千利休と歯医者の共通点! 名品・入れ歯の「エネルギー」を見抜く目利きとは?
「なぜ利休は目利きだったのか」
妻が買ってくる本は私自身では決して選ばない内容です。だから借りて読むと新しい視点、発見があって楽しいです。
そんな妻から借りた本に載っていたのは戦国時代の茶道の大家である千利休の話でした。
利休は古いものに対する愛着、とくに古美術品への愛着心は強く、それゆえに目が利きました。
「これは本物かな?」
周りの人から質問され応えているうちに茶道に目覚めていきました。
なぜ利休は目利きだったのでしょうか。
書によると品物から発せられるエネルギーがみえる霊的な力に優れていたからとあります。
品物からどのようなエネルギーが出ているか、どのような人に作られて、どんな扱いをされてきたのかが映像のように頭に浮かんだそうです。
ですから品物が古くても、そこからいいエネルギー、きれいな光が出ていれば「これはいいものです」と言えました。
逆に高値で買ったり古かったりしても、何もエネルギーが出ていない、見えないならば「それほど価値はありません」と言えたわけです。
千利休は織田信長や豊臣秀吉など戦国武将と交流がありました。
なぜ武将たちが屏風や壺、茶碗などの名品を欲しがったのかというと、品物そのものだけではなく、それから放たれるエネルギーに惹かれたからです。
戦いというのはエネルギーを激しく消耗します。
私は合戦の経験はありませんがケンカした後にどんな気持ちになるかを思い起こすと少し想像がつきます。
だから武将たちは名品を通してエネルギーを吸収して回復させる必要がありました。
もちろん名品には本物が求められます。
本物が欲しいけど自分にはエネルギーが見えないから千利休に見てもらったということだったのだろうと述べられていました。
保険治療で、痛い入れ歯も調整できます
その話を読んで私はふと気づくことがありました。
それは歯科医師は診療する中で「入れ歯の」目利きを毎日のように行なっていることです。
どのような人に、
どう作られて、
どんな扱いをされてきたのか。
具体的にエネルギーが光として目に見えるわけではありませんが、入れ歯を見ればその良し悪しは一目で簡単にわかります。
これは私だけの特殊能力ではありません。
矯正歯科の先生なら矯正装置を見れば、インプラントの先生ならインプラントを見れば、小児歯科の先生なら子どもの口を見れば、簡単にわかるはずです。
もちろん歯科だけの話ではありません。
たとえば建築士なら建物を見れば、料理人なら料理された物を見ればそのエネルギーを感じとり良し悪しを判断できるでしょう。
あなたにも心当たりがあると思います。
あたかも金の茶室のように華美で豪華な高額の自費治療入れ歯だったとしても、歯科医が私利私欲で作ってしまった悪のエネルギーがビンビン伝わってきます。
だからそんな入れ歯には「それほど価値はありません」。
逆に入れ歯が保険治療のものでも古くても、ていねいに作られて患者さんも満足して使っていて適切なメンテナンスされていれば「これはいいものです」と言えます。
ただしこれまで使えなかったり痛かったりした入れ歯でも大丈夫です。
「なんだ、価値ないのか」
と悲観しないでいただきたいと思います。
なぜなら美術品は修理修復して価値を復活できます。
同様に入れ歯も修理したりティッシュコンディショナーという歯科専門の安定材を貼ったり調整したりすることで、患者さんが満足する価値ある入れ歯に変えることが可能な場合があるからです。
おことわりしておきますが入れ歯に宇宙からの波動パワーを注入するとか、魔法を使って奇跡を起こせるとか、そんなことを言うつもりはありません。
ただ毎日入れ歯の良し悪しを的確に判定しながら治療をすることで千利休のような目利きになることを目標としているのです。
その目利きによって入れ歯を力があふれ光ある物にして、人の生きる力を支え幸せに過ごす手助けをすること。
それが私の歯科医師としての役割と信じて毎日診療に励んでいます。
...もっとも自分の入れ歯治療が千利休の説く究極の姿「わびさび」の域に達するのはまだまだ遠い道のりであります。
痛い入れ歯の調整の費用は保険治療3割負担の方で約1,000円~2,000円
