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ちょっと待ってよ「9月入学」 それより緊急の問題、重要な課題があるでしょう

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知事会の「9月入学」提言から、政府も省庁横断的に検討を始め、かなりのエネルギーを投入しているようですが、目的や問題の設定に疑問を感じてしまいます。

まず「9月入学」という手段を目的化するのは間違いです。新事業・新プロジェクトもそうですが、まずどんな問題を解決するのか目的やゴールを設定してから、解決のための手段を考えるのがセオリーです。逆に、手段=HOWから入ると空振りすることが多い。

課題設定ですが、大きく言うと、1)目前の問題、2)本質的な問題、の二つがあります。新型コロナで休校したり、それに遠隔教育などで対応する動きもありますが、スグやらねばならない喫緊の課題です。そして、新型コロナがなくても考えねばならなかった本質的な教育改革があります。

目前の問題に対応するには、リアルの学校の復活と、オンラインによる遠隔教育などの従来あまりやっていない方法の導入、などの課題があります。オンラインによる学校教育は、いくつも大きな壁があります。

・インフラ パソコンやスマホなど機器、ブロードバンドのネット環境が、ない生徒が多数いるし、学校も不十分なところがある

・人 先生の遠隔教育スキルが不足(十分な先生はまだほとんどいない)

・制度 例えば、高校では対面指導が単位認定に必須

これらを直ちに解決しなければなりませんが、政府の動きはとても遅いし、エネルギーの投入量も心配です。

遠隔で授業をやると時間効率はリアルより下がりますし、遠隔下手な先生では教育効果も下がるでしょう。と言う前に、いまの小中学校の様子を聞くと、なんじゃこれは、という例もあります(もちろん、突然こんなことになって皆たいへんなのですが)。

小生の知人の教育者の一人は、「入学の仕組みを全面的に変えるのは、新型コロナウイルスで社会も大学も家庭も機能不全になっているタイミングで行う仕事じゃない。いま進めつつある「デジタル教育」「リモート学習」の可能性をまずつきつめて、1つでも多く学生や生徒や児童たちの教育機会を増やすのが、学校と教員の使命。」と指摘しています。ちなみに、この先生は9月入学賛成派ですが、今回の9月入学への動きについては不適切だと言っているのです。小生も同感です。

それに、グローバル・スタンダードに近づけたいなら、遠隔学習の推進が先決でしょう。

次に、本質的な問題ですが、あるべき教育の姿をちゃんと考えずに提言や議論されていては、本末転倒になると案じます。「9月入学」にすればバラ色の教育改革になるかというと、全くそうではありません。この辺の良い点、マズイ点は、メディアに色々と出ていますね。

日本経済新聞(5/12)には「入学を5カ月遅らせる案が軸になっている。2021年4月の小学校入学を9月にずらす場合、義務教育のスタートが7歳5カ月からとなる子どもが出てくる。世界的にも異例の遅さとなり、国際的な学力比較の面で懸念の声がある。」との記事がありましたが、遅らせてグローバル・スタンダードに合わせるのはナンセンス極まりない。遅らせると教育的にマイナスの影響が生じるという研究結果もあります。まさに本末転倒であり、やるなら早めて9月入学にするのがスジでしょう。それに、日本から海外留学する人、日本が受け入れる留学生の数よりも、圧倒的に数多い留学と無縁の生徒さんたちが受ける利得を示す必要があります。

また、9月入学といううわべの形式だけでなく、様々な内容を考えてこそ、新たな教育がつくれるのではないでしょうか。

そもそも、教育のどんな姿がよいのかビジョンの案も出ていないのはマズイです。海外に合わせるのでなく、未来を自らつくる姿勢で取り組むべきです。いまの教育では、リーダーシップやチームワーク、問題発見力や創造力、レジリエンスや自己肯定感など、十分には養えないかと。

社会的にも、4月入学3月卒業で採用などのサイクルが出来上がっています。教育現場や保護者をはじめ、社会システムも法律も、多くの面を変えるからには、その成果が十分期待でき、エコシステムの納得性と協力が不可欠で、政府が決めればすむ話ではありません。それに、遅らせるにしても早めるにしても、多大な負担(お金も労力も)がかかります。いまの9月入学化のお話は、それが見えない。

それから、小さい子を育てる親からすると、小学入学が半年遅くなると家庭への負担が増すので、産後育児の環境がすでに問題となっている日本社会でやるには、相応の策がないとマズイです。

小生は9月入学に反対ではないのですが、この大変なときに、こんなことやっていてどうなるんでしょう?と、案じています。

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