コカ・コーラ:スーパーボウルの試合中にビデオをシェアして、シロクマ保護基金に1ドル寄付できるキャンペーンを展開
今週末の日曜日(2月5日)、いよいよ全米が待ち焦がれているNFLスーパーボウルが開催される。今年は、ニューヨークを本拠地とするジャイアンツが4季ぶりに進出するとあって、ニューヨーカーの間でも関心がひときわ高いらしい。
このスパーボウルだが、米国内だけでも1億人がテレビ中継を視聴すると言われている。そして、期間中に放映されるテレビコマーシャルの価格が、世界で最も高額であるとして知られている。今年の30秒枠の放映料の平均価格は350万ドル(約2億7千万円)、1秒換算にすると約900万円だ。
ただ、価格がこれだけ高騰しても、注目度も桁違いであることから、世界的に名前が知られている企業がこぞって出稿することでも知られている。今年も昨年に引き続き、ゼネラル・モーターズ、BMW、フォルクスワーゲン、アウディ、トヨタ自動車、ホンダ、現代自動車などモーター業界の出稿が多く、ハーフタイムはちょっとしたモーターショーが繰り広げられることになりそうだ。
そんな中にあって、飲料業界の巨人コカ・コーラは、昨年の11月から展開しているシロクマ保護キャンペーンを、今回のスーパーボウルとタイアップさせ展開すると発表した。しかも、今回のスーパーボウル用の広告は、テレビ、ソーシャルメディア、モバイルの3つのメディアをミックしたカタチで展開するらしい。
特に興味深いのが、コカ・コーラがキャンペー用に用意したビデオを、ソーシャルメディアを通して試合中に友達や家族にシェアすると、シロクマ保護基金に自動的に1ドル寄付ができる仕組みになっている点だ。
【1】 モバイル端末で簡単に1ドル寄付できるコカ・コーラのシロクマ保護キャンペーン
今回のスーパーボウルとタイアップしたシロクマ保護キャンペーンを説明する前に、コカ・コーラが昨年の11月に始めた本来のシロクマ保護キャンペーンについて説明しておきたい。
コカ・コーラとシロクマの付き合いは、実は1922年に遡る。シロクマの保護活動をするために、クリスマスシーズンにシロクマを起用した白い缶のコカ・コーラを発売したのが始まりである。1993年には、世界自然保護基金(WWF)と一緒に、シロクマとシロクマの生息地北極を保護するための活動を支援するためにパートナーシップを結んでいる。
そして、昨年の11月にコカ・コーラとWWFが共同で立ち上げたのがArctic Home基金だ。コカ・コーラはWWFに200万ドル(約1.5億円)を寄付し、さらに2012年3月15日までに消費者が寄付した額(最大100万ドル)を追加で寄付するとしている。キャンペーン期間は2011年11月から2012年2月までの4カ月間で、キャンペーンを記念して2頭の子熊を連れた母シロクマがデザインされた白い缶のコカ・コーラを発売している。
※ 残念なことにこの白缶、日本では発売されていない。
■ コカ・コーラのArctic Home基金キャンペーン限定の白缶
■ Arctic Home基金に関するビデオ
Arctic Home基金への寄付はモバイル端末から簡単にできる。白缶を買った消費者は、缶に記載されたテキストコードを、モバイル端末からArctic Home基金に送るだけだ。これだけで1ドルの寄付が完了する。寄付に必要なコードも、白缶かボトルのパッケージを買えばすぐに見つかるらしい。また、寄付した1ドルは、キャリアから毎月送られてくる請求書に自動的に加えられる。
寄付はもちろんPCからもできる。消費者はPC用のウェブサイトにアクセスして、クレジットカードで寄付ができる仕組みになっている。キャンペーンでは、消費者がArctic Homeプログラムについて学びながら寄付ができるiアプリも展開している。アプリをダウンロードすれば、消費者はゲーム、ポイント収集、勝者への挑戦権、タブレットのプレゼント応募、北極旅行のプレゼント応募などのコンテンツが利用できる。
コカ・コーラ側はこのArctic Home基金について次のように語っている。