もう一つ、千利休についての話です。
千利休は茶道の道に入って、お茶の作法によってエネルギーを操ることができると理解したのだそうです。
「お茶の作法をすることで人はどれだけエネルギーを持てるのか」
「所作によって自分からどれだけエネルギーを出すことができるのか」
それを理解し人に教えました。
作法をしっかり守ることで自分自身の軸ができます。そこにはいわゆるインナーマッスルも関係しているようですが、軸ができることによって宇宙のエネルギーを引き寄せることができるとあります。
私はスピリチュアルなことを半分疑ってかかることもあるのですが、この話に関してはすんなりと受け入れることができました。
なぜなら、趣味で20年以上習っていた太極拳の先生が同じことをおっしゃっていたからです。
茶道の作法=太極拳の型、宇宙のエネルギーを太極拳の先生は「気の力」と表現されていました。
太極拳はインナーマッスルを鍛練し健康にも良いですが、もともとは武道です。
あのゆっくりした型を行なうことで気の力を取り入れます。
相手と組んだときに型を行なうことで気の力を出して相手を思い通りに動かす。
先生は私とさほど身長の変わらない小柄な体格ですが2メートルを超える大きな相手も一瞬で組み伏せておられました。
残念ながら私には全くマネができません。
そこまで本を読み進めて、ふと気づいたことがありました。
私は入れ歯修理を専門としています。
一時期その入れ歯修理の工程、術前術後を写真に撮って記録したことがあります。
毎日のように手がけて1000症例ほどの記録を整理しているうちに、入れ歯の修理もいくつかのパターンに分類できるとことに気がついたのです。
たとえば初めての患者さんの初めて見る入れ歯でも、過去の1000症例のどこかのパターンに当てはめることができます。
当てはまることさえわかれば後は頭で考えなくても勝手に体が動いて修理してしまいます。
・入れ歯が割れた部分をコンパウンドや瞬間接着剤で仮接着する
・石こうで模型を作る
・修理部分を補強する金属線を曲げる
・部分入れ歯を歯に支える金属バネを屈曲して合わせる
・プラスチックを盛って研磨する
このような工程が流れ作業のように進みます。
ただし各工程で細かい注意点があることも1000症例を整理しているうちにわかってきました。
それをおろそかにすると入れ歯が口の中に入らなくなってしまったり痛くなってしまったりします。
しかしそのような注意点も体が勝手に動いてクリアーしてしまいます。
すなわち茶道と同じで入れ歯修理の「作法」をしっかり守ることで入れ歯修理の軸ができるのです。
太極拳の型も同じです。
見知らぬ相手と初めて組み合っても「型」をしっかり守ることで自分の軸をくずさず相手の体勢をくずすことができます。
私が
「今度はこんな技を仕掛けてみよう」
と頭で考えて出す技を太極拳の先生は0.1秒で返してしまう。
こうして20年間、壁に思い切り叩きつけられたり腕を捕られて床に這いつくばったりしたのでよくわかるのですが、先生はどんな型を出そうとか頭で考えるより先に勝手に体が動いていることは間違いありません。
茶道を通じて引き寄せることができる宇宙エネルギーが心の安定を保つことに役立つ。
書によると利休はそう気がついたとあります。
イライラした時に太極拳の型を30分ほど行なうことで気持ちがスーッと晴れた、そんな経験ならば私にもあります。
このことは太極拳を行なったことのある方ならば理解できるのではないでしょうか。
ちなみにここで入れ歯にスピリチュアルな「宇宙エネルギー」を注入しているなどとインチキ占い師みたいなことを言うつもりはありません。
しかし壊れた入れ歯を見て、まず歯科医師があわててしまっては治療も難しくなってしまいます。
1000症例の入れ歯修理で身につけた所作を通じて
「簡単に治ります。大丈夫ですよ」
と落ち着いて言えることが大切です。
そして治療を通じて患者さんの心の安定に寄与することが歯科医師の役割と、本を読んであらためて理解しました。
参考文献:僕が見てきた宇宙と日本の歴史、神原康弥著、青林堂
https://www.ireba-ito.com/→いとう歯科医院