最近のインディーズ系アーティスト事情
仕事柄、よくインディーズ系アーティストのライブを観に出かけたり、インディーズ系アーティストと話をする機会があるのだが、最近のインディーズ系アーティストの状況は、以前とはだいぶ違ってきているように感じる。
そもそもインディーズという言葉は、インディペンデント(独立、無所属)から派生したもので、メジャーなレコード会社に属さないで音楽を制作しているプロダクションやアーティストのことをいう。そして、このインディーズという言い方の裏には、メジャーになりたくてもなれない存在という意味が込められている。
確かにそういう捉え方は間違いではない。相変わらず、メジャー・デビューを夢見ているインディーズ系アーティストはたくさんいる。ただし、最近はそれもちょっと事情が変わってきていて、どうしてもメジャー・デビューでなければならないというアーティストばかりではなくなってきている。
メジャーなレコード会社からデビューするとなると、必ずしも自分のやりたい志向の音楽でデビューできるという保証はない。メジャーなレコード会社では、何よりもまずセールスが優先されてしまう。場合によっては、自分が本当にやりたい音楽ができないという可能性だってあるわけだ。それ以外にも、メジャーならではのいろんな制約だってある。
そうしたメジャーなレコード会社に所属することの煩わしさを嫌って、メジャー・デビューが可能なのにもかかわらず、あえてインディーズで活動しているアーティストも最近では珍しくない。メジャーでなくとも、ライブをやればいつも会場が満員になり、CDセールスもメジャーなアーティストに負けていないというインディーズ系アーティストがちらほらと現れてきている。
また、インディーズ=マイナーという捉え方も最近はできなくなってきている。昔メジャーなレコード会社からCDを出し、セールス的にもかなりの成功をおさめたアーティストが、ちょっとCDが売れなくなってしまった途端、CDを出すチャンスがなくなってしまい、レコード会社からの契約を打ち切られてしまうというケースが出ている。
そして、契約を打ち切られた昔メジャーで活躍していたアーティストが、新しい活動の場を求めてインディーズに移ってきているのだ。何のしがらみも制約もないインディーズの世界は、自分の力をもう一度試してみるには絶好の場所なのかもしれない。
こうしてみると、テレビを始めとした莫大な費用が必要なプロモーションができないということ以外に、メジャーとインディーズの違いというのはなくなってきているのかもしれない。そして、この傾向は今後も続くだろう。
メジャーもインディーズも関係のない音楽があるだけ。そんな世界になるのかもしれない。