フェイスブックファンページ上に生息するスーパーファン。そしてエンゲージメントとファンの関係について
今回は、エンゲージメント(engagement)とファンの関係について考えてみたい。前回、ソーシャルコマースの本質的な目的は、販売することではなく、顧客と長期的な信頼関係を築くことであると結論づけた。そして、顧客と長期的な信頼関係を築くためには、ソーシャルコマースにおけるコミュニケーション戦略を考えることが必要であり、その最も重要な要素がエンゲージメントであるとした。
実は、このエンゲージメントというキーワードは、最近の米国のソーシャル関連の論文や記事を読んでいると頻繁に目にする。特に、ソーシャルコマース、F-コマース、ソーシャルビデオ関連の論文や記事に多いような気がしている。では、このengagementという用語は、ソーシャル関連の話題の中で使うとしたら、どんな日本語に訳したら一番ピッタリくるのだろうか。ふれあい、接触、係わりなど、いろんな候補を考えてみたのだが、結局「交流」が一番ピッタリくるという結論に達した。
よって、今後頻繁にエンゲージメントというキーワードを使うと思うが、その際は、交流という意味で使っているのだということを思い出してもらいたい。では、早速今回の本題に入ることにしよう。
【1】 フェイスブックファンページにおけるファンとエンゲージメントに関するデータ
上の図は、フェイスブックファンページにおける、ファンとエンゲージメントの関係について公表されたデータを図式化したものである。以下のような面白い結果となっている。
① 繰り返し交流するファンは全体の30%
フェイスブックファンページ上で、繰り返し交流するファンの比率は全体の30%に過ぎない。70%のファンは、一度「いいね!」やコメントを残したあと、2度と戻って来ない。
② 同じ話題に絡んでくるファンは全体の9.6%
フェイスブックファンページ上で、同じ話題について絡むために戻って来るファンの比率は全体の9.6%に過ぎない。90.4%のファンは、一度「いいね!」やコメントを残したあと、同じ話題に絡むためにわざわざ戻って来ない。
※ 情報ソース元 ⇒ lithosphere.lithium.com
上の2つの数字は、ソーシャルコマースにとって最も重要な要素であるエンゲージメントが、思ったほど上手くコントロールされていないということを表している。そして、エンゲージメントを活性化することがいかに難しいかということを教えてくれている。つまり、フェイスブックファンページやフェイスブックストアを開設すれば、フェイスブックの中にいるユーザが勝手にファンになってくれて、勝手にエンゲージメントが生まれるわけではないということだ。
エンゲージメントを活性化させるためには、ビデオを始めとしたコンテンツを用意したり、フェイスブックファンページを運営するスタッフがファンと自ら交流したり、ファン同士が交流することを促進する報酬の仕組みを用意したりと、取り組まなければならないことがたくさんある。どれか一つが欠けても上手くいかないため、エンゲージメントを活性化させるためには綿密に計画された戦略が必要になってくる。
ただ、戦略を考える前に、エンゲージメントがどんな種類に分かれていて、それぞれがファンとどんな関わり方をしているのかを整理しておきたいと思う。
【2】 ファンとの交流度合いを5つのレベルで表したFAN ENGAGEMENT SPECTRUM
上の図は、「FAN ENGAGEMENT SPECTRUM」といって、フェイスブックファンページにおける企業とファンとの距離とエンゲージメント内容を5つのレベルに分けたものである。元々は、米国の moontoast.comが発表したコンセプトだ。一番下にオリジナルのインフォグラフィックも用意してあるので、是非こちらも参照してほしい。
5つの階層は、企業からの距離を表わしていて、上に行くに従って企業から見た距離は遠くなり、関係も薄くなってしまう。企業から見たエンゲージメントの内容に応じて、潜在型ファンからスーパーファンまで、5つのレベルに分けられている。それでは、個別に違いを見て行きたい。
① 潜在型ファン(POTENTIAK FAN)
潜在型ファンは、企業から一番遠い場所にいる存在だ。正確にはまだファンとは呼べない、ファン予備軍のような存在だと思えばいいだろう。時々ページを訪れて「いいね!」を残してくれるファンの友達。当然、企業から見ればその存在さえもわからない。
② 参加型ファン(ENGAGED FAN)
参加型ファンは、企業から2番目に遠い場所にいる存在だ。しかし、あなたのページに来て「いいね!」を残してくれる。よって、企業からその存在はしっかり認識することができる。恐らく、1番多いパターンのファンかもしれない。
③ 支持型ファン(ADVOCATE FAN)
支持型ファンは、企業から見た距離もだいぶ近くなってきている。「いいね!」はもちろん、コメントを残して他のファンからの「いいね!」を増やす手伝いをしてくれる。企業から存在がちゃんと認識できる上、何かのきっかけ次第で商品を購入してくれる可能性も秘めている、2番目に多いパターンのファンだと言っていいだろう。
④ 購入型ファン(PURCHASING FAN)
購入型ファンは、すでに商品を購入してくれている企業の応援団である。当然、セールなどの情報がメールで届くことも許可してくれている。距離的にもかなり近いところにいて、いつでもコミュニケーションが可能な存在だ。
⑤ スーパーファン(SUPER FAN)
スーパーファンも購入型ファン同様、商品を購入してくれる上に、セールなどの情報がメールで届くことを許可してくれている。ただ、スーパーファンと購入型ファンの間には一つだけ大きな違いがある。それは、スーパーファンは商品を購入したあと、自分の知り合いに対してあなたの会社から商品を購入することを薦めてくれる点だ。つまり、あなたの代わりに宣伝してくれる存在がスーパーファンである。
