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「量と金額のビジネス」から「質と体験のビジネス」へのシフトを考えてみた

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私が講演している会場の最前列で、盛んにスマホをいじっている若者がいた。とても不愉快だった。講演が終わり、さりげなく彼に感想を求めると、「大変参考になりました。メモが一杯になりすぎて、整理するのが大変ですよ。」と笑顔で応えてくれた。

私は、恥ずかしかった。「スマホをいじる=暇つぶしで遊んでいる」としか思っていなかったからだ。かれは最前列に座り真剣に私の話を聞き、メモをとっていたのだ。これは私にはないスキルと感性だなと感心したことがある。

最近、災害とITに関わる取り組みに参加している。その打ち合わせでは、Google Docで議事録を書いているのだが、参加者自身が議論を進めながら共同で議事録を書き上げてゆく。会議はGoogle+ Hangoutで他の会場からも参加しているのだが、会議が終わったと同時に議事録が完成し、その場で全員が共有できる。また、議論の最中に、ホームページを作ってみましたと、その場でプロタイプができあがっていることや、ロゴのデザインを直してみたので確認してくださいと声がかかることもある。

最初はこの感覚に驚いたが、最近では、そうではない「普通の会議」に出ると、あまりのスピード感のなさにいらいらすることがある。

こういう体験に驚きながらも、時代の感性に取り残されないように必死だ。そういうことに驚きもせず、興味も示せなくなったとしたら、自分もおわりだなぁと思っている(笑)。

こういう体験が、UX(User Experience)の基本なのだろう。

Ux02

「量と金額のビジネス」が難しくなりつつある中、「質と体験のビジネス」へのシフトは必然の流れだ。この流れの中で、UX(User Experience)の重要性がこれまでになく高まっている。これはITだけの話しではない。生活全般にわたり「質と体験」の価値が求められるようになり、UXへの関心も高まっている。

UXは、インターフェイス・デザインのことではない。その製品やサービスを使う体験全体を通じて、快適で使いやすく、使っていることがストレスにならず、マニュアルを見なくても使いこなせてしまうような気持ちの良い体験を実現することだ。インターフェイス・デザインは、その実現のための手段の一部であり、機能や性能とともにUXは実現される。

UXの魅力を高めて行くためには、製品やサービスがどのような使われ方をされるのかを徹底的に追求することから始めなくてはならない。具体的に自分がユーザーとなったつもりで発想することが必要だ。競合の存在や現在何が売れているかなどのデータとしての評価よりも、自分が使ったときの体験をイメージし、それを商品やサービスとして実現することが大切になるだろう。そういう思考を持つことがUXの基本だ。

クラウドやモバイル、ソーシャルなど、ITは、これまでにない様々な手段を提供し始めている。しかし、そういう手段にどう対応するかではなく、そういう手段の向こうにあるUXをどう実現するかが、「質と体験のビジネス」を生みだす基本だ。これからのITビジネスにとつて、この視点はこれまでにも増して、成否を左右することになるだろう。

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