5年前に作ったものの使っていなかった上の入れ歯を、修理して使えるようにした症例
総武線、中央線の停車駅、杉並区 西荻窪駅 南口から徒歩7分で安価な費用、保険治療での
入れ歯治療を数多く手がける歯医者
いとう歯科医院の伊藤高史です。
「うえ~っ、ムリムリムリ!」
70代男性Tさんの激しい拒否反応に、せっかく作った入れ歯でしたが入れるのを断念せざるを得ませんでした。
5年前に上の歯が3本残っているところに入れ歯を入れる治療をしていました。
もっと歯が残っていた時代にも入れ歯を入れる努力はしていました。
しかし違和感を理由に入れられず。
結局は次々と歯は抜けていって、抜けている11本分の大きな入れ歯を作る以外に治療方針がなくなってしまいました。
さらには残りの3本も揺れています。
近いうちにその3本も抜けて歯が一本もない無歯顎(むしがく)になることは簡単に予想できます。
そこで上アゴの口蓋部分を全て覆って総入れ歯に近い大きさの入れ歯を作りました。
数本分の小さな入れ歯すら入れられなかったのに、いきなり総入れ歯に近い大きな入れ歯を入れるのは、さすがに無理があります。
とはいえ他に選択の余地がなかったのも事実です。
入れた反応は予想どおり。
歯がないにも関わらず入れ歯も入れられないまま終わってしまった。
忸怩たる思いはあったもののTさんはいずれまた戻っていらっしゃるだろうと予想。
なぜなら残りの3本の歯が抜けて上アゴが無歯顎になるのは既定路線。
総入れ歯を入れる以外の治療はないからです。
もちろん総入れ歯の名医を自認する歯医者はたくさんいます。
「歯医者 名医」などでスマホで検索すると、たくさんの歯医者が出てきます。
しかしそんな名医の多くは「保険治療をやりません」。
100万円~みたいな高額な自費治療で作ってくれます。
名医の診療所に勤めたことがないので実態はわからないのですがTさんのように
・歯がない
・それなのに、これまで入れ歯を入れたことがない
・入れようとしたら激しい嘔吐反射で入れることもできない
なかなか厳しい条件です。
お金をかければ、どんな悪条件でも入れられる魔法のような入れ歯があれば良いのですが難しいように思います。
歯が抜けても保険治療で入れ歯に増歯修理
結局は5年後に久しぶりに来院。
予想どおり上下とも無歯顎になっていました。
そして上下とも入れ歯は入れていません。
ちなみに当院でも5年間、ぼーっとしていたわけではありません。
作った上の入れ歯の、上アゴを覆う部分を大きくくり抜いておきました。
嘔吐反射を軽減することができます。
とはいえこれは歯医者の立場としてはもっともやりたくないことです。
上の総入れ歯は上アゴ全体を覆うことで、アゴと入れ歯を密着させて真空状態を作ることで上アゴに入れ歯を維持します。
上アゴの部分をくり抜いてしまうと、この真空状態は絶対に作れません。
すなわち口を開けたらカタンと外れて落っこちる入れ歯になってしまいます。
とは言うものの一番ダメな入れ歯とはズバリ
「口の中に入れておけない入れ歯」
です。
・絶対に外れる入れ歯
・絶対に口の中に入れておけない入れ歯
究極の選択になりますが迷わず
・絶対に外れる入れ歯
を選択。
嘔吐反射を起こさず常に口の中に入れておくことを第一目標とします。
5年間も保存しておいた入れ歯ですが意外にもアゴとよく合っています。
しかし歯が3本残っている時代に作った入れ歯なので無歯顎になった今は、そのままでは使えません。
そのようなことで久しぶりのTさんに、まずは上のアゴの型をとりました。
型をもとに石こう模型を作ります。
石こう模型に入れ歯を合わせると歯3本分はもちろん空間になっています。
その歯3本分にプラスチック製人工歯を入れ歯に継ぎ足す「増歯修理」を模型上で行ないました。
増歯修理して部分入れ歯→総入れ歯になった入れ歯を合わせると、さすがに歯グキと誤差があります。
その誤差は歯科専用の入れ歯安定材ティッシュコンディショナーを厚く貼り足して合わせました。
ところで5年前は、あれほど激しい嘔吐反射、拒否反応を示していたTさんでしたが口蓋部分をくり抜いた今回の入れ歯は驚くほど何の抵抗もなく受け入れてくださいました。
入れ歯は可能ならば、ほぼ一日中着けっぱなしにして使うことをおすすめしています。
とくに夜寝ているときに着けて寝ることができると慣れが早いです。
就寝前に外して洗浄剤などで洗ってきれいにするときくらい、ちょっと外しますが後はずっと着けている。
そんな使い方です。
入れ歯をとくに就寝時に着ける、外す。
どちらが良いか?
