オルタナティブ・ブログ > アー・ユー・エクスペリエンスト? >

人生と仕事に必要な様々なことについて考えるブログ

米国のモバイル広告費市場規模予測:2012年のモバイル広告費は26億ドル。将来的にはモバイルビデオ広告が急成長

»


eMarketer から、米国のモバイル広告市場が急成長しているという調査報告が発表された。eMarketerは、2011年9月にも同じ調査報告を発表しており、今回は前回の修正予測になる。会社の決算報告に例えるなら、予想以上に数字が伸びそうなので、慌てて上方修正したというところだろうか。

今回eMarketerから発表された修正予測は、前回の予測をかなり大きく上回っており、モバイル広告への投資が、米国の企業にとって重要なポジションにあることを証明する結果となっている。

⇒ eMarketer:「US Mobile Ad Spending Soars Past Expectations


【1】 eMarketerの2011年9月と2012年1月の市場規模予測の違い

まず、eMarketerが2011年9月に発表した予測と、今回発表した最近の予測がどれくらい違うのかを見てみたい。下のグラフは、eMarketerが公表しているデータを私が1つのグラフにまとめたものである。

グリーンが2011年9月に発表された予測データ、ブルーが2012年1月に発表された予測データだ。去年の米国のモバイル広告の支出を、当初は2010年の7億4千万ドルから65%アップの12億3千万ドルと予測していたが、これを今回、89%アップの14億5千万ドルに修正している。

2011年だけを見れば、たかが2億2千万ドルの差にすぎないこともあり、大きなインパクトはない。問題は2012年以降の差だ。今年の予測データを、2011年9月時点では、前年度から47%アップの18億ドルと見ていた。ところが、この2012年の支出予測を、今回は80%アップの26億1千万ドルに大幅修正している。ここですでに8億ドルもの差異が出ている。

そして、2013年以降はこの差が年々開く一方になる。3年後に当たる2015年の数字を見てほしい。当初44億ドルと予測されていたのに、今回は約2倍の87億ドルに大幅修正されているのである。それだけ、モバイル広告が当初の予測を大幅に上回る勢いで伸びているということになるのだが、それにしても凄い数字だ。


■ eMarketerによる米国モバイル広告費の市場規模予測差異

1


■ eMarketerによる米国モバイル広告費の成長率差異

2


まだ半年も経たないうちに大幅に予測を修正せざるおえなかった理由はなんだったのだろうか。eMarketerは、米国のモバイル広告市場において以下の要因があったことを指摘している。

 ① グーグルのモバイル検索エンジン広告の急速な拡大

 ② タブレットとスマートフォン向けディスプレイ広告の急速な成長

 ③ グーグルのAdMob、アップルのiAdをはじめとしたモバイル広告ネットワークの成長

つまり。スマートフォンとタブレットの急速なシェア拡大が、モバイル広告費の市場を予想を超えたスピードで押し上げたと考えていいだろう。また、eMarketerはもう1つの要因として、リサーチ会社や大手広告代理店から最新の調査データを入手できたことをあげている。複数のデータをまとめて、より精緻な予測を行なった結果が、今回の修正に反映されていると見ていいだろう。


【2】 米国のモバイル広告費に関する各種調査比較

モバイル広告費の市場規模予測については、いろんなリサーチ会社や広告代理店が調査レポートを公開している。それぞれのレポートが、どれくらい差異があるのか、eMarketerのデータを参考にして表にまとめてみた。

一番上がeMarketerが2011年9月に発表したデータ、その下が今回発表したデータである。それ以下は各リサーチ会社や広告代理店などが発表したデータをそのまま引用している。


■ 米国のモバイル広告市場規模予測の各種データ比較表

3


この表を見てもわかるように、市場規模予測のデータほど当てにならないものはない。これだけバラバラだと、どの調査レポートを信用していいのかわからなくなってくる。今回のeMarketerの市場規模予測データは、フォレスター・リサーチのデータに一番近い。両方のバランスを見るのが、正しいアプローチなのかもしれない。

eMarketerも、今回これらの調査レポートを参考にしたことを認めている。そう言う意味では、かなりビジネスの実態に合った調査報告だと考えていいだろう。


【3】 米国モバイル広告費のフォーマット別シェア

次に、モバイル広告費がどんなフォーマットに分類されるのか、フォーマット別の広告費の支出額とシェアの成長率を見てみたい。eMarketerは、モバイル広告のフォーマットを、検索エンジン広告、ディスプレイ広告、メッセージング広告、ビデオ広告の4種類に分類している。

下のグラフは、eMarketerが発表したデータを元に、2011年から2016年までのモバイル広告のフォーマット別の広告費の支出額と、全体に占めるそれぞれぞれのシェア率をまとめたものだ。


