「手遅れ」にならないためにどうすればいいのか
「我々は危機が近づきつつあるのがわかっていたのに、無視して耳をふさぐことにしました。そのうち無視できないことがはっきりしたのです。」それからようやく資源が集められてチームが結成されると、全員に切迫感が生まれました。そのころには既に手遅れになっている場合が多い(『競争優位の終焉』より)。
昨日のブログで書いた「手遅れ」とはこういう状態のことを言うのだろう。そうならないためにどうすればいいのだろうか。
ITはこれまで、業務の生産性向上や時間短縮といった労働負荷の低減に大きく貢献してきた。いうなれば、人間ができることをITに置き換えることで価値を生みだしてきたと言えるだろう。これは、今後も機械学習や人工知能、認知コンピューティングなどのテクノロジーの進化と共に、肉体的労働から高度な知的労働へとその適用領域を広げてゆくと考えられる。
もうひとつの領域は、ITにしかできない領域の拡大である。その代表的なキーワードは「ビッグ・データ」だ。デジタル・データの爆発的増大は、モバイルやIoTの普及と共に今後とも継続してゆくだろう。これを社会や生活の価値に結びつけようという取り組みが「ビッグ・データ」だ。そのためには、膨大なコンピューティング・パワーが必要だ。決して、人間の労働を置き換えるものではない。また、「インターネット」が、デジタル・データを集め、あらたなアプリケーションとのつながりを拡げてゆく。これもまた、人間の労働の代替ではない。このインターネットを介して、地域や国境を越えてデジタル・データが流通し、新たなビジネス価値を生みだしてゆく。
このように考えてゆくと、ITには、「人的労働の代替としてのIT」と「人的労働とは異なる価値を生みだすIT」という2つの視点があるようだ。
前者については、今後、生産年齢人口が減少する我が国にとって、大きなポテンシャルがあるのではないかと考えている。米国のように現在でも人口が増加している国では、労働機会を奪うということでネガティブに捉えられることも多いが、少子高齢化が進む我が国にとっては、経済や社会を維持するための手段として、積極的にすすめてゆくべき領域ではないだろうか。市場にデマンドがあれば、進歩を加速する。日本は世界の中でも最先端を目指せるチャンスがあると思っている。
後者が、大きなポテンシャルを抱えていることは言うまでもないだろう。これまでには無かった新たなビジネスの可能性が今後とも生まれてくることになるだろう。
冒頭申し上げた「手遅れ」にならないためには、こういうトレンドに目を向けることが大切だ。「工数を稼ぐ労働力としてのITビジネス」ではなく、「新たな価値を生みだす知識力としてのITビジネス」という視点を持つことで、新たなビジネスを育てることができるのではないか。
現実の問題として、今は工数ビジネスが収益を支えている。これを簡単に辞めるわけにはいかないだろう。しかし、冒頭にもあるように「全員に切迫感が生まれたころには既に手遅れになっている」場合が多い。
手を打つことに躊躇する理由はないだろう。いや、それほど時間は残されていないのかもしれない。
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