これはどちらもメリット・デメリットあります。
就寝時に入れ歯を着けるメリット
・咬み合わせを保ち、残っている歯を保護する
・上の入れ歯があって歯並びがあることで嚥下しやすくなり誤嚥性肺炎を予防できる
就寝時に入れ歯を入れるデメリット
・入れ歯のプラスチック部分は顕微鏡レベルで見ると穴だらけ。その中に細菌が入り込む。それが肺に流れて誤嚥性肺炎の原因となる
・入れ歯自体を誤って飲み込む、肺に誤嚥する可能性はある
・就寝時は唾液の分泌量が減少する。唾液の少ない人だと入れ歯がスレて痛くなることがある
就寝時に入れ歯を外すメリット
・細菌の巣窟である入れ歯がないので誤嚥性肺炎の可能性を減らせる
・入れ歯自体を誤って飲み込む、肺に誤嚥する可能性はゼロにできる
就寝時に入れ歯を外すデメリット
・とくに上の入れ歯があると嚥下しやすくなる。外すと嚥下運動が不十分になり誤嚥性肺炎の原因となる
・残っている歯が、歯ぎしり食いしばりなどの影響で負担過剰になる
・入れ歯を外してなくすことはよくある
・就寝時に大地震が来たら、逃げる過程でほぼ確実に入れ歯はなくなる。修理や新しく作ろうにも、そんな大地震が来たら50年以上前の建築のいとう歯科医院は跡形もなくなっている可能性が高い(泣)
読んでいただくと分かるかと思いますが入れ歯を着ける、外す、相反するメリット・デメリットがあります。
どちらが一方的に良いとは言えないわけです。
ですから当院では
「これまでどうしていたか」
をお聞きすることが多いです。
たとえばこれまでずっと毎晩外していたのでしたら生活を変えない方が良いです。
入れ歯に限らない話で、急に生活習慣をを変えると、かえって調子悪くなるのはよくある話だからです。
もっとも今回のTさんには入れ歯を就寝時に着けることを強く勧めました。
とにかく入れ歯を入れておくことが第一目標だからです。
初めての入れ歯でもティッシュコンディショナーを厚く貼っていると歯グキを傷つけて痛みを起こすことは少ないです。
「普段は大丈夫だけど食事すると痛い」
これはよくある話です。
入れ歯が歯グキに食いこんで傷つけていると起こる症状です。
そうなったら明日でも来てくださいと申し上げていたのですが何事もなく1週間後に来院されました。
痛みなく嘔吐反射なく着けていられます。
大きく口を開けると外れますが日常生活でそんな大開口するシチュエーションはありません。
上の入れ歯が安定して使えるようになったので、上に合わせて下の総入れ歯を作ることにしました。
上下の歯並びが完成してから上アゴはプラスチックを盛って少しずつ上アゴを覆う治療を行なう予定です。
治療で大事なことは意外なことに「時間」です。
もちろんパッと来ればパッと治るのが理想です。
しかしそうはいかないことは今回のようにあります。
入れ歯の必要性を何年にも渡ってずっと説明し続けて、入れる努力も続けていました。
その成果が5年かかって花開いたのだと思っています。
当院には祖父の代から何十年も通ってくださっている患者さんがいます。
3年5年ぶりに来院する方も珍しくありません。
それで5年ぶりに手がけたら上手くいった今回のようなこともあります。
Tさんが帰られた後
「まだまだ歯医者を長く続けたい」
あらためて思ったものです。
今回行なったTさんの入れ歯を模型上で修理して合わせる治療は3回の来院でした。
費用は保険治療1割負担で総額約3,000円でした(症状によって費用は変わります)。
いとう歯科医院
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電話番号 0333335389
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