このエンゲージメントのレベルに応じてファンの階層を5段階に分けるという考え方は、非常に理にかなっている。例えば、フェイスブックファンページを運営していなくても、普通にフェイスブックを使っていれば、この5段階のレベルの説明に関しては理解できるのではないだろうか。例えば、ブログでも何でも構わないので、フェイスブックのニュースフィード上にコンテンツをポストした時のことを想像してみてほしい。
あなたがポストしたコンテンツを毎回熱いコメントと一緒にシェアして、更にはツイッターなどを使って自分の友人に広めてくれる友人がスーパーファン、ツイッターなどは利用しないものの、シェアしてくれる友人が購入型ファン、シェアはしてくれないが、コメントを残してくれるのが支持型ファン、コメントは残してくれないが、「いいね!」といってくれるのが参加型ファン、あなたが知らない参加型ファンの友人が潜在がファンといったところだろうか。
私の場合、潜在型ファンを別にすれば、圧倒的に参加型ファンと支持型ファンが多い。読者の皆さんはどうだろうか。
【3】 ファンのエンゲージメントレベルをアップするためのアプローチ
最終的には、スーパーファンを一人でも多く増やすことが目的なのだが、潜在型ファンをいきなりスーパーファンに変えるなどということは、どう考えてみても現実的ではない。1段階づつレベルを上げて行くためのアプローチが必要になる。以下が、私が考えたファンのエンゲージメントレベルをアップするためのアプローチ方法だ。
① 潜在型ファンへのファーストアプローチ
潜在型ファンは、あなたのブランドや商品に対して興味を持っているかどうかわからない場合がほとんどだ。よって、まずはアプローチを試みてみることが重要になる。アプローチした相手が興味を持っていそうな場合は、次のアプローチに移るといいだろう。また、潜在型ファンの場合は、ファンがその友人と親しい時は、既存のファンに紹介を依頼してみるのも効果的である。ファンの紹介は、新しいファンを生む。
② 潜在型ファン ⇒ 参加型ファン
潜在型ファンへを参加型ファンにレベルアップするのは、そんなに難しいことではない。最初の交流を試みて、フェイスブックファンページに「いいね!」を言ってもらうことをお願いするだけである。ファンにとっても、それほど負担となるアクションではない。この段階のレベルアップは成功する確率が高い。
③ 参加型ファン ⇒ 支持型ファン
このあたりのアプローチから難しくなってくる。自分でフェイスブックを利用していればわかると思うのだが、「いいね!」とコメントにはかなり大きな差がある。「いいね!」は気軽に残せるが、コメントはそうはいかない。結構な勇気と行動力が必要になる。そして、この点に関してはファン心理も同じだ。コメントを残したくなるような付加価値が求められる。それが、面白いコンテンツを提供することと、報酬の仕組みを取り入れることだ。また、このレベルからファンとの会話が必要になってくる。ファンが残したコメントには、必ず「いいね!」とコメントを返すようにしよう。
④ 支持型ファン ⇒ 購入型ファン
実際に商品を購入してもらうためには、F-コマースならびにイーコマースの機能が必要になる。可能であれば、両方用意しておくのがベストだ。面白いコンテンツを提供することと、報酬の仕組みを取り入れることも同様に必要である。また、購入を動機づけるためのインセンティブ(割引やクーポンなど)なども用意しておくといいだろう。さらには、実際の販売に関連した新着やセールなどの情報を定期的にポストするといった、定期的な情報発信も重要になってくる。
⑤ 購入型ファン ⇒ スーパーファン
スーパーファンは、あなたのブランド、商品を心から愛しているファンだ。よほどのことがない限り、心変りはしない。ただ、なってもらうまでが大変。特に重要になってくるのがインセンティブの仕組みだ。スーパーファンは、あなたの代わりに商品を友人に推薦してくれる。成約した場合の明確なインセンティブが必要になる。スーパーファンだけが視聴できるコンテンツや、スーパーファンだけが参加できるコミュニティを用意するといったアプローチも効果がある。
スーパーファンは、自分の友人を自らファンに誘ってくれるため、一人で何倍もの効果をもたらす。だから、企業は躍起になってスーパーファンを追い求める。
【4】 エンゲージメントとファンの関係に関するその他の参考情報
● 最もエンゲージメントの多いフェイスブックファンページ
今日のAll Facebookに、最もエンゲージングの多いフェイスブックファンページTOP20が掲載されていた。是非アクセスしてみてほしい。例えば、このファンの中にスーパーファンが何人含まれているのか、そんなことを考えながらファンの数を見ていると、また違った見方ができるから面白い。
※ 情報ソース ⇒ All Facebook
● レディ・ガガがローンチしたリトル・モンスター・ドットコム
リトル・モンスターはエンゲージメントレベルで見ると、どのランクに入るのだろうか。やはり、リトル・モンスターはスーパーファンなのだろうか。それにしても、レディ・ガガのファンとのエンゲージメントアプローチは凄い。企業が見習うべきポイントがたくさんある。もしかしたら、一番スーパーファンを抱えているスーパーブランドなのかもしれない。
※ 情報ソース ⇒ リトル・モンスター・ドットコム
● FAN ENGAGEMENT SPECTRUM
※ 情報ソース ⇒ ここからダウンロードできます。
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