回線も、ファイヤーウォールも「戦略」を実現する手段に過ぎない。競争優位の「戦略」があってこその手段だ。

では、Soft Layerの戦略とは何か。「エンタープライズに最適化されたクラウド・サービスを提供すること」だ。私は、この話を聞いて、なぜ彼がIBMの資本を受け入れたのか、合点がいった。

ここは、あくまで私の推察ではあるが、IBMに買収される前、Soft Layerは、AWSと正面対決する存在だった。記者会見でも、クロスビー氏は、その事実を認めている。しかし、AWSと同じマーケットに立って、彼らの優位を覆すことは容易なことではない。Rackspaceが今置かれている状況を考えれば、その事実は容易に理解できる。

そこで、IBMの傘下に入ることで、「エンタープライズ」というアイデンティティを手に入れると共に、そのエンタープライズに強い営業チャネルと、エンタープライズを相手に長年培ってきたテクノロジーをIBMから手に入れ、AWSとの差別化を名実ともに手に入れることで、事業を拡大しようというシナリオを描いたのだろう。

「ジニー(・ロメッティ:IBMのCEO)からはIBMの持っているものを何でも使って良いと言われている」

「従来、IBMが提供していたクラウド・サービスのインフラは、全てSoft Layerに移行してゆく予定だ」

そんなクロスビー氏の言葉は、これを裏付けているように思う。

事業を拡大するための資本力を強化したことも事実ではあるが、その資本も勝てる「戦略」がなければ活かすことはできない。まさに、この「戦略」こそが、IBMがSoft Layerを買収した理由であり、AWSとの明確な対抗軸なのだろう。

翻って、我が国のクラウド・サービス・プロバイダーにこのような「戦略」があるのだろうか。日本というローカルな市場であることのアドバンテージや個々のサービスにおける優位性を示す企業はあるが、事業そのものの本質に迫る競争優位を示しているようには見えない。これでは、一定の期間、生き残りは図れるかもしれないが、市場における中長期的なイニシアティブを獲ることは難しいだろう。

Soft Layerが、POWER(System p)をサービスに取り込んでいるのは、この戦略が背景にあるからだ。また、記者会見に先立って行われたブロガーとのミーティングでは、メインフレーム(System z)をサービスに組み入れることを検討しているとの話だった。他にもIBMがメインフレームやPOWERシステム、あるいは、その他のソフトウエアで蓄積したエンタープライズ向けのテクノロジーやノウハウを組み入れてゆく意向を明確にしている。

これは、強力なAWSに対する差別化になるだろう。大手金融機関や大企業にとっては、魅力的だ。改めて、「戦略」の重要性がよく分る。

しかし、その一方で、SMB(Small & Medium Business / 中堅・中小の企業)にとっては、どうなるのだろう。

まず、SMBであってもエンタープライズ・クオリティは手に入れたい。それが、AWS相当の費用で手に入るのであれば、これは大きな魅力となるはずだ。ただ、課題があるとすれば、パートナーとの関係をどのようにして構築してゆくかだろう。

我が国のSMBはITベンダーに大きく依存している。特に地方はその傾向が強い。IBMによるxサーバーのLenovoへの売却以降、中小のITベンダーはIBMでなければならない理由を失っている。また、Soft Layerを売っても大きな儲けにはならない。そういうパートナーに、Soft Layerを「売らせる」ことは容易ではないだろう。

しかし、ITベンダーも従来の収益モデルではいずれ成り立たなくなる。顧客もクラウドに舵を切り始めている。クラウドを前提とした収益モデルを早く持たなくては、いずれ手遅れになる。

このようなITベンダーの課題に対して、どのような施策を打ち出すことができるのかが、カギになるのかもしれない。

ここにも「戦略」が必要になる。戦略を明確にし、何をすべきか定め、それを実現するシナリオを描かなくてはならない。

Soft Layerは、「戦略」が「競争優位」であると言う。その戦略を実現するための資源もブランドも手に入れた。このようなビジネスの作り方に学ぶべきことは多い。


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