■ 問われているのは何か、少年が見つめている世界
西荻窪 いとう歯科医院、伊藤高史です。
窓に顔と手を押し付けて何かを真剣に見つめる少年の写真。
「Vivian Maier(アマチュアの女性カメラマン)が撮った1950年代のアメリカの写真です。少年の前にはどのような世界が広がっていると思いますか。800字以内で述べなさい」
という設問。
何を見つめていたのか。
何を書いたらいいのか。
これは医学部専門の予備校の先生が入試問題について紹介していた記事です。
入試に出てくる小論文試験は私が受験した当時から難しかったのですが特にこの少年が写っている写真の問題は極め付きの難問です。
何を書けばいいのか見当もつきません。
多くの受験生も、問題を前に凍りついてしまったと記事にはありました。
写真から感じるところは人それぞれ。狙いはどこにあるのでしょうか。
小論文には数学の方程式や社会科の暗記問題のような定まった1つの解があるわけではありませんが、医学部の入試ですから医師に向いていると判断される回答が必要です。
記事では「公共性、公共心、正義を追求する心」を問われているのではないかと述べられていました。
つまり困っている人や差別や理不尽な扱いを受けている人がいたら、その不公正を正す心のこと。
手先が器用とか、勉強ができるとか、それ以上に医師として必要な資質です。
この写真が撮られた1950年代のアメリカは第2次世界大戦の戦勝国として黄金期を迎えていました。
裕福だった白人たちはますます豊かになりました。
そうした発展を遂げたウラでアメリカにはもう1つの顔があります。
非白人系人種の暮らしです。
貧しさと困窮にあえぎ、生活、収入など白人との間に大きな格差が生まれていました。
少年が見つめているのは、肌の色の違いで差別を受け、公正な扱いをされない陰のアメリカの姿です。
そこまでヒントを与えられてやっと目の覚める思いをしました。
医師の目の前に広がっている医療格差の世界と重なって見えてきたのです。
脳裏に浮かんできたのは昔の勤務医時代のことです。
インプラント治療に600万円かかると他院で言われたと言う患者さんがいらしたことがあります。
歯が何本か抜けているだけだったので7000円で保険治療の入れ歯を作ったところ、とても満足されていました。
別に自費治療の世界を否定するつもりはありません。
ただ私は保険治療の世界で患者さんに貢献する道を選びました。
収入の多い少ないで差別されることなく、治療後に患者さんが満面の笑顔で帰られる。当院はそんな歯科医院でありたいです。
参考文献:
Vivian maier 写真
https://note.com/artoday/n/nc83fe717f5cd
女性写真家ヴィヴィアン・マイヤーの視点への推測
artoday - chiaki
2020年9月22日 09:01
https://toyokeizai.net/articles/-/103184
「謎の小論文」があぶり出す、受験生の"本性"
凍り付く学生が続出、話題の「奇問」を検証
小林 公夫 2016/02/04 6:00
西荻窪 いとう歯科医院 ホームページhttps://www.ireba-ito.com