ロボット、IoT、人工知能、機械学習・・・SIerのみなさん、どうしますか?
「採用を増やそうにも、ほとんど増やすことができず苦労しています。」
ある中堅SIerの採用担当者からそんな話を聞いた。ここだけの話ではなさそうだ。他でも同様の話を聞くことがある。
エンジニアの人数が増えれば売上も増える。需要が旺盛なこの時期だからこそ、ここで稼いでおきたいと思うのは人情だ。しかし、思惑通りには行かない。
ただ、これは期間限定の需要である。これについては、いまさら申し上げることはないだろう。急激な需要の落ち込みにどう対処するかを考えておかなければならない。
もうひとつ中長期的に深刻な問題がある。それは、生産年齢人口(15歳から64歳)の減少だ。生産年齢人口は、直近の5年間(2015〜2020)で、7682万人から7341万人、341万人の生産年齢人口が減少する。この数字は、同時期の総人口の減少が、250万人の減少であることを考えると、それを上回る勢いで、生産年齢人口の減少がすすむことになる(参照:内閣府・平成25年版 高齢社会白書)。
さらにIT業界特有の雇用事情がある。「きつい、厳しい、帰れない」の3K職場と言われて久しいが、これに加えて、「規則が厳しい」「休暇がとれない」「化粧がのらない」「結婚できない」の4K加わり7Kと言われているのだそうだ。
その真偽はともかくとして、このように評価される仕事が今後も続くとすれば、IT業界の就労人口の減少は、生産年齢人口の減少を上回るかもしれない。
さらに、システムの運用管理に関わる人的需要は、クラウドに吸収されていくだろう。また、受託開発がなくなりはしないだろうが、生産性の高い開発ツールやフレームワークの普及、人工知能や機械学習を組み込んだより高度な自動化が実現されれば、労働集約型の業務ニーズは減ってゆく可能性がある。
ITの需要がなくなるわけではない。むしろこれまでにも増して需要は拡大してゆくだろう。しかし、もはや人月積算型の収益構造を維持することは、困難になると考えておくべきだ。しかし、これは見方を変えれば、大きなビジネス・ポテンシャルがあると見ることもできる。
生産年齢人口の減少は、なにもIT業界だけの問題ではない。様々な業種で深刻な事態となるであろう。つまり、自動化や無人化、高効率化など、人的労働を機械に置き換える需要は、これまでに無く高まるはずだ。
米国に於いては、人的労働を機械に置き換えることには、大きな抵抗がある。それは、今後とも続くであろう人口の増加があるからだ。2013年現在、米国の人口は3億1700万人、それが、2020年には、3億4600万人へと増加する。米国が製造業の国内回帰をすすめようとしている背景には、こういう増加する人口に対し労働機会を増やさなければならない事情があるからだ。しかし、日本はむしろ、人口が減るわけであり、それでも経済を維持するためには、機械化はこれまで以上に求められるのではないかと考えられる。ここにITビジネスの可能性を見出すことができるのではないかと考えている。
ロボット、IoT、人工知能、機械学習といった分野は、まだまだ先端であるが故に市場性が十分にあるわけではない。また、様々な技術的課題もあり、ビジネスとしての可能性も未知の領域だ。ただ、大局的に見れば、人口が減ること、その代替としての機械への置き換えは、間違えなく需要の拡大が期待できる分野だろう。そこに貢献できるビジネスは、大いに期待できる。
これは、ITという接点を除けば、これまでの受託開発や運用管理とは、全く異質の事業領域かもしれない。しかし、ITを通してお客様との接点を持つ強みを無理矢理にでも押し広げない手はないだろう。
そのタネを仕込むのは今だと思う。仕事があり、キャッシュが回っている今をおいて他にはない。2015年になれば、需要の急激な落ち込みがあり、もともと利益率の低い人月積算型ビジネスは、一時的な人あまりとキャッシュフローの厳しさ故、短期的な成果を求められるようになるだろう。そうなっては、新しいことへの取り組みなど覚束ない。
「オリンピックがあるから2015年問題は起こらない」という話もある。しかし、生産年齢人口の減少は確実だ。従って、新たなビジネスの可能性を模索しなければならないことには変わりがない。
さあ、どうしますか?
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〜これからSIerはどう生き残ればいいか?
- 国内の需要は先行き不透明。
- 案件の規模は縮小の一途。
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