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最近よく見かける、紙×ビデオ×スマートフォンを使った面白いインタラクティブ広告

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元々、通信業界を始めとしたテクノロジーの分野で双方向という意味で使われていたインタラクティブという言葉が、随分前からビジネスの分野でも使われるようになった。広告の分野でも同じ現象が起きており、最近では、インタラクティブビデオとインタラクティブ広告に注目が集まっている。特に、インタラクティブ広告の分野では、紙、ビデオ、スマートフォンを融合した、ユニークで面白い作品が数多く登場してきている。そこで今回は、インタラクティブ広告の最新事例を紹介したい。


【1】 インタラクティブビデオとは

最近、消費者が自分で見たいコンテンツを選択することができる、インタラクティブビデオを使った広告が増えている。インタラクティブといっても仕掛けはとてもシンプルで、ビデオの中にクリック可能なマーカーを挿入し、クリックしたマーカーによって、視聴できるビデオの内容が変化するというものだ。

例えば、米国のヘルピザが2010年7月に公開したソーシャルビデオ「DELIVER ME TO HELL - REAL ZOMBIES ATTACK 」を視聴したことがあるだろうか。このビデオは、すでに500万回以上も視聴されている、あまりにも有名なゾンビ・インタラクティブビデオだ。このビデオ、ホラー映画のような簡単なストーリーが展開されて、見る者を飽きさせない非常に完成度の高い作品になっている。

街でゾンビに囲まれた女性が、電話でヘルピザに助けを求めるというシーンから始まり、助けを求められたヘルピザの従業員が、意を決して車で女性を助けに向かう。緊迫した中で、なぜかご丁寧にピザを作って、一緒に持って行くシーンもあって少し笑える。助けを求めている女性のもとに向かう途中、ゾンビに襲われた中年の男性が、ヘルピザの従業員に助けを求めてくる。そして、ここで問題の、その男性を助けるか置き去りにするかという選択ポイントが表示される。そして、どちらを選択するかで、ストーリーの結末が大きく違ってくる。非常によく出来たインタラクティブビデオなので、これを機会に是非視聴してみてほしい。

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■ 有名なヘルピザのゾンビ・インタラクティブビデオ


【2】 インタラクティブ広告の事例

インタラクティブビデオは、いろんな企業・ブランドが公開しているので、今ではもう珍しくない。YouTubeでも簡単に見つかるはずだ。今回取り上げるのは、伝統的な紙媒体の広告に、ビデオとモバイル(スマートフォン)の技術を融合させることでインタラクティブ性を実現した、新しいタイプの広告だ。

インタラクティブ広告の仕掛けも、インタラクティブビドオ同様非常にシンプルな作りになっている。共通しているのは、紙媒体の広告のある部分にスマートフォンのかざすと、そのかざした部分に関連したビデオが再生されるという仕組みだ。実際に見てもらった方が早いので、早速いくつか事例を紹介したい。

① オ・ボチカリオ:メイクアップ・チュートリアル広告

ブラジルで最も人気があるコスメブランドとして知られているオ・ボチカリオ。ヘアケアからボディケア、フェイスケア、メイク、オードトワレまで、ビューティー関連の商品をトータルで展開している、日本にもファンが多いコスメブランドである。このオ・ボチカリオが最近展開した、インタラクティブ広告を使ったキャンペーンが面白い。

ベースとなっている広告は、オ・ボチカリオが発行するカタログだ。そのカタログの中のモデルの顔写真にスマートフォンをかざすと、かざした部分に対応したメイクアップ・チュートリアル・ビデオが再生されるという仕組みになってる。下のビドオは、目元のメイクアップ・チュートリアル・ビデオが再生される仕様になっている。

O Boticário - Make B iPhone (ENG) from AlmapBBDO Internet on Vimeo.


② フォルクスワーゲン:テスト・ドライブ広告

フォルクスワーゲンが2011年3月に展開した、テスト・ドライブ広告も話題になったインタラクティブ広告の一つだ。フォルクスワーゲンが提供する道路の写真がベースの広告になっており、その道路の部分にアプリをインストールしたスマートフォンをかざすと、フォルクスワーゲンの車のビデオが再生され、テスト・ドライブが体験できるという内容になっている。


③ 国境なき記者団:独裁者のスピーチ広告

国境なき記者団が2011年8月に展開した、フリーペーパーを使ったインタラクティブ広告も、そのユニークな企画性から話題になった。フリーペーパーの中に移っている独裁者の写真の口の部分にスマートフォンをかざすと、口だけが語りかけるビデオが再生されるという仕組みだ。

先に紹介した二つのインタラクティブ広告と違って、ビデオを使って動きを見せるというよりは、ビデオを使ってスピーチを聞かせるという内容になっている点がユニークだ。また、口だけがビデオで再生されるのも、妙にリアリティがあって引き込まれる。


④ テリア・ソネラ:4Gネットワークのスピードテスト

テリア・ソネラは、スウェーデンとフィンランドに拠点を置く、世界初の商用LTEサービスを提供するく携帯電話通信事業者だ。そのテリア・ソネラが、自社の4Gネットワークのスピードテストをゲーム感覚で体験できるインタラクティブ広告を、2011年10月に展開している。

ベースになっている広告は、テリア・ソネラの製品カタログで、アプリをインストールしたスマートフォンを、スマートフォンのイラストにかざすと、対戦方式のスピードテストが始まるという仕組みになっている。ビデオを視聴するのではなく、ゲームで遊ぶという点が、先に紹介したインタラクティブ広告と違ってユニークだ。


【3】 今回のまとめ

映像技術の発達や電子ブックの登場によって、伝統的な紙の広告の時代は終わったかのように言われているが、今回紹介したインタラクティブ広告を見て、それが間違いであることがわかった。新しい技術と融合することで、伝統的な紙の広告が、全く新しい表情を持った全く別の次元の広告に生まれ変わるということを、上の事例が証明している。

米国では、QRコードと連携した広告が最近注目を集めているが、今回紹介した紙媒体、ビデオ、スマートフォンを連携させたインタラクティブ広告も、そのさらに先を行くものとして注目を集めている。インタラクティブ広告の何と言っても凄いところは、死にかけたと思われていた紙媒体の広告を、主役に返り咲かせた点だ。ありきたりのカタログやフリーペーパーが、消費者に新しい驚きと感動を与えることになろうとは、一体誰が予想しただろうか。

インタラクティブビデオもインタラクティブ広告も、ブランド側の押しつけではなく、消費者が自分の意志で視聴する/しない、体験する/しないを選択できる点に注目が集まっている。広告を受け取る側にいる消費者としても、楽しいユーザエクスペリエンスは大歓迎だろう。今後、どんな驚きと感動を与えてくれるインタラクティブ広告が登場してくるのか、楽しみに待ちたい。

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