「我々Arctic Homeの最初のゴールは、認知度の拡大とシロクマと生息する場所の保護を助けるためのファンドの創出である。Arctic Homeを通して立ち上がったファンドは、調査、現地の知識の集約、コミュニティベースの協力を通して、シロクマとシロクマの住んでいる北極を保護するWWFの活動を支援するために使われます。また、我々はファンとコミュニケーションができるいかなる方法でも試します。モバイル、店舗内、自宅の外、ウェブサイトなど。我々はこの360度アプローチが、効率的なマーケティングと認知度アップのための本質であると信じています」
中でも、簡単に寄付ができる利便性を消費者に提供している、モバイルがキャンペーンの中心であることは間違いないだろう。
【2】 専用のモバイルサイトからビデオをシェアして1ドル寄付できるキャンペーン
コカ・コーラは、さらなる寄付金集めのために、来るスーパーボウルとタイアップした巨大な広告キャンペーンを展開する。それは、このスーパーボウルのためだけに用意されたモバイル専用ウェブサイトを使った、大規模なシロクマ保護キャンペーンになる。
コカ・コーラのスーパーボウル用の広告は、テレビ、モバイル、ソーシャルメディアの3つのメディアを横断したカタチで展開される。公開されている情報によれば、試合の経過をリアルタイムに反映させ、3つのメディアに横断的に配信するらしい。
スーパーボウルの主役ももちろんシロクマだ。コカ・コーラは、今回のマルチチャンネルキャンペーンの顔に、例のシロクマを起用している。スーパーボウルの試合中、試合のために最適化されたモバイル専用サイトのURL、cokepolarbear.comを自分のモバイル端末のブラウザに入力してサイトにアクセスできる。そして、そのモバイルサイト上で、消費者は試合の経過によって更新されるビデオが視聴できる。
■ スーパーボウル専用モバイルサイトのキャプチャー
今回のキャンペーンのメインコンテンツは、どうやらビデオのようだ。その証拠に、寄付するのにビデオが使われている。寄付の仕組みも非常に簡単だ。
消費者が専用モバイルサイトで視聴したビデオを、フェイスブックやツイッターなどのソーシャルメディアを通して友達や家族にシェアする毎に、コカ・コーラがシロクマ保護キャンぺーンに1ドル寄付するという仕組みだ。お気に入りのビデオをシェアするだけで、シロクマを保護する活動に参加できるのである。
今回のスーパーボウル用のキャンペーンでは、ビデオと並んでソーシャルメディアもかなり重要なポイントになっている。フェイスブックファンページはファン同士がコミュニケーションする場として、さらにビデオをシェアする場として活用されるだろう。また、ツイッターは#GameDayPolarBearsのハッシュタグを用意して、試合中簡単にツイートできるようにするらしい。
今回のコカ・コーラのスーパーボウル向け広告キャンペーンは、昨年の11月に始まった大規模なArctic Home基金のフィナーレを飾ることになるのかもしれない。また、コカ・コーラは、シロクマ以外の野生動物を保護する活動も支援している。2月5日の結果を楽しみに待ちたい。
【3】 今回のまとめ
試合を観戦しながら、ダイナミックに更新されるビデオをモバイル端末で視聴する。想像しただけでワクワクしてくる。モバイルは、スーパーボウルのような野外で行われるイベントと相性が良い。
日本でもサッカーの試合やアーティストのコンサートなどでの利用が考えられる。コンテンツは、すぐに理解できるビデオに尽きるだろう。時間も15~30秒くらいがベストだ。モバイルを活用したキャンペーンは手軽に始められることから、今後も面白い事例が増えてくる分野だと考えられる。
成功のポイントは、今回のコカ・コーラが実践しているように、ウェブサイト、アプリ、ソーシャルメディアなどとミックして展開することだ。
⇒ ニュースソース:「Coca-Cola drives campaign donations via branded Super Bowl mobile site」