「独裁経営」のすすめ
世界の国家では、完全とは言えないまでも、
民主制がよりよい制度と、現在のところは考えられている。
しかし、同じ民主制の中でも、トップがかなりの権力を持つ場合と、
そうではない場合など、国によって制度は様々である。
企業においては、小さければ小さいほど「独裁」色は強くなる。
同等のパートナーと始めた事業でなければ尚更、その「独裁」色は強くなる。
企業経営は、原則として経営者の「独裁」で成り立つ。
国家同様、その権限の強弱があるだけだ。
1)「独裁」とは?
①自分一人の判断で物事を決めること
②絶対的な権力を握る一定の個人または集団・階級が
独断によって全体を治めること。
また、そのような体制
のことを言うらしい。
つまり、会社における「独裁」とは、
「経営者の判断によって全体を治めること」である。
「独裁」と聞くと、ヒトラーを思い出したりと、
決していい響きではないが、意味はこういうことである。
小さな会社のスタートアップ時は、当然「完全独裁制」であるが、
徐々に企業規模も大きくなって、有能な人材を雇うようになると、
少しずつ「合議制」もしくは、それに似た体制に移行していくのが通常だ。
しかし、経営に民主制は向いていない。
自らのことだけを考える人も多く、また、根回しがはびこり、
そのための労力や支出など、換算すれば大きな無駄が生じる。
民主制はお金がかかり、時間もかかると言われるが、
それは国家という組織だけでなく、会社組織でも当てはまる。
効率のいい、また、スピードのある、ベターのな経営は「独裁制」にある。
2)なぜ「独裁」か?
経営の問題の答えは、学校の問題のように答えは一つではない。
正解を求めるのではなく、多くの回答の中から、
よりベターと思われるものを、スピードをもって決めていくことが必要となる。
民主的に決めていたのでは、何も決まらず、
それぞれの利害から、ベターなものすら決められなくなる。
雑音ばかりが多くなる。
それぞれの人の利害が錯綜することを避けるためには、
会社経営のため、経営理念のために、決断できる、経営者、
そして、数少ない参謀と言える人が判断をすることだ。
3)「独裁経営」の方法
独裁経営の方法は、様々に考えられるが、大まかなところのみ述べる。
①社員の意見
「独裁」という響きは悪いが、よりよい言い方をすれば、
最後の判断はすべて自分でするということだ。
当然、社員の意見を聞いてもいいが、あくまでも参考意見とし、
決してそれに流されることはないようにする。
②計画半分・マーケティング半分
経営において計画もマーケティングも非常に重要である。
しかし、それらは確実なものでは決してない。
計画を良しとするか、そのままいくのか、引き返すのか、
あくまでも最後は、「独裁者」たる経営者自身の判断しかない。
その判断は、「独裁者」の創造力や経験などが導かれる。
その能力に自信がなければ、社員から借りればいい。
しかし、それでもやはり最後は、経営者の判断となる。
計画やマーケティングを鵜呑みにしてはいけない。
絶妙に、話半分ぐらいに捉える能力が必要になる。
③社員の待遇
日本には人気企業ランキングというものがある。
自らの会社を一番人気にしたいとか、
社員が一番給料が高い企業にしたいという経営者もいる。
しかし、そんなつまらないことを目標にしている経営者の企業は、消えていく。
社員にとって一番いいことは、給料をたくさんもらえることではない。
社員にとって一番いいことは、一番人気の企業で働くことではない。
社員にとって一番いいことは、「勘違い」させないことだ。
同じ企業でいれば、ただ長く所属しているというだけで給料が高い人がいる。
しかし、これは一見社員にとってはいいことのように思えるが、そうではない。
すべきことは、市場価値に応じた給与額を与え、自己認識させ、
どこにいっても通用する社員になってもらうことだ。
さらに言えば、勘違いさせずに、人として、あるべき考え方を、
日々の仕事の中で身に付けてもらうことだ。
④「任せる」と言って任せない
社員に任せたものは任せておけばいいとは思う。
しかし、100%を任せてはいけない。
なぜなら、彼らには、責任などとれないのだ。
企業の成長は、人の成長が必須であるため、
仕事を「任せる」という行為は必要ではあるが、
必ず報告をさせることが必須だ。
最終責任はやはり経営者になるのだから。
⑤情報の集中
古代より、情報は権力の源泉であることは今も変わらない。
あらゆる情報が、上へ上へと上がってくる仕組の構築が必要だ。
現代は、SNSやmail、chatwork、クラウドアプリなどツールは選び放題だ。
⑥責任の明確化
経営者が企業の全責任を担う。これは当たり前のことだ。
しかし、企業の中で細分化された仕事の責任はそれぞれの責任者が持つ。
責任を明確化し、信賞必罰の体制を整えることが組織を強くするためには必要だ。
⑦社員の顔色は一切気にしない
ある社員に抜けられると困るという状況には絶対にしないようにしなければならない。
そんな人がいると、その人に気を遣う必要が生じて、
「独裁」にならなくなってしまう。
その社員の顔色ばかり伺って経営をしなければならなくなる。
仕事は誰がやっても、会社はまわるという仕組を作る必要がある。
4)どんな「独裁」を目指すのか?
企業経営を「独裁制」にするいくつかの方法を述べたが、
民主制にもいろいろな形態があるのと同様、
「独裁制」にも様々な形がある。
では、どんな「独裁」を目指すべきだろうか?
①民のために
会社の社員のため、顧客のため、取引先のため、世の中のため、人類のため、
になる意思決定を常にを心がける。
古代中国の聖王と呼ばれた君主はみな、こういった思想を持っていた。
社員への信賞必罰も生殺与奪も、この基本的な考え方から生じることが最も重要だ。
ちなみに、京セラの経営理念は、
「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、
人類、社会の進歩発展に貢献すること」
である。素晴らしい経営理念だと思う。
②何のための経営かを考える
何のために一念発起して、経営を始めたのか、
そして何を目指すのかをひたすら考え、それにただただ突き進む。
その実現のためには、小さな問題は、掃いて捨てていく覚悟が必要。
中国の伝説の商人と呼ばれる白圭は、
民のためにダムを私財をなげうって作った。
こういう人なら、いくら独裁を行っても、誰でもついていく。
③自分の会社は、人が育つ箱と考える
人は様々な形で成長する。
それぞれ、どこで何をきっかけに成長するかなどわからない。
人にとって、会社で過ごす時間は、人生において大きな比重を占める。
その大きな比重の中で、会社での時間を無断にしないためにも、
人を育てているのだという感覚を忘れないことが重要だ。
5)最後に
私がおすすめする「独裁経営」とは、
「独裁」という言葉の響きから生じる雰囲気のものとはかなり違う。
人のためになる経営をするためには、
正しい「独裁経営」が必要になる。
最善の「独裁」を是非目指して欲しい。