■ 米国のモバイル広告費のフォーマット別支出額

4


■ 米国のモバイル広告費のフォーマット別シェア

5


① 検索エンジン広告

今回のeMarketerがモバイル広告費の市場規模予測を修正するきっかけになった背景には、モバイル検索エンジン広告の急速な成長があると言われている。

eMarketerは、2011年のモバイル検索エンジン広告費を、前年の2億5千万ドルから3倍近くアップした6億5千万ドル、そして今年2012年は前年の約2倍である12億8千万ドルと予測している。その後の成長率は鈍化し、2016年のモバイル検索エンジン広告費は53億ドルとなる。

モバイル検索エンジン広告は、モバイル広告費のフォーマット別で、6年間に渡り首位の座を守り続ける。しかし、全体に対するシェアは2011年が45.0%で、2014年の50.3%をピークにその後は低下し続けることになる。結果的には、2011年から2016年までの6年間でシェア率は3.5ポイントしか伸びていない。

長いスパンで見ると、わずかではあるが、シェアは低下傾向にある広告フォーマットだと考えられる。

② ディスプレイ広告

eMarketerは、2011年のモバイルディスプレイ広告費を4億5千万ドル、そして今年2012年は前年の2倍近い8億6千万ドルと予測している。その後の成長率はモバイル検索エンジン広告ほどではないものの、やはり鈍化し続け、2016年のモバイルディスプレイ広告費は40億ドルとなる。

モバイルディスプレイ広告は、モバイル広告費のフォーマット別では6年間に渡り検索エンジン広告に次ぐ2位の座を守り続ける。シェアも2011年の30.7%から毎年増え続け、2016年には2011年から7.7ポイントアップの37.0%となる。

広告費の支出額だけではわからないが、モバイル広告費全体に占めるシェアを見ると、将来性は検索エンジン広告よりもディスプレイ広告の方が高いことがわかる。2011年の両者のシェアの差は15.7%あったが、2016年にはこれが11.5%にまで縮まっている。

③ メッセージング広告

eMarketerは、2011年のモバイルメッセージング広告費を2億8千万ドル、そして今年2012年は3億2千万ドルと予測している。その後の成長率も前年を下回ることはないものの、急成長することもなく、2016年のメッセージング広告費は約5億ドル。

メッセージング広告は、モバイル広告費のフォーマット別で2013年までは3位に座るが、2014年にはモバイルビデオ広告に追い抜かれてしまう。シェアも2011年の19.6%をピークに、その後は毎年下がり続け、2016年には2011年から15.1ポイントダウンの4.5%%になってしまう。

モバイルメッセージング広告は、広告費の支出は下がることがないものの、モバイル広告費全体に占めるシェアは急速に存在感を失い、将来性があまり期待できないモバイル広告フォーマットだといえる。

④ ビデオ広告

Marketerは、2011年のモバイルビデオ広告費を6千8百万ドル、そして今年2012年は前年の2倍以上1億5千万ドルと予測している。その後の成長率は全フォーマット中ダントツの勢いを見せ、2014年にはメッセージング広告を追い抜き、最終的な2016年のモバイルビデオ広告費は11億ドルになる。

モバイルビデオ広告は、全体に占めるシェアでも2013年にメッセージング広告を抜き去り、2011年に4.7%しかなかったシェアは2016年に10.0%にまで上昇する。ポイントだけで見れば6年間で4.3ポイントのアップに過ぎないが、シェアを2倍以上も伸ばしているのは、全フォーマット中モバイルビデオ広告だけだ。

モバイルビデオ広告は、今後最も成長が期待できるフォーマットとして、広告代理店や広告主である企業から注目されている。2011年時点では6千8百万ドルと1つだけ桁が違っているが、LTEやWiFiといったインフラが整備されれば、今回の予測を大幅に超える可能性が残されている唯一のフォーマットだと考えられる。


【3】 今回のまとめ

今年の1月19日、同じeMarketerから米国のオンライン広告費に関する市場規模予測も発表されている。

⇒ eMarketer:「US Online Ad Spend to Close in on $40 Billion

2012年のオンライン全体の広告費は395億ドルで、初めて旧メディア(新聞、雑誌など)の338億ドルを上回るという。2012年は、オンライン広告にとって歴史的な1年になりそうだ。

さて、2012年のモバイル広告費が26億ドルということは、上方修正したとはいえ、オンライン広告費全体から見れば、そのシェアはまだ6.6%しかない。しかし、ここで注目したいのは、オンラインビデオ広告費の成長率だ。

オンラインビデオ広告費の2012年の成長率はすでに23.3%しかない。一方、モバイル広告費の2012年の成長率は80%もある。つまり、オンライン広告全体で見ればさほどの成長率はもう期待できなくなっており、今後の成長はモバイルの肩にかかっているのだ。

下のグラフを見てほしい。2012年に6.6%に過ぎなかったモバイル広告費のオンライン広告費全体に占めるシェアは年々増え続け、2016年には17.5%にまで上昇する。オンライン広告の未来がモバイルにあると言っても決して過言ではない。


■ オンライン広告費とモバイル広告費の支出額

Photo


■ オンライン広告費とモバイル広告費の成長率とモバイル広告費のシェア

Photo_2

Comment(0)

コメント

コメントを投稿する